衆院解散報道で円急落・株先物急伸 市場は政権安定化に期待

2026年1月11日 21:11

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 1月9日夜、読売新聞などが高市早苗首相による衆議院解散検討を報じたことを受け、金融市場が大きく反応した。外国為替市場では円相場が1ドル=158円台前半まで売られ、約1年ぶりの円安水準を記録した。

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 高支持率を背景とした早期解散の可能性が浮上し、政治の不透明感が後退するとの見方から投資家心理が改善した。

 報道によれば、高市首相は1月23日召集の通常国会冒頭での解散を視野に入れ、自民党幹部に検討していることを伝えたという。現在の内閣支持率は60~70%台と高水準にあり、この「追い風」が続くうちに衆院選を実施し、自民党の議席を増やす狙いがあるとみられる。

 市場では報道直後から円売り・株買いの動きが加速した。衆議院解散の判断がやや先行的だったことが、背景としてうかがえる

 自民党が少数与党を脱すれば政権運営が安定するとの思惑から、週明け以降も国内投資家による買いが続くとの見方を示した。ロンドン市場の関係者は、報道の確度は不明としながらも、こうした材料に対して「株高・円安」で反応するパターンは市場で定着していると述べている。

■今後の展望 選挙と株価の微妙な関係

 衆院解散の報道で株価が上昇するのは、決して偶然ではない。選挙戦では各党が経済政策を前面に打ち出すため、有権者だけでなく投資家も「政策期待」を織り込む動きを見せる。特に与党が勝利すれば政権基盤が強化され、掲げた政策が実現しやすくなるとの読みが働く。

 今回のケースでは、高市政権の積極財政路線が継続・強化されるとの思惑が、円安・株高を誘発したと考えるのが自然だ

 ただし、選挙と株価の関係には注意すべき点がある。まず選挙期間中の株高は、一時的な現象に終わることが多い。投開票日を過ぎれば「材料出尽くし」となり、市場の関心は企業業績や金融政策といった実体経済の動向に戻っていく。選挙結果がどうあれ、その後の株価を決めるのは政策の実効性であり、選挙戦での公約ではない。

 さらに選挙結果が市場の想定と異なった場合、株価は急速に調整する可能性がある。与党が議席を大きく減らせば、政策の実現可能性が低下し、投資家心理が冷え込む。

 2024年の衆院選では与党が過半数を失い、市場が動揺した記憶は新しい。今回も、楽観的なシナリオだけでなく、リスクシナリオも視野に入れた投資判断が求められる。

■高市政権の「賭け」と市場の期待

 高市政権にとって、早期解散は大きな「賭け」といえる。高支持率のうちに勝負を決めれば、衆院で過半数を回復し、積極財政を推進する環境が整う。防衛費増額やインフラ投資といった大型予算を伴う政策も、与党の議席が増えれば実現しやすくなる。これは株式市場にとって好材料だ。

 一方で、早期解散には批判の声もある。2026年度予算案の審議が本格化する前に解散すれば、予算成立が遅れ、経済政策の空白期間が生じる恐れがある。野党は「選挙優先で国民生活を置き去りにしている」と反発しており、選挙戦では与党の姿勢が問われることになるだろう。

 市場参加者の間では、高市政権の政策に対する評価が分かれている。積極財政を支持する声がある一方で、財源の裏付けが不十分との指摘も根強い。選挙で与党が勝利したとしても、その後の政策運営次第では、期待が失望に変わるリスクも孕んでいる。

■日銀の利上げと政治リスクの綱引き

 2026年の日本株にとって、もう一つの焦点が日銀の金融政策だ。植田和男総裁は1月5日、経済・物価情勢が見通し通りに推移すれば、利上げを続ける方針を改めて表明した。市場では年内に政策金利が1.25%まで引き上げられるとの見方が有力だ。

 利上げは通常、株価の下押し要因となる。しかし現在の日本では、物価上昇が定着する中での利上げであり、経済の正常化プロセスとして受け止められている面がある。株価と金利が同時に上昇する展開が続くかどうかは、企業収益の拡大ペースと、政権の経済運営能力にかかっている。

 選挙と利上げという二つの不確定要素を抱える2026年前半の日本株市場は、神経質な値動きが予想される。投資家にとっては、短期的な材料に過度に反応せず、中長期的な視点で政策の実効性を見極める冷静さが求められる。

 週明け以降の市場動向は、高市首相の正式な解散表明の有無、そして与党の選挙戦略が鮮明になるにつれて、方向感が定まっていくだろう。(記事:庭田 學・記事一覧を見る

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