【QAあり】ぐるなび、営業利益は前年同期比で大幅伸長 飲食店支援事業の順調な推移が寄与

2025年2月17日 11:20

印刷

記事提供元:ログミーファイナンス

【QAあり】ぐるなび、営業利益は前年同期比で大幅伸長 飲食店支援事業の順調な推移が寄与

【QAあり】ぐるなび、営業利益は前年同期比で大幅伸長 飲食店支援事業の順調な推移が寄与[写真拡大]

サマリ

杉原章郎氏(以下、杉原):みなさま、おはようございます。社長の杉原です。私より2025年3月期第3四半期の決算をご説明します。

はじめに、今回の決算説明のサマリーをご説明します。

第3四半期累計期間の業績について、中核事業である飲食店支援事業が順調に推移しました。また、全社的な業務効率化および効果や効率性に留意したコスト投下を徹底したことにより、営業利益は前年同期より大きく伸長しました。

サービスの面においては、2024年8月に本格始動した生成AI技術の徹底活用を目的とする「ぐるなびNextプロジェクト」のもと、新たな飲食店情報アプリの開発を進めました。2025年1月にβ版のテスト運用を開始するなど、当社の事業資産を活かした新たな取り組みを展開しています。

連結損益計算書

第3四半期累計期間における損益の状況はスライドに記載のとおりです。

売上高は94億8,800万円、営業利益は6億700万円となりました。親会社株主に帰属する四半期純利益については、投資有価証券売却益1億5,700万円を特別利益に計上した一方、2024年11月21日にお知らせのとおり、店舗開発事業における一部施設の撤退に係る費用5,200万円を特別損失に計上したことなどから、6億9,200万円となりました。

売上高内訳

次に、売上高の内訳についてご説明します。

ストック型サービスは着実に拡大し、前年同期より8.7パーセントの増加となりました。詳細は、次のスライドでご説明します。

スポット型サービスについては、販促商品などのスポット販売、ネット予約手数料売上ともに拡大したことから、前年同期をおよそ20パーセント上回りました。その結果、飲食店販促サービス全体では、前年同期比10.1パーセントの増加となりました。

他方、プロモーションが前年同期を下回りましたが、今期計画に対しては想定どおりに進捗しています。

関連事業の増加については、主に2024年4月にグランドオープンした厨房機器販売店「テンポスぐるなび」の売上を計上したことによります。

飲食店販促サービス(1) 〜ストック型サービス売上の月次推移〜

続いて、ストック型サービスの詳細についてご説明します。

まずスライド左側に示したストック型サービスの月次売上は、堅実な受注獲得と減額・解約の低減により、着実な拡大基調を維持しています。忘年会シーズンである第3四半期は、一層の積み上がりを遂げることができました。

スライド右側のグラフは、ストック型サービス売上を「ストック型有料加盟店舗数」と「ARPU」に分解したものです。

前期および前々期においても、ストック型サービス売上は総じて増加傾向にありました。しかし、既存加盟店に対する提案に重点をおいた営業活動であったことから、ARPUが高まった一方、新規獲得が少ない状態が続き、店舗数は減少ないし横ばい傾向にありました。

他方、今期においては引き続きARPUを高めると同時に、店舗数を僅かではありますが増加させることができています。

例年、忘年会シーズン後の1月から3月は、解約や減額が増えやすい時期となります。ただし、次のスライドでご説明する当社ネット予約におけるポジティブな変化や、「 Google ビジネスプロフィール運用支援商品」の成功事例などを加盟店へ示すこと、また2025年3月に初回のランク判定を迎える「幹事ランク制度」の推進を通じて、宴会需要を喚起すること、さらに、今期より開始したインサイドセールスの強化を通じた効率的な新規獲得を推し進めることにより、拡大基調の継続、来期以降のさらなる成長につなげていきます。

飲食店販促サービス(2) 〜ネット予約サービス①〜

ネット予約の状況についてご説明します。

まずスライド左側のグラフで示した加盟飲食店1店舗当たりのネット予約件数について、第3四半期は前年同期をやや上回る程度に留まったものの、スライド右上の表で示すとおり予約の中身に良い変化が生じています。

こちらの表は、第3四半期のネット予約数を1組当たりの人数規模別に見た構成比です。前期の第3四半期と比べると、「1~4人」という小人数の予約が1.1ポイント減少したのに対し、「5~14人」が0.5ポイント増、「15人以上」が0.6ポイント増となり、大人数需要の高まりを確認できる結果となりました。

また、1組当たりの平均人数をユーザーの会員属性別に見ると、明確な違いが生じています。スライド右下のグラフに示すとおり、会員でないユーザーが平均3.3人であるのに対し、楽天ID連携会員は平均5.0人と、楽天会員ほど大人数で予約される傾向にあります。

飲食店販促サービス(2) 〜ネット予約サービス②〜

続いて、“繰り返しネット予約される会員ほど大人数で外食を楽しむ”という注目すべき特徴についてご説明します。

スライド左側のグラフは、第3四半期における1組当たりの平均人数を、年間のネット予約利用が「1回だけの会員」「2〜3回の会員」「4回以上の会員」に整理したものです。前期の第3四半期をグレー、今期の第3四半期をオレンジで示しています。

グラフのとおり、年間のネット予約回数が多い会員ほど大人数の傾向にあります。また平均人数の増加率についても、「年4回以上予約される会員」が最も高い伸びを示しています。

さらに、スライド右上の表に示すとおり、「年4回以上予約される会員」による予約の全体に占める割合が増加しており、「楽天ぐるなび」に対するロイヤリティの高い会員の存在感が高まりつつあります。

こうしたことから、「当社ネット予約を積極的に利用いただくこと」と「大人数需要」には密接な関係があると言えます。2024年11月よりスタートした“繰り返し利用するほど” “大勢で集まるほど”お得になる「幹事ランク制度」は、こうした会員動向と親和性の高い、大きなシナジーを期待できる仕組みであると考えています。

引き続き、ランクが上がるほど楽天ポイントがアップする「幹事ランク制度」の推進を通じ、リピート予約促進と大人数喚起というダブルの効果でネット予約送客を強化し、加盟飲食店の売上アップ・外食産業の活性化に貢献していきます。

マーケティングエージェントの本格化

こちらは、飲食店が取り組むWeb販促活動の一括支援を目指す「マーケティングエージェント」サービスの1つである「 Google ビジネスプロフィール運用支援商品」についてです。

情報更新や投稿、さらにはMEO対策に至る幅広いサポートが飲食店のニーズを捉え、スライド左側のグラフで示すとおり、利用店舗数は順調に拡大しています。

モバイルオーダーサービス “ぐるなびFineOrder”(1)

続いて、モバイルオーダーサービス「ぐるなびFineOrder」についてご説明します。

スライド左側の契約企業数については、2024年12月末で122社と引き続き拡大しました。店舗ベースで見た場合も、契約企業における受注店舗数が着実に拡大しているだけでなく、システムオンボードが完了した稼働店舗の割合は、8割を超えてきました。

また、稼働店舗のうち実際に「ぐるなびFineOrder」を利用して注文が行われている店舗の割合であるアクティブ率は、97パーセントと引き続き高水準にあり、確実にお店のオペレーションに組み込まれています。

なお、「上島珈琲店」の2店舗で楽天ポイントを活用したキャンペーンを実施したところ、注文件数の増加という成果を確認することができたことから、今後「楽天ペイ」との連携などによる効果的なポイントマーケティングを検討していきます。

モバイルオーダーサービス “ぐるなびFineOrder”(2)

次に、「ぐるなびFineOrder」の展開領域についてお伝えします。

当初、①の大手/中堅チェーン店領域よりスタートしたところ、クオリカ社のPOSとの連携により、②の超大手チェーン店領域に着手した状況にあります。

加えて、スライド右側の④と付した飲食店に限らず、「ぐるなびFineOrder」によって業務効率の向上・人手不足の低減などに寄与できる領域に関しては、ホテルのルームサービスやスポーツ施設、社員食堂への導入・提案が進展しています。

原価・費用内訳

それでは、原価・費用の内訳についてご説明します。

売上原価については、2023年3月末に実施した減損処理により前期において低減されていた減価償却費が増加した一方、プロモーション事業に係る原価が減少したことなどから、前年同期と比べ微減となりました。

販売費及び一般管理費については、業務委託費や広告宣伝・販促費などが飲食店支援事業の強化に伴い増加しましたが、全社的なコストコントロールを通じて微増に留まりました。

連結貸借対照表

貸借対照表については、スライドに記載のとおりです。以上、第3四半期累計期間の業績についてご説明しました。

なお、第3四半期累計期間の営業利益は6億円となりましたが、現時点では通期業績予想を据え置くこととしました。

背景はいくつかあります。まず、商業施設における飲食フロアのプロデュースなどを行う店舗開発事業について、展開する施設が一定程度の規模に拡大していることを踏まえ、より収益性を意識した事業運営へともう一段精度を高めるべき時期にあると認識しています。

そこで、資材価格の動向や候補物件の集客ポテンシャルなどを総合的に勘案の上、あえて新規受注を見送る動きを第3四半期よりとっていることが1つです。

また、費用面において、積極的な人材採用活動を継続することに加え、社員一人ひとりのがんばりにより、利益予想を当初発表数値より向上させることができていることを踏まえ、期初時点では低水準に設定していた賞与支給率について、見直しを検討したいことなどが挙げられます。

今後、業績予想を修正すべき場合は、速やかに公表します。

新たな取り組み(1) 〜生成AI技術を用いた飲食店情報アプリ①〜

それでは、ここからは当社の事業資産を活かした新たな取り組みについてご説明します。

こちらは、2024年8月に本格始動した生成AI技術の徹底活用により、“ぐるなび全体”の技術革新を図る「ぐるなびNextプロジェクト」の概要です。

本プロジェクトは、「次世代食体験の実現」および「圧倒的な業務効率化」をビジョンとし、消費者に対してより便利で楽しく豊かな外食体験を提供すること、また飲食店に対しては収益力の向上と労働環境の改善のための店舗DXの加速を支援することを目指しています。

そして、これらの取り組みの強力な推進を可能とする「生産性高く、創造性豊かな事業運営体制」を構築すべく、社内業務におけるAI技術の積極導入に取り組むこととしています。

新たな取り組み(1) 〜生成AI技術を用いた飲食店情報アプリ②〜

この度、本プロジェクトの一環として、スライドに記載の新たな飲食店情報アプリのテスト運用を開始しました。

「楽天ぐるなび」を含め、従来型の飲食店情報サービスは、ユーザー側がエリアや料理ジャンル、予算などを指定し、情報を探し出す「検索」であるところ、今回開発したアプリは基本的な条件に加え、気分や雰囲気などを日常的な言葉使いで話しかけるだけで、最適なお店をAIが「提案」してくれるというものです。

また、使えば使うほどカスタマイズされて提案の精度が高まり、よりパーソナライズされた自分好みのアプリに進化する点が特長です。

まずは、iOSでのβ版の提供からのスタートとなりますが、テスト運用を通じた改善はもとより、新たな機能を拡充した上で、正式版のリリースにつなげたいと考えています。また、アンドロイド版については、マルチランゲージ対応と併せて準備を進める予定です。

「ぐるなびNextプロジェクト」は緒に就いたばかりですが、AIを当社事業の成長ドライバーとしていくことを考えています。本アプリの開発・改良を通じて蓄積するノウハウやデータなどを、消費者向けサービスの強化に留まらず、飲食店向け経営支援サービスに応用・発展することで、AI活用による外食産業の発展をリードしていきます。

新たな取り組み(2) 〜エプソン販売(株)との共同事業〜

続いて、食関連メーカーや自治体など向けの新たなプロモーションサービスについてご説明します。

当社では、以前より飲食店でのインストアプロモーションを展開する中で、創り手の想いや商品価値をよりダイレクトに消費者に体験いただける仕組みを模索していました。他方、エプソン販売株式会社では、外食領域でのビジネス展開を進めているところです。

こうした状況の中、飲食店という「集まる場」を活用したメディアはなく、大きな価値を生み出す可能性があるとの考えが両社で一致し、今回の協業に至りました。

具体的には、飲食店内にプロジェクターなどの大型ディスプレイを設置し、商品ストーリーなどを伝える「映像放映」で視覚に訴えていきます。

加えて、スポンサー商品を利用したメニュー提供や商品サンプルの配布といった「店内プロモーション」、さらに「アンケート調査」や店舗スタッフによるアプリダウンロード促進などのアクションを掛け合わせた体験型のプロモーションサービスです。

参加する飲食店にとっては、コラボレーションメニューの販売による売上効果に加え、プロモーションフィーの一部が広告収入として入る仕組みとなっています。

まず第1弾として、東京23区を中心とした20店舗での石川県プロモーションを実施していますが、今後、首都圏での参加店舗の拡大に加え、大阪や名古屋といった他の大都市圏での展開について検討していきます。

トピックス 〜日本の食文化振興に関する取り組み〜

その他のトピックスとして、日本の食文化振興に関する取り組みをご紹介します。

1つ目は、料理人コンペティションです。日本の料理界の未来を担う意欲・才能溢れる料理人を日本の食業界の総力を挙げて後押しする「RED U-35 2024」を2024年11月に開催しました。

2つ目は、優れた日本の食文化を人々の記憶に留め、より豊かな食の未来の進化、発展につなげるため、その年の世相を反映した「食」を選定・発表する「今年の一皿」です。2024年の一皿は、希少資源の保護に向けた完全養殖の実用化のための研究開発が進んでいる「うなぎ」となりました。

今後も、日本の食文化を守り育てるという創業からつなぐ想いのもと、サステナブルな食の未来の実現に資する取り組みに尽力する所存です。

ロードマップ

最後に、中期事業方針のロードマップです。

引き続き、今期の注力施策と位置づける「楽天ぐるなびの強化」と「マーケティングエージェントの本格化」、そしてこの2つの取り組みの推進力や実効性を高める「商品造成力の向上」の強化を通じた飲食店支援事業の成長力の引き上げを進めていきます。これに加え、生成AI技術の徹底活用を推し進めることで、中長期にわたる新たな成長軌道を描きます。

以上、決算説明と今後の展開についてご説明しました。ありがとうございました。

質疑応答:第4四半期の増収と費用増の要因について

質問者:第4四半期は、第3四半期比で差し引き12億円から13億円の増収を予定しています。費用に関しては19億円から20億円の増加です。これらは普段とは違うものを計上する予定ということでしょうか? 先ほど賞与の引き上げのお話もありましたが、一過性の売上および費用として大きな部分があれば教えてください。

山田晃久氏(以下、山田):第4四半期は、グリーンイノベーション基金事業の売上およびコストの一括計上という特殊要因があります。それが、第4四半期の売上・費用双方を押し上げる要因の1つになっています。

売上面ではその他、商業施設の飲食フロアのプロデュースなどを行う店舗開発事業の新規受注売上を、予算上第4四半期にやや大きく見込んでいます。ただ、こちらについては、資材価格の動向や店舗候補物件の集客ポテンシャルなどを総合的に勘案し、来期以降の将来的な収益性の観点から、一部受注を見送ることも考えています。

加えて、プロモーション売上が第4四半期に膨らみやすいという季節要因があります。

費用面は、先ほどの説明のとおり、賞与の増額を検討しています。

質疑応答:事業環境の認識について

質問者:事業環境の認識についてです。飲食店側のDX投資および販促の意欲について、状況を教えてください。また、生活者の外食の意欲についてはどのように見ていますか?

杉原:外食需要は引き続き順調な回復基調にあります。感染リスクから恐る恐る外食していた状況であったものが、今はさまざまな制約があったことを忘れていると言える状況にまで、平常を取り戻しています。

他方、飲食店業務の推進面においては、コロナ禍で外食産業から離れてしまった多くの人手が戻っていない状況にあり、人手不足が業容拡大の大きな制約になっています。これにより、多くのお店が店舗の持つポテンシャルを100パーセント活かして売上を上げることができていないというのが当社の認識です。

そうした中、DXにより業務の効率性を高め、これまで人力で作業していた業務を省力化・効率化することで、サービスレベルや客単価などを向上する例があります。当社サービスでは、モバイルオーダーについて、一部店舗における先行導入での成果から、導入店を拡大する動きがあり、飲食店におけるDX投資本格化の兆しを掴んでいます。

AI活用については、世の中全体で試行錯誤の段階にあると思いますが、最新テクノロジーの活用に感度の高い飲食関連事業者には、当社のAI活用方針に対して興味を持っていただいています。当社に対して、お問い合わせをいただいており、今後一緒にプロジェクトを行えないかといったご相談が増えつつあります。

生活者側の動きの一つとして、インバウンド需要におけるコト消費の高まりも見過ごせません。こうした変化は、当社トラフィック上にも表れておりますので、加盟飲食店情報への誘導性を高め、確実な送客につなげていきます。

質疑応答:普通株主に対する配当について

質問者:今回、A種優先株式の全部取得を発表しています。あらためて、財務キャッシュフローの考え方を教えてください。全部消却された中で、特に来期に我々のような普通株主に対しての配当をどのように考えるかなど、自己資本比率や投資キャッシュフローの考え方も含めてお願いします。

山田:A種優先株式に関する配当については、このたび発表した全部取得および消却により、なくなる予定です。普通株式の株主のみなさまへの配当の再開については、フリーキャッシュフローの状況や現預金の水準などを総合的に見極めながら、検討していきたいと考えています。

質疑応答:上場維持基準への適合について

質問者:上場維持基準への適合に向けた計画書についてです。今日も株価が非常に上がっているためクリアしているかと推測しますが、適合に向けた計画書における現在の状況や、どの程度の株価を目指せばクリアできると認識しているのかも含めて教えてください。

山田:流通株式時価総額が不適合となっていますので、まずは株価を高めることが重要だと捉えており、そのためには足元の業績改善をしっかりお示しすることに加え、中期の方針を確実に実現していくことが大切だと考えています。

その上で、流通株式数についても必要に応じ検討したいと考えています。なお、具体的な株価水準についてはコメントを差し控えます。

質疑応答:支配株主を含めた上場のあり方について

質問者:杉原社長におうかがいしたいのですが、先日親子上場に関して東証からの資料が出ました。御社は親子上場ではありませんが、大株主と極めて密なつながりで事業を展開していると思っています。

個人的には、楽天グループに御社株式をさらに持ってもらうのが適切ではないかと思います。そのあたりに関する御社の考えをお聞かせください。

杉原:楽天グループによる当社株式の保有拡大は、先方の状況や考えが重要であるため、当社で決めるものではないとの認識です。そうした中、当社としては、現在の関係性を最大限活かし、楽天会員による当社サービスの利用促進による送客力の向上に引き続き取り組んでいきます。

一方で、飲食店の集客活動を総合的に支援するにあたり、楽天経済圏とは異なる領域で消費活動を行っているコンシューマーに対するアプローチも重要となります。

楽天グループとの協業のみで、多様なコンシューマーとつながることはできないことから、幅広くニュートラルに多くのユーザーを獲得できる方法について、株主構成の観点も交えて考えることが大事だと思っています。

質疑応答:アルコールを提供する飲食店の現況について

質問者:居酒屋などのアルコールを提供する飲食店についてです。コロナ禍からだいぶ経ち、消費者におけるアルコール離れがある上に、従業員を十分に確保できないことなどから、なかなかコロナ禍前の状態には改善しないのではないかと認識していました。しかし、御社はそれとは違う認識を持っているという理解でよいでしょうか?

杉原:そのとおりです。確かに1年前ぐらいはご指摘のような状況にあり、今後の方向性は不明瞭でした。しかし、この1年を通して、居酒屋で宴会を楽しむ消費者の頻度や平均人数は増加基調にあると感じています。

また、大手チェーン店を中心に、コロナ禍を経た消費者ニーズに即した新たな業態などが生まれており、外食産業は時代の変化への適応を図っている状況です。消費者ニーズを汲み取った居酒屋が賑わい、周囲の事業者がフォローしていくことで、アルコール業態の再活性化が起こると考えています。

質疑応答:今期の業績に対する感触について

質問者:四半期を追うごとに各種KPIが向上し、第3四半期は利益が大きく改善しました。業績を上げるために取り組んできたさまざまな施策の成果が、この第3四半期に大きく実を結んだのでしょうか?

それとも、この第3四半期で実感したというわけではなく、施策の成果が徐々に奏功してきたということでしょうか? 業績の感触についての考えを教えてください。

杉原:徐々に実を結んでいるという後者であるとお考えください。着実な回復と今後の成長を感じられるコンディションが整ってきており、自信を持って前進している状況です。

さらに、今後の成長を後押しする要素が見えてきていますので、兆しのあるものに集中的に投資を行い、売上をしっかりと上げていきたいと考えています。

質疑応答:「UMAME!」のアルゴリズムと将来のマネタイズについて

質問者:「UMAME!(うまみー!)」についてです。例えば、ボイスやテキストなどで「東京、居酒屋」と検索すると、いろいろな結果が出てくると思います。裏側にあるアルゴリズムは、今の「楽天ぐるなび」のおすすめ順のようなものを参照しているのか、ランダムなのかなど、どのように決定されているのかを教えてください。

また、AIによる検索が普及してくと、「上位に表示されたい」と思う飲食店も増え、検索ランキングが重要になってくるのではと思います。例えば、それを有料プランに組み込む、あるいは別のかたちでマネタイズを行うなど、将来のマネタイズポイントについて教えてください。

杉原:検索結果のアルゴリズムについては、一般的な項目要件に沿って、いつも同じような結果となるのではなく、ログインユーザーの行動履歴や利用履歴などを参照の上、最適なお店をその都度提案しています。

今後さらに、ユーザーのコンディションや好みなどをより反映しながら、AIが推奨・提案していく方針です。

したがって、店舗情報が充実すればするほど、それぞれのユーザーに対するマッチング精度が高まるというものです。あくまでもユーザーニーズに対するマッチ度の順で提案しますので、今までの検索の上位表示のような概念ではないということになります。

また、広告料を支払うことで、より有利に上位表示できるようにするといったお店に対するマネタイズの方向性についてお答えします。

今までの概念での上位表示とは異なりますが、例えばマッチ度が近いお店が2つあった場合に、より有利な条件を持っている店舗が先に提案されるといった仕組みは考えられるでしょう。また、店舗に対して「このようなユーザーが非常に多いと考えられるので、メニューを工夫しましょう。キャンペーンを展開してはどうでしょうか?」と、AIによるマッチ度がより高まるような提案・サポートも1つでしょう。

こうした仕組みやサポートに対する対価として料金をお支払いいただくことも考えられます。このように、従来の広告枠販売といったスタイルとは異なるかたちではあるものの、より高いレベルでのマッチ度を可能とし飲食店の売上アップにつながるサービスに関して有料化していく可能性はあると考えています。

質問者:とても楽しみです。

質疑応答:「UMAME!」のリリース後の手応えについて

質問者:「UMAME!」はまだβ版のため初速の話をするのは早いかもしれませんが、手応えとして、ダウンロード数や検索数、あるいは「UMAME!」を経由した予約などをどのように見ているのか、スタートの体感について教えてください。

また、夏に正式にリリースする中で、「UMAME!」を知ってもらうための認知広告など、キャンペーンを打つ計画があるのかについてご回答をお願いします。

杉原:初速については非常に良いペースです。iPhoneのアプリランキングで、上位になったことも確認できており、その前後にダウンロード数が伸びました。当社の想定を上回るかたちでご利用いただいているとの認識です。

また、フィードバックもたくさんいただいております。新しい体験を楽しみにしていただき、期待を寄せていただいているというものが非常に多く、概ね良好なご意見となっています。

これらを励みに、正式版のリリースに向けて半年間取り組んでいきます。実感としては、非常に良い滑り出しだと考えています。

質疑応答:組織変更の効果について

質問者:組織変更の効果についておうかがいします。昨年4月に「創って、作って、売る。商品造成力を高める。」を目指し、発展的廃止も含めた組織変更を実施したと思います。

定性的なコメントでもいいので、その後うまくいっている点など、組織変更後の状況、見えてきた可能性・課題について教えてください。

杉原:以前は、改善すべき課題が上がってはいるものの、具体策までは行きつかないこともありましたが、新たな組織体制になって以降は、改善点や課題について組織横断的に検討・協議し、その後の進捗についても管理するかたちとなっています。

特に、マーケティングエージェント領域や「幹事ガンバレプロジェクト」などについては、より良くするための討議がプロジェクトタームで集中的に行われています。

私のイメージでは、課題が明確となれば、新たなことを始めるためのハドルミーティングを集中的に行い、そこで決まった各役割をそれぞれの持ち場でしっかり進める。そして、1つのタームが終わったら成果を確認し合い、次のプロジェクトや活動に進んでいくというメリハリの効いた迅速な活動サイクルを回せていると思っています。

現在は、中核事業である飲食店支援領域を中心に、こうした活動を展開していますが、今後は、周辺事業でも取り組み、事業間のシナジーを高めたいと考えています。

質疑応答:採用について

質問者:採用についてです。生成AI技術の活用を目的として「ぐるなびNextプロジェクト」も始動する中、どのような人材を積極的に採用していきたいかを教えてください。また、そのような人材を計画どおり採用できているのかも含めてお願いします。

杉原:いわゆる営業の領域であれば、1つの商品だけを売るのではなく、飲食店の業務全般を理解し、それぞれの飲食事業者が置かれている状況を踏まえた総合的な提案・販売を行うセールスコンサルタントという人材を増やしたいと考えています。

また、若い感性のもと新たな技術を踏まえた提案ができる人材が必要だと感じています。

商品・サービスを供給していく企画の領域に関しても、新しい技術を用いたサービスの発案に長けた人材が必要です。

さらに、その後ろ側でエンジニアリングする開発や、UI/UXを含めた企画デザインの領域においても、AIなどを駆使する力・柔軟な発想力を持つ人材が必要です。

ただし、そのような人材は多くの企業が必要としていますので、取り合いになることはあるでしょう。

そうした中、当社としては、業界はもとより社会全体から見ても逸早くAI技術をはじめとする新たな技術を事業・サービスや社内業務に活用していきたいと考えています。どこよりも先んじて取り組む企業となることにより、当社に対する興味を持ってもらい、優秀な人材を集めることができるのではないかと思っています。

若い人材にも、どんどん任せ、事業を推進する姿勢を示すことで、人材獲得競争の中での優位性を保てるよう努力していきたいと考えています。

関連キーワード

関連記事