日揮HD、ガス発酵によるバイオものづくりの拠点 神戸に新設 世界初

2024年7月20日 09:53

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バイオプロセス研究所の完成イメージ(画像:日揮ホールディングスの発表資料より)

バイオプロセス研究所の完成イメージ(画像:日揮ホールディングスの発表資料より)[写真拡大]

 日揮ホールディングスは17日、世界初となるガス発酵によるバイオものづくりの研究開発拠点「バイオプロセス研究所」(通称:JBX)を新設すると発表した。

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 新拠点では、ガス発酵微生物が持つ能力を活かして改良・デザインし、二酸化炭素(CO2)を原料に有機物を生産する、一連の研究開発を進める。建設地は、兵庫県神戸市の人工島「ポートアイランド」。2024年8月中に建設を開始する予定だ。

 今回の研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に採択されたプロジェクト、「CO2からの微生物による直接ポリマー合成技術開発」にもとづくものだ。

 23年より開始し、日揮HDのほか、カネカ、島津製作所、神戸大学発スタートアップ企業のバッカス・バイオイノベーション(以下、バッカス)の4社が参画。日揮HDのガスハンドリング技術や、カネカのバイオポリマー技術、島津製作所のガス発酵評価技術、バッカスの微生物の開発・改良技術などを組み合わせて、研究開発を進めている。

 JBXでは、CO2を吸収して、化学品原料などの有機物を生産する「水素酸化細菌」の活用を想定している。水素酸化細菌は、水素と酸素をエネルギー源にしてCO2を取り込み、生体内でCO2を有機物に変換しながら増殖する特殊な微生物だ。

 延床面積約4,000平方メートルの研究棟内に、数リットル~数百リットルの培養槽を設置して研究を進める。研究が進展した際には、敷地内に2棟目の研究棟を建設する予定もある。

 日揮HDはこれまで、微生物の能力を人為的に高める技術を持つバッカスとの連携を強めてきた。両社は共同で、目的の物質を効率的に生産する微生物の開発や機能強化、スケールアップ、生産プロセスの開発まで一気通貫で行う「統合型バイオファウンドリ」事業を推進。事業を通じて、数十年かかっていた商業化までの期間を1/10以下に短縮することを目指している。

 日揮HDは今回の発表と同時に、バッカスに第三者割当増資の実施も発表。社会実装に向けて、関係強化を図ったという。

 日揮HDがバイオものづくりを推進するベースには、2021年に発表した「2040年ビジョン」がある。エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立を掲げて、環境関連技術の事業化に取り組んでおり、バイオ分野もその1つ。オイル・ガス事業で得た、ガスハンドリング技術やスケールアップ技術、医療薬品製造で得た培養槽の設計技術などを活かせる分野として注力している。

 同社はバッカスとの事業推進でバイオ関連事業を確立し、収益の多様化を目指すという。(記事:三部朗・記事一覧を見る

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