海運各社、カーボンニュートラルに向けた取組みを加速

2023年9月17日 08:10

印刷

日本郵船がノルウェーのクヌッツェン・グループと設立した合弁会社で運行を目指す液化CO2輸送船のイメージ。(画像: 日本郵船の発表資料より)

日本郵船がノルウェーのクヌッツェン・グループと設立した合弁会社で運行を目指す液化CO2輸送船のイメージ。(画像: 日本郵船の発表資料より)[写真拡大]

 海運業トップ3社が、カーボンニュートラルに向けた動きを加速している。国土交通省によると、海運業における世界のCO2排出量は、2018 年時点で約9.2億トンと、世界全体の排出量の約2.5%を占める。鉄鋼や化学等の他業種に比べると少ないが、脱炭素は海運各社にとって生き残りの戦略の1つとなっている。

【こちらも】日本郵船は船舶間のアンモニア燃料供給設備を日本で初めて開発、毒性の高いアンモニアでも安全に船舶に供給

 国内業界トップである日本郵船は、液化CO2の輸送・貯留を行う新会社をノルウェーの企業と設立。海運業のメタン排出削減を目指す環境イニシアティブ「Methane Abatement in Maritime Innovation Initiative」(MAMII)に、主要パートナーとして参画することも発表した。

 また業界2位の商船三井は、オーストラリアの企業と液化CO2大量輸送技術の開発に関する契約の締結。水素とバイオディーゼルを燃料としたハイブリッド旅客船も来春投入する。

 こうしたカーボンニュートラルに関する取組みの加速の背景には、2008年のリーマンショック以降の不景気による海運不況がある。海運各社は大きな事業構造の転換が必要であった。

 一時的に新型コロナウイルスの感染拡大に伴う巣ごもり需要の拡大から、日用品を輸送するコンテナ船の需要が高まり特需のような収益拡大が実現したが、新型コロナの落ち着きに伴い今後もそのような好調が続くとは限らない。コンテナ船はもともと輸送単価が低い事業ということもあり、業績の維持は難しい可能性が高い。

 そのような状況下で、海運トップは新たなビジネス機会の獲得を図っており、その1つの方向性が脱炭素、カーボンニュートラルとなっている。この動きは業界全体に広まっていくだろう。

 また水素やアンモニアは、他業種でもカーボンニュートラルに向けて非常に重要な資源である。その輸送を担う海運業の果たす役割は大きい。この先、カーボンニュートラルに向けた動きは全世界、全業種で進むことが見込まれるため、海運業も遅れることなく取組みが進むことが期待できる動きである。(記事:Paji・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事