きちりHDが赤字体質から脱却した経営姿勢を評価したい

2025年8月20日 08:48

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 きちりホールディングス(3082、東証スタンダード市場、以下きちりHD)。四季報のパラパラ読みで出会った。

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 「ヘエー」と思ったのは業績欄の推移。2022年6月期は「売上高69億2000万円、営業損益11億2300万円の赤字」、続く23年6月期は「109億4100万円、8300万円の赤字」。それが24年6月期は「137億4700万円、7億8400万円の黒字、2.5円増配7.5円配」、そして25年6月期は「150億円、9億円」予想となっていた。明らかに前期以降「立ち直り」トレンド入りを示していた。

 実態を覗き込むことにした。

 出会い頭に「おいおい」と思わざるをえない事実に出会った。8月8日付けで「通期業績予想値と実態数値の差異に関するお知らせ」なるリリースが配信されていた。前記の今期予想「150億円、9億円」を「150億5600万円、5億8100万円」に下方修正し、その理由を「原材料費や光熱費の高止まりに加え、人件費の上昇などの影響を受け・・・」としたのだ。

 確かに広範な産業で利益面の足枷となった要因ではある。赤字に再転落したしたわけではない。しかし昨日今日持ち上がった要因ではない。「環境を読み込めなかった」という誹りは免れない。

 がその一方で、24年6月期に赤字から黒字に転換しえた背景は評価に値するものだった。

 きちりHDは「都市型ダイニング」業態:高級居酒屋店KICHIRI(8月初旬時点で53店)と、モール・郊外型レストラン業態:いしがまやハンバーグ/オムライス/はかた地どり/等を53店舗展開している。アナリストは前期の黒字転換を牽引した要因を、こう評価する。

 「2008年のリーマンショックを境に、景気の変動がアルコールの提供というビジネスに影響をもたらすようになった。ミレニアム・Z世代のアルコール離れも表面化した。都市型ダイニング業態の事業基盤の強化策に加え、安定施策として酒ではなく食事軸の郊外型レストラン業態の展開と積極的に取り組んだ。2019年以降のコロナ禍では生活様式の変化に適合した、郊外ショッピングセンター/郊外型レストランが強みを発揮した」。

 収益動向の上向き・落ち着きはきちりHDを、株主還元策に目を向けさせている。例えば昨年12月と今年8月に、「上限15万株/12万5000株」の自社株買いを行っている。

 本稿作成中の株価は900円台入り口。年初来安値780円(1月)から4月高値936円まで買われ揉み合い状態。さて・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る

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