果たして日本で「世界初、2nmの半導体量産成功」の声を聞く日が来るか? (2)

2023年7月8日 17:38

印刷

北海道千歳市に建設する工場のイメージ(画像: ラピダス発表資料より、作図協力:鹿島建設)

北海道千歳市に建設する工場のイメージ(画像: ラピダス発表資料より、作図協力:鹿島建設)[写真拡大]

 新会社として発足早々のラピダスが、一気に2nm半導体の量産を目指す点に、違和感を抱く向きは多いだろう。既に3nm半導体の量産化を実現しているTSMCやサムスン電子に、今まで積み重ねて来た膨大な研究や経験の蓄積もなく、新興企業が追いつけるのかというのは尤もな疑問だ。

【前回は】果たして日本で「世界初、2nmの半導体量産成功」の声を聞く日が来るか? (1)

 ポイントは3nmまでの半導体量産技術の延長線上に、2nm半導体量産技術がないということだ。TSMCや韓国のサムスン電子との間に、2nm半導体の製造技術を開発する上での明確なハンディが存在していない以上、同じスタートラインに立っているという解釈だ。

 そして研究レベルではあっても、IBMがたどり着いた2nmのプロトタイプがあって、 IBMの知見も活用できることは大いなる強みだろう。

 政府もラピダスを後押しするかのように、半導体を戦略物資として囲い込むための供給網の強化を進めている。政府系ファンドとして知られる産業革新投資機構(JIC)は、半導体の重要素材が世界シェアの約3割を押さえるJSRを、約1兆円で買収する。

 半導体の回路形成に欠かせないフォトレジストの世界シェアはトップのJSRが28%で、東京応化工業、信越化学工業と富士フィルムの合計で44%になるから、日本企業4社の世界シェア合計は72%になる。このシェアをなんとしても維持しようとする意思が伝わってくるような話だ。

 ラピダスへ総額3300億円の支援を行うことと、JSRを1兆円で買収することには、主体はそれぞれ違うにしても背後に経済産業省の存在が見える。「半導体の覇権を握る」ことが、国家プロジェクトへ格上げされたということだ。

 なにしろ世界で名高いアップルやクアルコム、AMDなどはいずれも自前の製造設備を持たない「ファブレス」企業なのだ。アメリカには、図面は書くけど自分で製造することは出来ない頭でっかちの企業が多い。

 ロシアによるウクライナ侵攻で明確になった半導体の重要性への認識と、台湾へ触手を伸ばす中国の動きが浮き彫りにしたTSMCに依存する地政学的なリスクを考えて、アメリカには半導体製造能力を世界に分散したいという明確な意思がある。

 半導体製造装置や半導体関連のトップメーカーが多く裾野も広い日本が、その役割を演じるのは自然なことだ。

 焦点は、ラピダスの思惑通りに2nmの半導体量産体制が構築できるかどうかにかかっている。

 5日、台湾のファウンドリー大手の力晶積成電子製造(PSMC)が、SBIホールディングスと協力して、28nmの半導体製造工場を日本国内に設置すると発表した。現在、PSMCが主力としているのは40nmで、今後早期に28nmの量産技術を開発する計画だ。

 5日に富士通とパナソニックホールディングス、日本政策投資銀行が保有株全てを売却すると伝えられた半導体設計のソシオネクストは、6日にストップ安まで売り込まれ5000円安の1万6950円で取引が終了した。180日間のロックアップ(一定期間の売却禁止)期間終了を待っての、予定通りの売却計画だった。

 国内市況のマイナス材料とならないように海外で売却すると伝えられたことが、深読みの連鎖へと繋がってパニック売りを呼び込んでしまったようだ。関係者の苦衷は想像を絶するが、半導体関連の情報が錯綜すること自体が注目の所以だろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事