【QAあり】WOWOW、1Qは増収増益 「メディア・サービスの構造改革」や「新たな収益の創出」に取り組むことで、収益向上を目指す

2024年8月7日 15:35

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記事提供元:ログミーファイナンス

【QAあり】WOWOW、1Qは増収増益 「メディア・サービスの構造改革」や「新たな収益の創出」に取り組むことで、収益向上を目指す

【QAあり】WOWOW、1Qは増収増益 「メディア・サービスの構造改革」や「新たな収益の創出」に取り組むことで、収益向上を目指す[写真拡大]

2024年度第1四半期決算 ハイライト①

山本均氏(以下、山本):本日はお暑い中、ご参加いただきありがとうございます。代表取締役 社長執行役員の山本です。私からは2024年度第1四半期のハイライトについてご説明します。

新規加入件数は19万8,000件、解約件数は23万8,000件、正味加入件数は4万件の純減となりました。新サービス「WOWSPO」の開始や、サッカーなどのスポーツコンテンツが好評を得たことで、前年同期比で新規加入件数が増加した一方、目的番組終了などにより解約件数も増加しています。

その結果、正味加入件数はマイナス4万件と前年同期比で7,000件良化し、累計正味加入件数は242万7,000件となりました。

2024年度第1四半期決算 ハイライト②

収支のハイライトです。売上高は前年同期と比べ会員収入が減少したものの、映画事業などの「その他収入」が増加したことにより、増収となりました。経常利益は、前年同期にあった「ラ・リーガ」などの大型コンテンツの放送・配信がなかったことなどにより番組費が減少した結果、増益となっています。

パーパス(存在意義)の制定について

当社は今年5月にパーパスを制定しました。今、世の中は加速度的に変化しており、日本の人口も50歳以上が半数を超えていくという、これまでに経験したことのない時代に突入しています。そして、エンターテインメントの世界も大きく変わってきています。

そのような中で、社会的な存在価値として「人生をWOWで満たし、夢中で生きる大人を増やす」というパーパスを掲げ、当社は一歩前に踏み出したいと考えています。大人の日常に、刺激的なエンターテインメントを届け、人生にWOWをもたらし、WOWで満たしていくことで、夢中で生きる大人を増やすことにつながると信じています。

2024年度はこのパーパスを掲げて、スピーディに行動する年としたいと思っています。厳しい環境下だからこそ、これまでにない数多くの挑戦をしていきます。

サステナビリティ経営の強化

サステナビリティ経営の強化を図るため、当社は今年6月にWOWOWグループにおける「人権およびDEIに関する方針」を策定しました。本方針では人権尊重の責任を果たす決意に加え、本業を通して多様性が育まれる社会に寄与することを表明しています。

人権については、当社グループでは事業活動においてステークホルダーに対し人権尊重の責任を果たすため、国際規範や法令の遵守、人権リスクの継続的な評価に加え、人権に対する負の影響が明らかになった場合は、適切な手段で是正・救済に取り組みます。

また、DEIにおいては、当社グループの従業員やビジネスパートナーをはじめ、事業活動に関わる多様な個人が互いの個を尊重しながら、安心して生き生きと自分らしく活躍できてこそ、お客さまに対して新たな価値を届けられると考えています。そのため、DEIが浸透した企業文化の醸成に取り組んでいきます。

次に、決算の数字の詳細については、経営管理・経理統括の尾上からご説明します。

2024年度第1四半期決算 加入状況

尾上純一氏(以下、尾上):取締役 専務執行役員の尾上です。IRを担当しています。どうぞよろしくお願いします。

まず、加入状況です。新規加入件数は19万8,000件となりました。今年4月に開始した新サービス「WOWSPO」により、これまでWOWOWに加入していただけなかった若年層が多く加入し、「UEFA EURO 2024」「UEFA チャンピオンズリーグ」などのサッカーコンテンツが好評を博しました。これらにより、前年同期と比べ4万件の増加となっています。

解約件数は23万8,000件です。サッカーコンテンツなどの目的番組終了による解約が増えたことなどにより、前年同期に比べ3万3,000件の増加となりました。

その結果、正味加入件数は4万件の減少、累計正味加入件数は242万7,000件と、前年同期に比べ8万6,000件の減少となりました。なお、正味加入件数はマイナスではありますが、前年同期と比べ7,000件良化しています。

また、今回の数字には含まれませんが、今年6月に「UEFA EURO 2024」「UEFA チャンピオンズリーグ」「UEFA ヨーロッパリーグ」を合わせたシーズンパスを「WOWOWオンデマンドPPV(ペイパービュー)」で販売しました。そのため、WOWOWを楽しんでいただいているお客さまの数は見た目の数字以上に良化しています。

2024年度第1四半期決算 収支状況(連結)

連結の収支状況です。売上高は187億9,100万円で、前年同期に比べ4億7,600万円の増収となり、経常利益は16億5,300万円で、前年同期に比べ9億2,100万円の増益となりました。

売上高は加入件数の減少により会員収入が減少したものの、今年1月に公開した『ゴールデンカムイ』のヒットによる映画事業の売上高の増加や、グループ会社の売上が増加したことなどにより増収となっています。経常利益は増収の理由に加え、前年同期と比べ大型コンテンツの放送・配信がなかったことなどにより増益となりました。

セグメント別連結売上高/営業利益対比

セグメント別の状況です。まず、メディア・コンテンツセグメントはお客さまからの視聴料である会員収入が売上高の多くを占めています。

売上高は、会員収入が前年同期と比べ4億9,000万円減少したものの、その他収入において映画事業や子会社の外部売上高が増加したことなどにより、全体では1億4,200万円の増収となりました。営業利益は増収の理由に加え、番組費の減少などにより前年同期と比べ9億600万円の増益となっています。

次に、テレマーケティングセグメントは連結子会社のWOWOWコミュニケーションズにおける事業となります。外部顧客のテレマーケティング業務等の売上が減少したものの、昨年度に買収したフロストインターナショナルコーポレーションの売上が加わったことにより、売上高は前年同期と比べ2億1,400万円の増収となりました。

営業利益は、外部顧客からの売上減による利益減をフロストインターナショナルコーポレーションの利益ではカバーできず、前年同期と比べ4,400万円の減益となっています。

連結経常利益 前年同期との差異要因

連結経常利益の差異要因です。スライドの左側が利益の増加要因、右側が利益の減少要因となります。

まず、増加要因です。番組費が6億6,300万円減少しました。こちらの詳細は次のスライドでご説明します。

その他事業収支(単体)は4億7,700万円増加しています。これは映画事業の売上が増加したことなどによるものです。グループ会社の収支は、連結子会社のグループ外の売上が増加したことなどにより、1億4,900万円増加しました。また、広告宣伝費が1億2,600万円減少しています。

次に、減少要因です。会員収入が4億9,000万円減少しました。なお、前年同期は会員収入の減少が7億5,700万円だったため、減少幅は少なくなっています。

これは正味加入件数の減少幅の改善に加え、加入件数には含まれないサッカーのシーズンパスの売上が加わったことによるものです。「WOWSPO」の開始を含め、新しいサービスの導入が功を奏した結果と捉えています。

番組費の推移

第1四半期は、前年同期にあった「ラ・リーガ」や音楽ライブなどの大型コンテンツの放送・配信がなかったことなどにより、番組費は前年同期に比べ6億6,300円減少しています。

2024年度 加入計画

2024年度の加入計画については、正味加入件数がプラスマイナスゼロ、累計正味加入件数246万7,000件と今年5月の公表値から変更はありません。

第1四半期時点で正味加入件数はマイナス4万件となっていますが、スポーツコンテンツのシーズン終了による解約はある程度想定していました。新シーズンの開幕などにより、解約したお客さまが徐々に戻ってくることを見込んでいます。

また、後ほどご説明する今後のさまざまな取り組みによって、改善を図っていきます。

2024年度 収支計画(連結)

2024年度の収支計画は減収減益を見込んでいます。こちらも今年5月の公表値から変更はありません。

売上高は、昨年8月に買収したフロストインターナショナルコーポレーションが通期で寄与することなどにより、テレマーケティングセグメントが増収となるものの、会員収入が減少することなどにより、全体では前期に比べ減収となる見込みです。

経常利益については、広告宣伝費を効率的に投下するなど費用構造の改善には努めていきますが、会員収入の減少やWOWOWオンデマンド関連費用の増加などにより、前期に比べ減益となる見込みです。

なお、第1四半期で年度計画の経常利益を超えていますが、音楽ライブやスポーツコンテンツ、オリジナルドラマなど大型コンテンツの投入を計画しているため、年度の収支計画に変更はありません。

2024年度 配当計画

2024年度の配当は、1株当たり30円を計画しています。こちらも今年5月の公表値から変更はありません。株主還元についてはその重要性を認識しています。減収減益の状況下ですが、継続的に安定的な配当を行う方針を維持していきます。

収益向上に向けた取り組み①

井原多美氏(以下、井原):みなさま、こんにちは。取締役 専務執行役員の井原です。私からは、2024年度の重点戦略として掲げた「メディア・サービスの構造改革」と「新たな収益の創出」の取り組みについてご説明します。

メディア・サービスの構造改革においては、WOWOWの売り方にメスを入れ、さまざまな切り口で商品展開を行っていきます。

4月には「ABEMA」で「WOWSPO」を開始しました。さらに、昨年に引き続き、9月に開幕する「UEFA チャンピオンズリーグ」「UEFA ヨーロッパリーグ」のシーズンパス販売に加えて、新たに「UEFA EURO 2024」も合わせたシーズンパスの販売を期間限定で実施しました。こちらはお客さまから好評をいただき、順調な売れ行きとなりました。

また、新たな収益の創出としては、コンテンツを軸にした多層サービスの開発・提供に取り組んでいます。先日行われた「UEFA EURO 2024」では、全国のイオンシネマや英国風PUB「HUB」でのライブビューイングを実施しました。8月15日にも「UEFA スーパーカップ2024」でのライブビューイングをイオンシネマで行います。

収益向上に向けた取り組み②

8月から行われる「全米オープンテニス」では、HISとのコラボレーション企画でホスピタリティパッケージ付きツアーを実施するほか、ECショップでのグッズ販売など多層サービスに取り組んでいきます。本ツアーでは、通常なら観客が入れない一部の選手エリアに入れたり、ホスピタリティラウンジ(飲食)が使用できたりと、特別な体験をご用意しています。

また、7月に古江彩佳選手が日本人女子4人目のメジャー大会優勝を飾った「アムンディ・エビアン・チャンピオンシップ」でも、HISとコラボレーションした観戦ツアーを実施しました。参加したお客さまからは「最高の観戦ツアー大会となりました」「この瞬間にいられたことがとてもうれしいです」というお声をいただきました。

11月にも「LPGAロッテチャンピオンシップ」でも観戦ツアーを実施する予定です。

収益向上に向けた取り組み③

昨年、韓国のボーイズグループ「ATEEZ」と「xikers」の日本での単独公演の放送・配信権に加え、興行、物販、協賛の利用許諾を取得し、多層サービスの開発に取り組んでいます。

8月には当社主催で「ATEEZ」と「xikers」それぞれの日本初のファンミーティングを開催します。「ATEEZ」は東京・大阪で4日間、延べ約2万人を動員する予定で、チケットは完売する見込みです。今後成長が期待されている「xikers」も東京と大阪でファンミーティングを開催予定で、4日間で延べ4,000人を動員する見込みとなっています。

また、オリジナルドラマでは、広告収入による収益向上を目指すために「TVer」や「FOD」など外部動画配信サービスの活用を積極的に行っていきます。

映画『ゴールデンカムイ』の続編にあたるドラマシリーズ第1弾を2024年秋に放送・配信

いよいよ10月から映画『ゴールデンカムイ』の続編を「連続ドラマW」として放送・配信します。映画『ゴールデンカムイ』は観客動員数210万人、興行収入約30億円と、WOWOW FILMS史上最大のヒット作となりました。

9月からはドラマ放送に先駆けた特別番組を放送・配信するほか、さらにプロモーションを強化するなど、映画をご覧になったお客さまの新規加入獲得を目指していきます。

人気アーティストの音楽ライブを放送・配信

第2四半期は人気アーティストの最新ライブが充実しています。世界のミュージックシーンを席巻する韓国の5人組ガールズグループ「NewJeans」の日本初の単独公演となるファンミーティングの模様を8月に独占放送・配信し、4ヶ月連続で特集します。

また、吉川晃司と布袋寅泰によるユニット「COMPLEX」が、令和6年能登半島地震の復旧・復興のために開催した東京ドーム公演を独占放送・配信します。さらに、マルチアーティストの「Vaundy」と当社がコラボレーションした2つのオリジナルライブもお届けします。

そして、日本を代表する都市型フェスである「SUMMER SONIC」を、昨年に引き続き独占ライブ配信します。

新会社の設立について

近年、日本のコンテンツの人気が世界中で非常に高まっていることを背景に、映画やドラマなどのロケーション撮影について、海外から日本への誘致策を官民で推進する動きが出てきています。そのような状況をビジネスチャンスと捉え、海外作品の日本国内での映画、ドラマ、CM等の制作プロダクション業務を受託する子会社を7月17日に新設しました。

今後、海外の制作会社と連携を強化することで日本と諸外国との架け橋になりたいという想いを込めて、社名をWOWOW BRIDGEとしました。

当社はこれまで「TOKYO VICE」やドキュメンタリー番組など、海外とのコンテンツ制作に数多く取り組んできました。このような過去からのリレーションなどを活かすことにより、新規案件の受注獲得を目指していきます。

さらに、新規案件獲得による収益拡大を狙うことに加え、経理管理や労務管理、大規模な撮影体制などのグローバル基準を身につけ、今後世界に通用する作品を生み出す基礎を作っていくことを目指しています。

ご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:番組費の計画について

質問者:業績はすでに当初計画に対してかなり余裕があるように見えますが、追加コンテンツの導入を控えているため、通期計画は据え置いたとのご説明でした。成長に向けて、四半期ベースで赤字になるような番組費の使い方も選択肢として入っているのでしょうか?

尾上:番組費は当初計画どおりの数値を見込んでいます。単体の売上高の約40パーセント、すなわちほぼ前年並みとなる約255億円を投下する予定です。

新規加入を獲得するために、戦略的に番組費などを増やす選択肢もあるため、タイミングによっては四半期での赤字は想定しています。しかしながら、当然、新規加入件数だけではなく、既存のお客さまにしっかり見ていただくことで解約を抑えていきます。また、先ほど井原からご説明しましたが、コンテンツを基軸にしてさまざまなサービスを展開していく中で、それぞれのコンテンツにおいてどれだけの収益が得られるかを見ながら、今後の番組費の投下について考えていきたいと思います。

加えて、私どもがこれまで実施してきたコンテンツの投下により、WOWOWのブランド力を含めた価値もあるかと思います。そのあたりを総合的に加味しながら、コンテンツの投下については検討していきたいと考えています。

質疑応答:会員の引き留め施策について

質問者:第1四半期の実績は、新規加入件数が大きく増加、施策の効果も出ていると思う一方で、解約件数も非常に増加している状況です。今後の会員の引き留め施策としてはどのような戦略、方向性を取っていくのか教えてください。

井原:現在、会員数は減少傾向ですが、我々としては1回入ったお客さまに長く見ていただくために、多層サービスを増やすことにより、会員のメリットも強化していくことも目指しています。動画配信と放送だけではない別の形での会員メリットを考えています。

そして、これから「連続ドラマW ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編―」が始まりますが、このような話題になる大型コンテンツの展開によって、WOWOWに加入しているメリットをさらに感じていただくことを主に考えています。

質疑応答:現在の実力値の見方について

質問者:山本社長におうかがいしたいのですが、4月に社長に就任し、まずはパーパスを出したところで、どのように変革していくかに注目しています。現状の巡航速度で進んだ場合、自然体での御社の会員数、売上・利益はどれくらいの規模が実力値だとお考えでしょうか? 

山本:4月から社長になり、さまざまな手を打っていかなければならないと考えています。5年連続で加入件数が純減し、減収減益の中で社長になったため、再び成長軌道に戻せるよう改革に取り組んでいきたいと思っています。

売上・利益の規模については、ご存知のようにWOWOWはBS放送という有料放送サービスであり、会員収入の一本足で支えてきた事業モデルです。加入件数が5年連続で減ってきている中、当社としては減少傾向を食い止め、プラス転換したいと考えていますが、今年度の事業計画はプラスマイナスゼロ。まずはマイナストレンドから脱却したいと考えています。

そのための改革として、今までは月額2,300円の放送・配信サービスの単一商品でずっと展開してきましたが、昨年度からTVOD(都度課金制)やシーズンパスなどの新商品を増やしました。また、4月からは「WOWSPO」という新商品を外部のプラットフォームで販売しており、商品構造の変革に取り組んでいます。

先ほど井原からご説明した「メディア・サービスの構造改革」という意味では、加入件数が減少している中、これまでの単一商品だけで今の売上・利益規模を守るという発想ではなく、新しい商品でその減少を補っていく形で、今の売上・利益規模をまずは守っていくということを、1つ大きなテーマとしています。

質疑応答:今後のテコ入れの方向性について

質問者:コロナ禍前の御社は経常利益が100億円出ていたため、現在の水準は寂しく見えます。大きなテコ入れとして、一段変える施策を打つのではないかと予想しており、おそらく現在検討中かと推察しますが、どのような方向のテコ入れをお考えでしょうか? そのセンターピンはどのようなところなのか教えてください。

山本:映像サービスによる収入は当社にとって非常に重要ですが、新たな収益拡大のためには視聴以外のサービスによる収入を増やしていきたいと考えています。その大きな柱の1つに、eコマース事業を掲げています。ただし、eコマース事業は準備に時間がかかります。現在は井原を中心として、今年度中にWOWOWらしいeコマース事業を立ち上げたいと思っています。

先ほどご説明したツアーやオフィシャルグッズの販売なども、大きな意味ではエンターテインメントです。多くのファンがついているWOWOWとして、エンターテインメントを軸とした視聴以外のさまざまなサービスを提供することで、新たな収益の拡大を狙っていきたいと思います。

今後、当社が30年間築き上げてきたコンテンツ制作力を活かして、『ゴールデンカムイ』のような映画製作での収入アップも図っていきたいですし、WOWOW BRIDGEのような新ビジネスも我々だからこそできる新たな事業だと考えています。今までに築いてきた強みを新たな収益源に転換していくことに、スピード感を持って取り組んでいくのが本年度ではないかと捉えています。

質問者:確認ですが、収益を良くするためにはコスト構造の変革などに取り組んだほうが手っ取り早いかと思います。しかし、当面は現状のコスト構造のまま、なんとか売上の回復に注力していくという理解でよろしいですか?

山本:もちろん、現状のさまざまなコストを見直し、いわゆる断捨離ではありませんが、コスト削減は常に行っています。しかし、WOWOWのビジネスモデルとしては、コンテンツ費を簡単に削ると、それは負のスパイラルになると思います。そのため、コンテンツ費はきちんと維持したかたちでサービスを展開していきたいと考えています。

また、新規事業を立ち上げるためには投資も必要ですので、新たな収益を拡大するための投資はきちんと行っていく考えです。コスト削減を行っていないのではなく、削減できるところを見極めながら、しっかり削減していこうと考えています。

質疑応答:適切なキャッシュの水準および投資の方向性について

質問者:御社がキャッシュリッチだということは見ればわかりますが、適切なキャッシュの水準はどれくらいだとお考えでしょうか? また、投資の使い先はどのような方向感なのかを教えてください。

尾上:ご存知のとおり、キャッシュは連結で300億円弱あります。適切な水準は事業構造の展開によって変わってくると考えていますが、売上の月商2ヶ月程度はさまざまな費用の投下に対応するために運転資金として保有したいと考えています。

また、グループ会社含めて、既存事業の強化や新規事業創出等を目的とした成長投資も行ないます。これは、投資規模は公表していませんが、ある一定規模のキャッシュは投資に回したいと考えています。既存事業への投資や株主還元も考慮しつつ、成長投資の部分にも投下をしていくことが将来的な成長につながっていくと考えています。

質問者:方向的には事業に投資するのであって、会員数を獲得するために、ある程度高くてもコンテンツを買うという方向は考えていないということですか?

尾上:考えていないと言い切るわけではありませんが、一時的な会員数の増加だけでなく、コンテンツを中心として将来的にどのような利益を取っていくかが重要だと考えています。

一番わかりやすいのが、先ほどご説明した韓国のアーティストの権利を取得した上で放送・配信を行いつつ、さまざまなサービスに投下していくものです。将来の収益に資するようなものがコンテンツであればコンテンツを選択するかもしれませんし、事業会社との提携や資本に投下することがその時点での最適解であれば、そちらに投下することもあるかもしれません。その場ごとで適切に判断していきたいと考えています。

山本氏からのご挨拶

山本:本日は決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございました。前回の決算説明会では、実は「UEFA EURO 2024」については一言も触れていませんでした。これは本当に開幕ギリギリに権利がまとまったもので、プログラムガイドにも載せられなかったのですが、急遽放送することができました。

結果として、「ABEMA」でも全試合無料生中継というかたちになりましたが、WOWOWのサッカーファンの間ではEUROの放送・配信は大変評判だったと聞いており、非常に手応えも感じています。また、「UEFA チャンピオンズリーグ」「UEFA ヨーロッパリーグ」とのセットパックも非常に好評でしたので、急遽決まったことではありますが、素早く展開できたという意味では手応えを感じています。

さらに、本日は5月に制定したパーパス、および6月に策定した「人権およびDEIに関する方針」についてご説明しました。ステークホルダーおよび社会からの信頼・期待に応えるため、企業として引き続き努力していきたいと思っています。ご支援のほど、どうぞよろしくお願いします。本日はありがとうございました。

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