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トランプ関税に「ブレーキ」はかかるか? 日本株・為替への影響シミュレーション

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2月20日(米国時間)、米連邦最高裁判所はトランプ政権の関税政策に対し、歴史的な「無効」判決を下した。市場には一時安堵が広がったが、トランプ氏はその数時間後に間髪入れず「プランB」を発動。投資家は今、司法と大統領権限が真っ向から衝突する異例の事態に直面している。
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■最高裁が下した「IEEPA関税」無効の真意
今回、最高裁が違憲・違法と判断したのは、トランプ政権が「国家非常事態」を根拠に発動していた追加関税だ。
根拠法とされた**「IEEPA(国際緊急経済権限法)」**は、本来テロ対策などの緊急時に資産凍結等を行うための法律だ。裁判所は「関税の恒常的な発動にIEEPAを流用することは大統領の権限逸脱である」と断じ、議会が持つ通商権限を強調した。
これにより、日本を含む同盟国への「相互関税(リプロシティー)」などの法的根拠が失われ、数千億ドル規模の関税還付訴訟に発展する可能性が浮上している。
■トランプ氏の即時反撃:「通商法122条」の正体
しかし、判決直後にトランプ氏はホワイトハウスで会見し、判決を「国家安全保障への攻撃」と猛烈に批判。即座に代替措置として「通商法122条」に基づく全世界一律10%の追加関税を課す大統領令に署名した。
122条(国際収支赤字条項): 米国の国際収支に著しい欠損が生じている場合、大統領が150日間(延長可)にわたり最大15%の関税を課せる規定。
発動時期: 2026年2月24日より適用開始と明言。
つまり、IEEPA関税が司法に阻まれた一方で、より強力な「一律10%関税」がわずか数日のタイムラグで発動されるという、極めてボラティリティの高い局面に入っている。
■「85兆円対米投資」という防波堤の有効性
関税交渉の裏で注目されているのが、日本側が提示した総額85兆円(約5500億ドル)に及ぶ対米投資パッケージだ。
ネット上では「既に支払った」「日本だけが屈した」との声もあるが、現実は法的拘束力のないMOU(覚書)が主体だ。トランプ氏は今回の122条発動において「投資を加速させる国は除外を検討する」と示唆しており、日本企業にとっては「投資の実効性」が関税免除を勝ち取るための唯一の交渉材料となっている。
■日本市場への影響シミュレーション
(1) 日本株:セクター別の明暗
判決による関税撤廃期待と、122条による新関税への懸念が交錯し、セクター間での選別が進む。
・追い風(期待): 還付金期待が高まる米拠点の多い自動車(トヨタ、ホンダ等)、輸入コスト低下が利益を押し上げるニトリ、良品計画などの内需・小売。
・向かい風(懸念): 全世界一律10%関税によりサプライチェーンが混乱する半導体・電子部品。
(2)為替(ドル円): インフレ再燃リスクに注目
為替市場では、判決直後に「関税緩和=米インフレ沈静化」を見越した円高が進行したが、122条の発動によりシナリオが書き換えられた。 追加関税は米国内の物価を押し上げるため、「FRBの利下げ停止->ドル再騰」のリスクが再燃している。当面は150円~158円の広いレンジでの乱高下が予想される。
■投資家が持つべき「出口戦略」
短期トレーダーにとってはヘッドラインでの「往復ビンタ」を避けるべき局面だ。特に2月24日の122条発動前後は、アルゴリズムによる急激な売り崩しに注意が必要だ。
一方で中長期投資家(NISA勢など)にとっては、この政治的ノイズは絶好の「時間分散」の機会でもある。関税は最終的に消費者が負担する「税金」であり、長期的には米国の消費を冷やす諸刃の剣だ。政治ショーに惑わされず、「キャッシュフローが盤石で、関税コストを価格転嫁できる強みを持つ企業」に絞った保有が合理的といえる。
■まとめ: 司法のブレーキか、嵐の激化か
最高裁判決は「大統領の暴走」に一定の歯止めをかけたが、トランプ氏の保護主義への執念は122条という形で即座に具現化された。 投資家に求められるのは、ニュースの一喜一憂を避け、「関税は政治的パフォーマンスであり、本質は米国内のインフレ率と金利差にある」という冷徹な視点だ。(記事:岩谷栄一郎・記事一覧を見る)
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