ECB、大幅利上げの影響は!?

2022年9月9日 16:12

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●ECBが0.75%利上げ

 欧州中央銀行(ECB)は8日の理事会で、0.75%利上げすることを決定した。7月にも11年ぶりの0.5%の大幅利上げをしていたが、今回はそれを上回る過去最大の利上げとなった。

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 米国は大幅な利上げを続けており、FRB(米国連邦準備理事会)のパウエル議長はジャクソンホールの講演で、株価や景気を犠牲にしてでもインフレ対策を断行するという強い言葉を発している。

 ECBも遅れを取るわけにはいかず、大幅利上げをせざるを得ない。

 欧州も物価高、エネルギー問題が深刻で、ユーロドルもパリティ割れが常態化している。

●終わりの見えないエネルギー問題

 欧州のエネルギー問題は、ロシアから欧州向けのガス供給パイプライン「ノルドストリーム」のガス供給が、大きく影響する。

 7月には保守点検として、10日間ガス供給が停止された。そして8月31日から再びガス供給が停止され、再開のめどはたっていない。

 欧州各国はエネルギー政策を見直さざるを得ない。2022年末までに原発ゼロを目指していたドイツであったが、先送りし、2023年4月まで再稼働を容認せざるを得なくなった。

 さらにドイツではライン川の水位低下により、石炭の輸送が困難になり、火力発電にも影響が出ている。

●大幅利上げの効果は?

 イタリアでは政治への先行き不安から国債価格が下落するなど、欧州経済も先行き不透明である。

 ECBのラガルド総裁は、今後の利上げの予定を聞かれ、2回以上で5回以下だろうと回答している。

 米国同様に景気や株価を押し下げてでも、インフレ抑制に対峙するという姿勢を評価する声もあるが、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー問題には金融政策の限界を指摘する声もある。

 元々、マイナス金利だった欧州では、他国から後れを取っている感は否めない。だが急速な利上げには、政府債務の返済に影響が出るなど、副作用もある。

 かと言って、他国が利上げする中放置すればユーロ安が進み、輸入に影響が出てさらにインフレが進みかねない。ECBとしては、FRB以上に難しい舵取りが迫られる。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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