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イラン攻撃でも株は耐える 市場が崩れない理由
米国とイスラエルによるイラン攻撃を受け、金融市場ではリスクオフの動きが意識されているが、2022年のロシアによるウクライナ侵攻時と比べると、今回の市場への影響は限定的との見方もある。
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特に金融環境の違いが、相場の耐性を高めているとの指摘が多く、短期的な動揺はあっても、全面的なリスク回避にはつながりにくい状況といえる。
実際、株式市場では一時的に売りが強まる場面も見られるものの、その動きは継続的な下落トレンドには発展しておらず、背景には金融政策の方向性と金融システムの安定性という2つの要因があると考えられる。
■2022年は原油急騰と利上げが重圧
2022年はロシアのウクライナ侵攻を受けて、WTI原油先物価格が一時100ドルを上回る水準まで急騰し、その結果としてエネルギー価格の上昇が世界的なインフレ圧力を一段と強めることとなった。
これにより各国の金融政策は、引き締め方向へと大きく傾き、とりわけ米連邦準備制度理事会(FRB)は急速な利上げに踏み切ることとなった。
その結果、政策金利の引き上げに伴って市場の流動性は急速に縮小し、株式市場ではバリュエーションの見直しが進むと同時に、特にハイテク株を中心とした大幅な調整が発生した。
つまり当時は、原油高によるインフレ圧力と金融引き締めが同時進行したことで、市場全体に強いストレスがかかる構図となっていた。
■今回は利下げ局面で環境が異なる
一方で、今回の中東情勢についても地政学リスクとしては同様に警戒されるものの、現在の金融環境は2022年当時とは大きく異なっている。というのも、現在の米国は利下げ局面にあり、金融引き締めによる圧力は明確に後退しているためである。
このような利下げ局面においては、市場への資金供給が維持されやすく、結果としてリスク資産の下支え要因となる。そのため仮に原油価格が一時的に上昇したとしても、金融政策が緩和方向にあることがクッションとして機能し、資産価格の急落を抑制する効果が期待される。
さらに企業業績や雇用環境が、一定の底堅さを維持していることもあり、市場参加者の過度なリスク回避行動は抑えられている。このように、金融政策とマクロ環境の両面から見ても、2022年のような急激な資産価格の崩れにはつながりにくい状況が整っている。
■日本は銀行収益が支えに
日本においても、金融システムの安定性という観点から見れば、状況は比較的良好といえる。日銀の政策修正に伴う利上げ局面は、銀行を中心とした金融機関にとっては利ざやの拡大要因となり、収益環境の改善につながっているためである。
この結果、金融機関の収益基盤は強化されており、過去の金融危機時のように銀行の体力低下が市場不安を増幅させる構図にはなっていない。むしろ、金融機関の健全性が保たれていることが、信用収縮の発生を防ぐ役割を果たしている。
また金融機関の安定は、企業や個人への資金供給の継続にもつながるため、実体経済への悪影響も限定的にとどまりやすい。このような点を踏まえると、日本市場においてもシステミックリスクの発生可能性は低いと見られる。
以上を踏まえると、中東情勢の緊迫化は短期的には株安や円高、原油高といった典型的なリスクオフの動きを引き起こすものの、その影響の大きさや持続性は、今後の情勢次第で大きく変わると考えられる。
特に紛争が長期化し、原油価格の上昇が続くような展開や、軍事的な衝突がさらに激化する場合には、金融市場への打撃が避けられない可能性もある。
その一方で、現在の金融環境を見ると、米国が利下げ局面にあることや、日本においても金融機関の収益基盤が安定していることなどが、市場にとって一定の下支え要因として機能している。こうした金融面の安定は、リスクオフの動きを完全に打ち消すものではないものの、過度な悲観に傾くのを防ぐ役割を果たすと見られる。
したがって、地政学リスクの高まりによる下押し圧力は無視できないものの、金融市場の安定性はあくまでポジティブな補助材料として作用し、相場の急激な崩れを緩和する方向に働く可能性がある。
このため今回の局面は、リスク要因と下支え要因が併存する構図となっており、市場は今後も原油価格や中東情勢の動向を見極めながら、不安定ながらも底堅さを模索する展開が続くと考えられる。(記事:Osaka Okay・記事一覧を見る)
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