​​高市首相の解散観測で円安進行 政策期待でドル円165円も視野に

2026年1月15日 13:45

印刷

 高市早苗首相が衆院解散選挙の意向を固める中、外国為替市場では円安基調が一段と鮮明になっている。市場では、選挙後の政権基盤安定を背景に積極財政と緩和的な政策運営が継続するとの見方が強まり、ドル円相場は165円を意識しはじめている。

【こちらも】衆院解散で注目される「暫定予算」とは? 株価や為替への影響は?

 円安が進行する背景には、政治の安定が政策の方向性をより明確にする点がある。自民党が総選挙で大勝すれば、高市政権の運営は安定し、景気下支えを重視した政策が継続される可能性が高いとの見方が市場で広がっている。政局リスクの後退は、同時に財政・金融両面での緩和的姿勢を改めて意識させている。

■積極財政と政策運営への期待

 選挙後の政策運営を巡っては、減税、公共投資などの追加的な景気刺激策が再び打ち出されるとの観測がある。こうした積極財政への期待は、景気下支え効果への評価がある一方、国債増発による財政負担拡大への警戒感も生み、円売り要因として作用している。

 金融政策面でも円安材料は多い。高市政権は急激な金融引き締めに慎重な姿勢を維持しており、仮に利上げが実施されたとしても、緩やかな正常化にとどまるとの見方が強い。米国では高金利政策が長期化しており、日米金利差が急速に縮小する可能性は低い状況が続いている。

■実質金利差と構造的円安要因

 こうした政治判断と政策運営の方向性は、金融政策の見通しにも影響を及ぼし、為替市場では金利差を通じた円安要因として意識されている。為替市場が重視するのは名目金利ではなく、インフレ率を考慮した実質金利である。

 日本では物価上昇が続く一方、実質金利は依然としてマイナス圏にある。これに対し、米国は名目金利が高水準を維持し、実質金利はプラス圏にある。この実質金利差が、円安圧力を構造的に支えている。

 加えて、日本はエネルギー輸入国であり、原油や天然ガスの決済を通じたドル需要が恒常的に発生する。さらにAIやクラウドなどデジタル分野では、米国企業への支払いが拡大しており、資金フローの面でもドル高・円安を後押しする構造が続いている。

■積極財政と円安が高めるインフレリスク

 市場で特に警戒されているのが、円安と積極財政が同時に進行することで、インフレ圧力が一段と強まる点だ。

 選挙後に大規模な財政出動が行われれば、需要が刺激され、物価上昇が加速する可能性がある。短期的には景気の下支え効果が期待される一方、中長期的には物価高が定着し、金融政策の自由度が低下するリスクも指摘されている。

 円安の進行は、こうしたインフレ圧力をさらに増幅させる。日本はエネルギーや食料品を輸入に依存しており、円安は輸入物価の上昇を通じて国内物価を押し上げやすい。積極財政による需要拡大と、円安によるコスト上昇が重なれば、インフレが想定以上に強まる可能性がある。

 賃金の伸びが物価上昇に追いつかなければ、国民生活への影響は深刻となる。特に年金生活者や低所得層では、生活必需品価格の上昇が可処分所得を直撃する。選挙後の政権運営では、景気下支えと同時に、円安を背景としたインフレへの対応が避けて通れない課題となりそうだ。

■160円介入水準と165円を意識する為替市場

 政府による為替介入の可能性は引き続き意識されている。160円は、2024年に実際に為替介入が行われた水準であり、市場には一定の警戒感が残る。ただし同じ水準で大規模介入を繰り返した場合、為替水準の固定化と受け止められ、金融市場の自由を損なうとの見方が強い。

 そのため市場では、160円前半での介入は抑止力として機能しづらいとの評価が広がっている。介入への警戒感は残るものの、円安基調そのものを反転させる決定打にはなりにくいとの見方が優勢だ。

 こうした政治、政策、経済構造を踏まえると、円安は一時的な現象ではなく構造的なトレンドといえる。市場の関心は160円よりも、その先にある165円水準を見据えている可能性がある。解散総選挙後の政策運営が、為替相場の行方を左右する重要な局面となりそうだ。(記事:Osaka Okay・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事