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【QAあり】出光興産、カーボンニュートラルへの大胆な一歩、脱炭素事業・成⾧事業へシフトしつつ利益成⾧を実現、株主還元も拡大
【QAあり】出光興産、カーボンニュートラルへの大胆な一歩、脱炭素事業・成⾧事業へシフトしつつ利益成⾧を実現、株主還元も拡大[写真拡大]
本日のご説明内容
茂木大輔氏(以下、茂木):本日は貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。出光興産の茂木と申します。本日お伝えしたいポイントはスライドに記載の4点です。
出光創業の精神
茂木:当社の概要をご説明します。スライド左側の写真が、創業者の出光佐三です。当社は、1911年に北九州・門司で石油販売業を開始しました。
創業者の出光佐三が掲げた主義方針の1つに「人間尊重」があります。終戦後は多くの企業が財産を失い、人員整理などを行ってきました。当時の出光には1,000名ほどの従業員がいましたが、一切クビを切らないという意思を持って進めてきました。
また、戦後の国内では、石油流通においても製品が不足していた中で、イランから原油の輸入を強行した日章丸事件のエピソードも非常に有名です。出光佐三の生涯は、2012年に百田尚樹さんが出版した小説『海賊とよばれた男』のモデルにもなっており、後に映画化もされています。
企業理念
茂木:企業理念についてです。現在は「真に働く」を掲げていますが、先ほどお話しした経営の原点「人間尊重」という創業時の精神は、今も引き継がれています。
「真に働く」という企業理念は、2019年に昭和シェル石油と出光興産が経営統合し、両社の人員で議論を重ねて、あらためて成文化したものです。これからも、エネルギー事業を中心に人の力を軸にした経営で社会貢献を目指していきたいと考えています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):質問を入れながら進めていきたいと思います。先ほどもご説明があったとおり、御社は近年大きな経営統合がありましたが、大家族主義も含めた創業からの経営の精神は、今も受け継がれているのでしょうか?
茂木:当社は創業以来、人が資本、人が中心の経営という考え方を大切にしてきた企業です。今の経営層も、ことあるごとに「当社の究極の経営目的は、事業を通じて人が育つことである」と言っています。したがって、ご質問いただいた創業の精神は、脈々と引き継がれていると感じています。
出光の概要
茂木:当社の概要です。先ほどお話ししたとおり、2019年に昭和シェル石油と経営統合して、現在は国内の石油元売として2番目の規模になります。売上高は9.5兆円と、前期の実績は国内で15番目ほどの規模感です。
現在はプライム市場に上場していますが、もともと上場の歴史はそこまで長くありません。2006年に当時の東証一部に上場してから、まだ非常に日が浅い会社です。
数字で見る出光
茂木:数字で見る出光についてご説明します。スライドでは、売上の規模感を事業別・地域別に示しています。
左側のグラフは、事業別の売上比率です。約80パーセントが燃料油セグメントで、石油製品等の販売が占めています。次いで基礎化学品セグメント、資源セグメントがそれぞれ7パーセント程度となっており、高機能材セグメントが5パーセント、電力・再生可能エネルギーセグメントが2パーセントとなっています。
右側のグラフは、地域別の売上比率です。日本での売上が7割、残りの3割は海外での売上になっており、アジア・オセアニアが18パーセント程度となっています。
坂本:日本は燃料油セグメントの割合が多いと思うのですが、海外の売上は基礎化学品セグメントや、潤滑油などの高機能剤セグメントが主なのでしょうか? 状況を教えてください。
茂木:これら5つのセグメントすべてで海外展開を行っており、売上があります。それを踏まえた上で、資源セグメントの割合が非常に大きく、後ほど詳細にご説明する石炭や石油開発を行っています。
次いで、燃料油セグメントです。国内のみならず海外にも輸出していますし、現在は海外でのトレーディング事業も拡大しています。海外における売上比率の割合は、この両事業が大きく占めていると考えています。
燃料油セグメント ~エネルギーの安定供給~
茂木:セグメントごとにご説明します。燃料油セグメントについては、国内シェアで2番目ですが、国内需要の約3割をカバーしている事業です。
簡単にお伝えすると、中東から原油を調達し、国内に6ヶ所ある製油所で精製して、ガソリンや軽油、灯油などの石油製品を作ります。その後、全国に6,000ヶ所強あるサービスステーション、いわゆるガソリンスタンドを通じて石油製品の販売を行っています。
基礎化学品セグメント ~生活用品等の原料~ 高機能材セグメント 〜出光の技術の結晶〜
茂木:基礎化学品セグメントは、石油精製事業と非常に関係性が強く、精製の過程で生じる留分などを使い、プラスチック製品や衣類、容器などの原料となるエチレンを筆頭に、各種化学製品を生産しています。さまざまな生活用品の原料となるものです。
高機能材セグメントも、石油精製事業から派生しました。石油化学で培ってきた当社のコア技術をさまざまな製品に展開してきたため、「技術の結晶」と記載しています。潤滑油については、現在は世界28ヶ国に展開しており、グローバルでのシェアは8番目ぐらいになると思います。
また、エンジニアリングプラスチックはあまり聞き慣れない製品だと思いますが、いわゆるプラスチックです。非常に軽量で耐久性があるため、自動車関連部品や精密機器などに使われています。
有機EL材料は有機ELテレビのほか、最近はスマートフォンにも採用されています。当社は青色発光材料に非常に強みを持っており、アジアを中心とした代表的なメーカーに供給しています。
電力・再エネセグメント 〜発電・販売・電源開発〜 資源セグメント 〜石油・天然ガス・石炭の生産・販売〜
茂木:電力・再生可能エネルギーセグメントでは、高効率火力の発電所や再生可能エネルギーなどを運営しています。国内においては小売事業を展開しており、家庭向けには「idemitsuでんき」というブランドで販売しています。今、自社電源は190万キロワットぐらいあり、4割強が再生可能エネルギーになっています。
資源セグメントでは、原油や天然ガス、石炭などの開発・生産を行っています。原油・天然ガスについては、現在はベトナム沖で天然ガスの生産を行っています。ノルウェー領北海の鉱区では石油を開発しています。石炭についてはオーストラリアに権益を保有しており、現在は国内需要の10パーセントぐらいを担っています。
グローバル展開の強み
茂木:スライドは、グローバル展開の強みのイメージ図です。比較的幅広い事業で海外展開を行っており、現在は64拠点ほどあります。グローバルに事業所・事務所、工場等を持っている状況です。
中長期ビジョンについて
茂木:中長期的なビジョンについてご説明します。動画をご用意していますのでご覧ください。
2050年ビジョン
茂木:動画でご覧いただいたとおり、もともと弊社では2030年ビジョンを「責任ある変革者」と定めていましたが、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けては、やはりもう少し長い時間軸で捉える必要があると考え、新たな2050年ビジョン「変革をカタチに」を策定しました。
新たな3つの事業領域の中で変革を具現化して社会実装していくために、「人びとの暮らしを支える責任」そして「未来の地球環境を守る責任」を果たしていきたいと考えています。
2050年カーボンニュートラルへの道筋
茂木:2050年カーボンニュートラルへの道筋についてです。ESGの課題は多数ありますが、弊社においてはCO2の排出量削減が非常に優先度の高い課題だと考えています。
生活に欠かせないエネルギーを安定供給しながら、しっかりと事業ポートフォリオを転換して、まずは自社操業に伴う排出量におけるカーボンニュートラルを目指してコミットしているところです。
2030年時点の中間目標として、2013年比で46パーセント削減を公表しています。前中期経営計画で設定していた目標からさらに上積みしています。
坂本:自社操業に伴うCO2排出量実質ゼロを目指すとのことですが、どのような取り組みをしているのでしょうか?
茂木:2030年をターゲットとしてご説明すると、国内の石油製品の需要は、2019年比で3割ほど減少すると考えています。石油製品の需要減少に合わせて、製品を生産する製油所等については統廃合を行っていくことが必要であり、これが1つの大きな取り組みになると思っています。
すでに取り組んでいる製油所・事業所の省エネルギー化や、電力のゼロエミッション化、あるいは燃料転換によるCO2排出量削減を継続することに加えて、森林投資などによるネガティブエミッションも活用することで、トータルで目標達成を目指していく考えです。
2030年から先については、化石燃料からカーボンニュートラルエネルギーに事業構造自体を転換していくことが、この目標達成に向けた大きな柱になると考えています。
2030年の事業領域と社会実装テーマ
茂木:スライドの図は、現在の5つの事業セグメントから、3つの事業領域へのイメージを示したものです。「一歩先のエネルギー」「多様な省資源・資源循環ソリューション」「スマートよろずや」という3つの事業領域を掲げ、将来のカーボンニュートラル社会においても、エネルギーとマテリアルのメインプレーヤーでありたいと考えています。2030年までをめどに、16の社会実装テーマに取り組んでいきます。
2030年基本方針
茂木:2030年に向けての基本方針です。大きな考え方としては、左側の事業構造改革投資と右側の人的資本投資をしっかり推進していくことで、この両輪で事業ポートフォリオを転換していきたいと考えています。
両輪の1つとして人的資本投資を置いているのは、冒頭でもお伝えしたとおり、当社の強いこだわりである「事業を通じて人が育つ」という考え方を反映しているためです。
荒井沙織氏:ここでうかがいたいのですが、他社と比較した際の御社の強みを教えてください。
茂木:今のお話の流れもありますので、1点目としては人財を挙げたいと思います。当社は、事業を通じて人財を育成し、社会に貢献していくことを一番に考えています。そのようなことから、今ご説明した2030年の基本方針でも、事業構造改革と人財は両輪であるという位置付けになっています。
その人財が生き生きと働ける環境を整えて、しっかりとパフォーマンスを上げていくことも非常に重要だと思っています。そのため、人事制度や女性活躍をはじめとしたダイバーシティの推進にも取り組んでおり、人的資本への投資についてもしっかりと拡大していく方針です。
2点目の強みとしては、後ほど少しご説明しますが、事業構造改革に向けて、既存のアセットやリソースなどを十分に活用・転用していけることだと思います。例えば、エネルギー系であれば、アンモニアや合成燃料、SAF(サフ)といったさまざまなメニューがありますが、これらのものは当社の製油所や事業所の施設、具体的には桟橋やパイプライン、タンクといったアセットが活用可能です。
また、事業構造改革は非常に大きな取り組みですので、当社の力だけではなく、いろいろな方とパートナーシップを組んで進めていくことになると思いますが、これまでもさまざまな企業とパートナーシップを組ませていただいています。そのため、このような関係性をさらに進化させていくことができる点も当社の強みであると考えています。
事業ポートフォリオ転換を通じた持続的成⾧の実現
茂木:スライドのグラフは2030年に向けた収益のイメージです。事業ポートフォリオの転換を通じて、脱炭素事業、成長事業にシフトし、収益構造を転換して、それと合わせてしっかりと利益成長も実現することを考えています。
事業構造改革投資と呼んでいる新規事業に対する投資は、2030年までに1兆円規模を想定しています。これによって新たな事業領域の収益を創出して、結果的に化石燃料事業の収益比率を下げていくことで、2030年時点のセグメント利益としては、今の計画では2,700億円ほどの規模感で想定しています。
坂本:2030年の利益に占める非化石燃料事業は増える見込みとのことですが、先ほどカーボンニュートラルや石油製品の需要減のお話もありました。新規事業においてどの分野が伸びると想定しているのか、ご説明の中で織り込んでもらってもかまいませんので、教えてください。
茂木:現在も取り組んでいる非化石燃料事業には、高機能材セグメントの潤滑油や有機EL、電子材料などが含まれます。また、今後は電力・再生可能エネルギーセグメントも、特に再生可能エネルギーの需要が伸長していく領域だと思っており、それが既存事業として伸びていくと考えています。
新規事業については、後ほど事例を交えながら詳細をご説明しますが、新規事業と既存事業の両面において非化石燃料事業を伸ばしていく考えです。
中期経営計画の主な進捗
茂木:中期経営計画の主な進捗、特に新規事業の直近の進捗状況についてご説明します。スライドには、次世代電池向け固体電解質、持続可能な航空燃料であるSAF、使用済みプラスチックの再資源化、新しいサービスステーションの形である「apolloONE」について掲載しています。
詳細は後ほどご説明しますが、一番お伝えしたいメッセージとしては、いずれの事業も他社としっかりと手を組んで進めている点です。カーボンニュートラルは非常に大きいゴールであるため、個社単独ではなくさまざまな方と手を取りあって進めていきたいと考えています。
次世代電池向け固体電解質上市へ開発を加速
茂木:先ほどご紹介した取り組みをそれぞれご説明します。まず、次世代電池向けの固体電解質についてです。
固体電解質は、電池性能の飛躍的な向上が期待されている全固体電池を構成する重要な材料で、EV等への適用が非常に期待されています。当社においては、固体電解質という材料の量産化技術の確立を目指して、取り組みを推進しています。
現在、EV車に搭載されている電池は、基本的には液系が主流ですが、液系から固体への転換を進めることで、大きなメリットがあると言われています。例えば自動車の小型化や軽量化、安全性の向上、また充電時間が短縮できたり、航続距離が延びたりといった点です。
当社は、製油所から生産される硫化物を原料とした固体電解質の材料開発に強みを持っており、原料から最終的な製品まで一貫した製造技術と特許を有しています。先般、トヨタ自動車との協業を公表しましたが、足元では小型の実証プラントの能力増強に加え、新たに第2プラントの稼働も開始しており、混合型パイロット装置での量産化技術の確立に向けて、取り組みを進めています。
坂本:バッテリーEVの全固体電池に関して、必要な特許をかなりお持ちとのことですが、他社もこの製品を開発しているところだと思います。他社製品との違いを、優位性も含めて教えてください。
茂木:実は固体電解質の中でもいろいろと種類があり、硫化物系、ポリマー系、酸化物系など複数あります。当社では硫化物系を扱っていますが、これはイオンを早く動かす性能、いわゆるイオン伝導度に非常に優れています。つまり充電時間を最も短縮できたり、あるいは航続距離が延びたりということが期待されている材料であると考えており、当社の優位性がある部分だと思っています。
SAF(持続可能な航空燃料)供給体制構築
茂木:SAFについてです。Sustainable Aviation Fuelの略で、原料の生産から収集、製造、燃焼といった一連のライフサイクルの中で、従来の化石由来の航空燃料に比べて、GHG(温室効果ガス)の排出量が大きく削減できます。加えて、既存のインフラもそのまま使えることから、非常に期待されている燃料の1つです。
航空業界では、2030年に燃料の10パーセントをSAFに置き換えていくことを目標としています。
当社では、エタノールからSAFを製造するプロセスであるATJという技術を用いた製造設備を、千葉の事業所内に建設しました。2026年ごろの供給開始を目指しています。
食用作物との競合の少ない原料の確保も課題ですが、こうした課題についてもさまざまなパートナーシップを組んで、活動を推進しています。2030年には、50万キロリットルほどの供給体制を構築していきたいと考えています。
使用済みプラスチックの再資源化
茂木:使用済みプラスチックの再資源化についてです。さまざまな報道でもあるとおり、プラスチックにはいろいろな環境問題を引き起こす側面があります。
現在、国内では年間800万トンほどの使用済みのプラスチックが出ていますが、再生品への利用はそのうちの2割ほどにとどまっています。したがって、使用済みのプラスチックの多くは再生利用ができておらず、それらは焼却処分されていることになります。
当社では、製油所設備を活用して、プラスチックの油化技術の開発に取り組んでいます。具体的には、千葉の事業所内に新たなプラスチックの油化装置を建設し、2025年に商業運転の開始を目指しています。焼却処分されるはずだったプラスチックの再資源化につながる、非常に重要な取り組みだと思っています。
「スマートよろずや」構想-apolloONEの展開
茂木:「スマートよろずや」構想についてです。「スマートよろずや」とは当社の造語で、さまざまなタイプのサービスを、各地域のニーズに合わせて提供するという新しい形づくりをコンセプトにしています。
その1つの形態として、10月にモビリティサービスに特化した専門店「apolloONE」をオープンしました。こちらはカーコーティングや洗車などに特化した店舗で、さまざまなデジタルツールとも連携させて、効率的に運営を行っていこうと考えています。地域のニーズに合わせて、このようなサービスをどんどんラインナップしていき、2030年には「apolloONE」を250店舗ほどまで増やしていく方針です。
坂本:スライドの画像を見る限り、給油設備が見当たらないのですが、こちらでは燃料の販売はしないのでしょうか? もしそうであれば、廃業するガソリンスタンドを転用することも可能だと思いますが、そのあたりを教えてください。
茂木:おっしゃるとおり、今回の1号店は休止していたサービスステーションのリノベーションで、燃料販売を行わない店舗です。国内の燃料の需要自体は右肩下がりのため、燃料の販売にとらわれず、地域のニーズに合ったモビリティサービスを引き続き提供していきたいと考えています。
2023年度業績予想 (中期経営計画対比)
茂木:業績および株主還元のパートに移ります。こちらのスライドは、今年度の最新の業績予想を、中期経営計画対比で簡単にサマリーしたものです。
最新の予想値としては、営業利益で2,200億円、当期純利益で1,500億円ということで、いずれも在庫の影響を除いた数字になりますが、中期経営計画対比でかなり順調に進捗しています。
株主還元方針
茂木:株主還元方針です。足元の業績動向等を踏まえて、2023年11月に株主還元方針を一部変更しました。3カ年累計の在庫影響除きの当期純利益に対して、総還元性向50パーセント以上という方針については変更ありません。
変更点はスライドに記載の2点です。1点目は配当について、従前120円の水準から160円へ増配したことに加えて、160円の水準を下限とすることを決定しました。
2点目は自己株式取得です。株価の水準なども意識をし、機動的に実施していく方針で、現時点で350億円ほどの自己株式取得を決定しています。株主のみなさまに対する利益還元については、引き続き経営の重要な課題と認識しています。
坂本:2025年度までは総還元性向50パーセント以上を目標としているとのことですが、その後の見通しについても可能な範囲で教えてください。
茂木:2026年度以降の株主還元方針等について、現時点で決まっていることはまったくありません。当然ながら、業績やその先のキャッシュフロー、投資の状況等の見通しに加えて、資本市場や株主のみなさまと対話もしながら検討していくことになると思っています。
個人投資家様・株主様にむけて
茂木:冒頭でも少し時間を取ってご説明しましたが、今後、我々としてもカーボンニュートラルという課題に向けてしっかりと取り組んでいきます。一方で、現状のエネルギーの安定供給も、非常に重要な使命だと考えています。この両立にしっかり取り組んでいく考えです。
これらは非常に大きな課題ですので、投資家あるいは株主といったみなさまの立場からも、ご支援いただければと思っています。また、我々としてもみなさまのご理解やご支援をいただけるように、今後も双方向のコミュニケーションや情報開示などを充実させていきたいと考えています。
株式分割の実施
茂木:今回新しく実施する取り組みをご紹介します。11月に株式分割の実施を決定しました。現状の株価は約4,000円、投資単位としては40万円ぐらいです。効力発生日を2024年1月1日として5分割することで、投資単位は8万円ほどになると想定しています。
株主様専用Webサイト「いでみつコネクト」
茂木:当社の株主さま向けの施策をいくつかご紹介します。1つ目は、2023年6月に開設した、株主さま専用サイト「いでみつコネクト」です。新たな情報発信、あるいは双方向のコミュニケーションを目的としており、このツールを通じてさまざまな情報発信などを行っていきたいと思っています。
抽選制優待制度の導入
茂木:2つ目は、今回から導入した抽選制優待制度です。日頃のみなさまからのご支援に対する感謝も含めて新たに設定しました。テレビ朝日系列の音楽番組『題名のない音楽会』の収録招待と、「キッザニア(東京・甲子園・福岡)」の入場券の贈呈を考えています。
事業所見学会の開始
茂木:3つ目は、当社自体や当社の事業について理解を深めていただくことを目的に、事業所見学会も開催していきます。まずは2024年3月に、創業の地である北九州・門司で「出光創業史料室」の見学ツアーを開催します。来年度以降には「製油所・事業所・歴史展示ギャラリー等見学会」も実施を拡大していきたいと思っています。
株主様限定社⾧ライブ配信の実施
茂木:また、12月18日には社長ライブ配信として、株主さまに向けてダイレクトにコミュニケーションを取る場を設けています。初めての取り組みですが、社長の木藤に加え、今回ご説明した全固体電池に関連する固体電解質の事業部部長も参加します。みなさまとのコミュニケーションの機会になればと思っていますので、ぜひこちらもご覧いただきたいと思います。
最後に
茂木:繰り返しになりますが、2050年のカーボンニュートラルに向けて、今は非常に大きな転換期です。我々もできることを一生懸命取り組み、チャレンジしていくことになります。ぜひ投資家のみなさまや株主のみなさまからもご支援いただければと考えています。
質疑応答:EVビジネスの現状と今後の見込みについて
坂本:「EV向けの対応の現状と今後の見込みについて知りたい」というご質問です。全固体電池も含めたEVビジネスに関するご質問だと思いますが、いかがでしょうか?
茂木:スライド20ページをご覧いただきながらご説明します。まず目下ではトヨタ自動車との協業を発表しています。スライドにも記載のとおり、2027年から2028年に全固体電池の実用化を進めていきたいと思っています。
その後、量産をしっかり進めていくことになります。現在は2つの実証プラントを稼働して取り組んでいますが、今後は大型のパイロット装置も建設する予定です。
我々は電解質のサプライヤーとして、まずはこの全固体電池を世の中に出していくことをトヨタ自動車としっかり取り組んでいきます。そして日本の技術を世界に示していきたいと考えています。
質疑応答:業績の上方修正の背景について
坂本:「今回の上方修正は円安の影響によるものという理解でよろしいのでしょうか? 他の要素があれば教えてください」というご質問です。
茂木:先ほどご説明したとおり、中期経営計画対比では順調に進捗しています。営業利益2,200億円という水準に上方修正したのは、ご指摘のとおり円安の影響もあります。また、当初の想定からすると資源価格が少し高い水準で推移している影響が大きいのも事実です。
したがって、燃料油セグメントや資源セグメントなどの収益改善、あるいは上方修正が業績に大きく寄与していることになります。しかし、その他の高機能材セグメントや基礎化学品セグメントなどでも上方修正を行っていますので、事業全体としては総じて順調に進捗していると考えています。
質疑応答:人財育成のKPIについて
坂本:「もし人財育成のKPIを設定しているのであれば、もう少し詳しくご説明いただきたいです」というご質問です。
御社は多岐にわたって人財育成をしていますが、時間も限られていますので、ここでは特徴やKPIなどの最終的なところをおうかがいできればと思います。どのようなパスを経て人財を育成しているのでしょうか?
茂木:中期経営計画の資料23ページをご覧いただきながらご説明します。こちらのスライドは昨年11月に公表した中期経営計画において、現状取り組みが進んでいる人財関係のKPIに関する部分です。
まず、我々が作成している「出光エンゲージメントインデックス」というものがあります。いわゆる従業員のエンゲージメント指数であり、会社に対するエンゲージメントの高さを表しているものです。
経年で全社的に調査を行っており、現状では67パーセントぐらいの水準です。これは世の中の平均と比較すると、決して低くない水準だと認識していますが、この水準を80パーセント以上まで引き上げていきたいと考えています。
また、端的にわかりやすいところでは、女性の採用比率や女性の役職者比率、男性育児休業取得率など、現状からジャンプアップして取り組んでいきたいことをKPIとして設定しています。男性の育児休業取得率については56パーセントと記載していますが、足元ではもう少し進んで、現状では80パーセントぐらいまで高まってきています。最終的には100パーセント水準を目指していきたいと考えています。
質疑応答:株主優待の内容について
坂本:「門司と東京の美術館は優待で入場無料にならないのですか?」というご質問です。地域が限られてしまう優待だと、すべての人がもらってうれしいかという問題もあると思いますが、そのあたりも含めて教えてください。
茂木:株主さまへの優待については、今年初めて制度として取り組みを始めています。我々としても、ぜひ株主のみなさまや投資家のみなさまからもご意見をいただきながら、順次内容を考えていきたいと思っています。
貴重なご意見をありがとうございます。しっかり検討していきたいと思います。
質疑応答:株式分割と抽選制優待制度について
坂本:せっかく株主優待のお話をいただきましたので、もう少し質問させてください。株式分割について、たくさんの投資家が投資しやすいように考えたとのことですが、このタイミングで実施する理由はどのようなものでしょうか?
また、抽選制優待制度について、おそらく最初は御社も手探りで取り組んでいると思います。「全員来てください」と言っても、キャパシティは手一杯というケースもありますが、そのあたりの考え方や、今後どのようにしていくべきと考えているか、可能な範囲で教えてください。
茂木:株式分割はスライドにも記載のとおり、来年1月から新NISA制度が開始となることがきっかけです。我々の取り組みをご理解いただき、幅広い世代の株主さまから広くご支援いただきたいと思っているため、そのような目的で投資単位を引き下げて、極力投資をしやすくしようと考えました。
併せて、株主優待なども新しくセットしています。先ほどいただいたように、みなさまからご意見をいただきながら、内容や規模感も順次拡充していきたいと考えています。
坂本:確かにNISAの枠が拡大されるとはいえ、やはり1単元で40万円では投資するか迷うこともあります。これが5分の1ぐらいになっていると、とりあえず投資しやすいということはありますので、確かにそのあたりは個人投資家は助かりますね。
質疑応答:M&Aの計画や近年の実績について
坂本:「M&Aの計画や近年の実績があれば教えてください」というご質問です。
茂木:現在取り組んでいる中期経営計画の中でも、新規事業と既存事業それぞれにおいてM&Aは進めていく考えです。投資の計画金額の中にも含まれています。
具体的な金額は明示していませんが、特に今後の成長が見込まれる事業でM&Aを検討していきたいと思っています。詳細について今はお伝えできないのですが、領域としては例えば電化や電動化、バイオライフ、ICTなどでM&Aを検討しています。成長事業を中心に、引き続き検討を深めていきたいと思っています。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
質問:石油以外の資源、天然ガスの開発や、発電事業への投資は計画していますか?
回答:2023年度から2025年度の中期経営計画の投資計画では、資源セグメントに関して大きな戦略投資は見込んでいません。石油・ガス開発事業は、既存のノルウェーの石油開発事業、ベトナムのガス開発事業を維持していく方針です。
石炭事業については、売却および終掘により、従前の3鉱山から1鉱山へ規模を縮小、残るボカブライ鉱山に経営資源を集中しています。
また、発電事業に関しては、主に海外における太陽光発電所の開発投資を予定しています。
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