電子部品関連3社の4-12月期決算

2024年2月26日 08:53

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記事提供元:エコノミックニュース

自動車向けは持ち直してもそれ以外が不振で3社で明暗が分かれる決算内容

自動車向けは持ち直してもそれ以外が不振で3社で明暗が分かれる決算内容[写真拡大]

 自動車向けは持ち直してもそれ以外が不振で3社で明暗が分かれる決算内容

 2月2日、京都市やその近郊に本社を置く村田製作所、ニデック(旧・日本電産)、ロームの電子部品「京都3社」の、2023年4~12月期(第3四半期)決算が出揃った。

 新型コロナの感染拡大は終息に向かい、グローバルな自動車生産台数も下げ止まって反転しているが、それ以外のコンピュータ、白物家電などの民生機器、産業機器、通信機器などは市場環境が揃って悪化しており、それが電子部品各社の業績に影を落としている。村田製作所は減収・2ケタ減益、ロームも全セグメントが減収減益で、ニデックは自動車向け需要の回復をテコに増収増益という、4-12月期は各社まちまちな決算内容になっている。

 2024年3月期の通期業績見通しも、村田製作所が修正なし、ロームが下方修正、ニデックは売上高を上方修正、利益各項目は下方修正と、明暗が分かれている。

■村田製作所は通期見通しで能登半島地震の影響を考慮

 村田製作所の4~12月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上収益は6.7%減の1兆2497億円、営業利益は22.9%減の2151億円、税引前四半期利益は20.2%減の2254億円、四半期利益は18.0%減の1745億円という減収・2ケタ減益決算。増収増益だった1年前の4~12月期決算から一変した。四半期利益(最終利益)の通期見通しに対する進捗率は77.5%である。

 製品分野別の売上収益は、コンポーネント分野は前年同期比2.5%減。コンデンサもインダクタ・EMIフィルタも、モビリティやスマホ向けは伸びてもPC、AV機器向けが減少した。デバイス・モジュール分野は11.6%減。主にスマホ向けの高周波・通信分野、センサ、タイミングデバイスなど機能デバイス分野は6.4%減にとどまったが、エナジー・パワー分野はゲーム機などのパワーツール向けリチウムイオン二次電池が悪く、25.0%減とかなり不振だった。その他も7.3%減で、売上がプラスの製品分野が一つもなかった。

 用途別の売上収益では通信向けが1.8%減と微減だが、コンピュータ向け、家電向け、産業・その他向けが揃って2ケタの売上減になり、収益の足を引っ張った。それでもEVを中心に世界的に自動車の電動化、電装化が進んでいることで、モビリティ向けは10.5%増と孤軍奮闘をみせていた。

 通期業績見通しは修正なし。売上高は4.0%減の1兆6200億円、営業利益は9.5%減の2700億円、税引前利益は1.5%減の2980億円、当期利益は7.8%減の2250億円という減収減益見通しである。予想期末配当は前期比50円減配の25円だが、2023年10月1日に1株につき3株の割合で株式分割を行っているので、実質的には年間配当ともども配当据え置きの予想になる。

 村田製作所は富山、石川、福井の北陸3県に数多くの事業所があり、1月1日の能登半島地震の影響は小さくない。大半は1月中に生産を再開し、富山県氷見市の事業所は2月に再開できたが、石川県七尾市の事業所は3月、石川県穴水町の事業所は5月に、それぞれ生産再開予定がずれ込んでいる。通期業績見通しでは震災関連費用の発生を見込み、その影響を考慮している。なお、コンデンサなど電子部品に塗装するめっき技術の開発、量産化を担う新研究施設を夏に福井県鯖江市に完成させる予定だが、能登半島とは距離が離れていて、影響は軽微という。

■ニデックはEVトラクションモータ事業が再出発へ

 ニデック(旧・日本電産)の4~12月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上高は3.2%増の1兆7546億円、営業利益は36.1%増の1693億円、税引前利益は36.5%増の1937億円、四半期利益は40.2%増の1459億円だった。前年同期比で増収幅は縮まったが、営業利益は減益から2ケタ増益へ一変し、税引前利益、四半期利益は増益幅が大きく拡大。売上高、営業利益、税引前利益、四半期利益の全項目で過去最高を更新した。4~12月期四半期利益(最終利益)の通期見通しに対する進捗率は67.8%である。

 製品グループ別では、「精密小型モータ」はHDD用モータが売上21.2%減と悪く外部売上高4.4%減になったが、営業利益は3.8%増。固定費の大幅低減、原価改善、売価改善が増益につながった。「車載」は外部売上高10.1%増、営業損益は黒字転換。これまで中国のEV市場の競争激化の影響をもろに受けてきたが、グローバルな自動車生産台数の回復を着実に取り込むことができたという。これまで業績の足を引っ張ったのがトラクションモータシステム(E-Axle)を生産するEVトラクションモータ事業だったが、固定費の大幅低減、不採算機種の受注制限、人事の大幅見直しなど、収益性を最優先した大胆な戦略転換を実施し再出発(リスタート)を図っていく方針。事業の財務健全化、今後の収益力強化に資する構造改革費用の計上を想定している。

 「家電・商業・産業用」は外部売上高5.3%増、営業利益45.9%増。モーション&エナジー事業本部(MOEN)は旺盛なインフラ関連需要を背景に発電機、クリーンエネルギー関連製品が好調で、抜本的なコスト構造改革も大幅増益に結びついた。「機器装置」は外部売上高2.2%減、営業利益18.1%減、「電子・光学部品」は外部売上高2.1%減、営業利益9.9%減と、ともにふるわなかった。「その他」は外部売上高7.7%増、営業利益10.7%減だった。

 通期業績見通しは、売上高は1000億円上方修正し2.5%増の2兆3000億円、営業利益は400億円下方修正し80.1%増の1800億円、税引前利益は50億円下方修正し70.2%増の2050億円、当期利益は300億円下方修正し200.6%増(約3倍)の1350億円とした。

 利益各項目を下方修正しても前期比では大幅増益を維持。四半期利益の通期見通しに対する進捗率は108.0%で、すでに通期見通しの数字を上回っている。予想期末配当は前期比5円増配の40円、予想年間配当は前期比5円増配の75円へ、それぞれ上方修正している。

■ロームは自動車向けが健闘しても他の不振を補えず

 ロームの4~12月期決算(日本基準)は、売上高は9.0%減の3551億円、営業利益は46.1%減の406億円、経常利益は33.6%減の601億円、四半期純利益は33.6%減の451億円の減収減益決算。2ケタ増収増益だった前年同期から業績が一変している。四半期利益(最終利益)の通期見通しに対する進捗率は93.9%である。

 1年前の前年同期は全セグメントが増収増益だったが、4~12月期は逆に全セグメントが減収減益になった。

 LSIの売上高は前年同期比11.2%減、セグメント利益は55.5%減。自動車関連は、xEV(電動車)のパワートレイン向け絶縁ゲートドライバIC、車載LEDドライバIC、高性能半導体パワースイッチIPDを中心に高付加価値製品の販売が底堅く推移したものの、民生機器のAV機器、白物家電向けが悪く、PC関連のSSD向け電源IC、FANモータドライバICも売上を落とした。産業機器、通信機器も市場環境が悪化している。

 半導体素子はセグメント売上高7.2%減、セグメント利益48.4%減。自動車関連のxEV向けのトランジスタ、ダイオード、パワーデバイスは好調だったが、コンピュータ&ストレージ、産業機器、民生機器の各市場で売上減が続き、かつての稼ぎ頭だった発光ダイオードや半導体レーザーも販売が低迷した。

 モジュールはセグメント売上高3.7%減、セグメント利益47.8%減。スマホ向けセンサモジュールのような好調な製品もあるが、決済端末向けプリンタヘッドの売上減が響いた。その他の分野はセグメント売上高10.4%減、セグメント利益59.6%減。抵抗器は自動車市場向けが健闘したが、産業機器市場向けの落ち込みを補えなかった。

 通期業績見通しを下方修正。売上高は300億円引き下げて7.5%減の4700億円、営業利益は90億円引き下げて52.3%減の440億円、経常利益は60億円引き下げて41.6%減の640億円、当期純利益は110億円引き下げて40.3%減の480億円とした。予想期末配当は前期比75円減(4分の1)の25円だが、2023年10月1日に1株につき4株の割合で株式分割を行っているので、年間配当ともども実質的には配当据え置き予想になる。(編集担当:寺尾淳)

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