関連記事
国有不動産初の証券化で登壇したレーサムの、好調な収益の中身
レーサム(東証スタンダード)。機関投資家や個人投資家向けに、収益不動産の販売を中心に展開している。いかに2021年3月期が新型コロナウイルス禍で収益低迷を余儀なくされたとはいえ、前3月期の「112.3%増収、591.3%営業増益、898.7%最終増益、33円増配37円配」には驚かされた。そして今期も、「17.0%の増収(800億円)、10.0%の営業増益(125億円)、13.1%の最終増益(75億円)、5円増配42円配」と好調な上積み計画。
【こちらも】コロナ下でも伸びたとされる、ペット市場の現実
私が最初にレーサムに関心を抱いたのは、創業者:田中剛氏により2001年に僅か9年で当時のジャスダック市場にスピード上場した時。さもありなん、と捉えた。田中氏は昨年終盤に健康上の理由で会長職及び取締役を辞したが、実は2000年9月の段階で、本邦初の出来事で主役を務めた折りに強く惹かれるものを感じていた。「証券化」を条件にした、国有不動産の初の入札が行われた。落札したのがレーサム。具体的にはマンションなど建物付きの不動産8件を落札し、証券化したのだった。
急激な回復を示した前期決算の内容を整理しておく。
【資産価値創造事業】: 自らが取得しオーナーとなり、用途変更・大規模改修・新たなテナント誘致等を行う。価値を向上させて投資家に売却する。20億円以上の大型物件として「銀座の大型商業ビル」「白金長者丸レジデンス」「Medock総合健診クリニックビル」など首都圏の案件、加えて「京都三条の複合ビル」など地方案件など29物件を売却した。また注力している100億円規模の案件を数千万円単位から小口化投資案件の寄与もあり133.4%の増収(618億9300万円)、310.9%の営業増益(129億5500万円)となった。
【資産価値向上事業】: 投資家に対し売却した物件の、賃貸管理・建物管理業務。10.8%の増収(49億6400万円)、6.9%の営業増益(11億400万円)。
【未来価値創造事業】: コミュニティホステルや、高齢化社会に必須の高度専門医療の支援事業(前記のMedock総合健診クリニックが該当。複数の事業会社との連携が始まっている)。27%の増収(15億4400万円)。ただ新たな宿泊施設(江田島荘:昨年7月に広島県江田島市に開業の温泉宿泊施設)立ち上げの初期投資負担で20億5900万円の営業損失。
こう見てくると、資産価値創造事業が主軸であることは収益数字に明らか。と同時に発信している「不動産投資の小口化商品:1~2億円規模」の展開が今後を占うカギとなろう。レーサムでも「富裕層との信頼関係の深耕。国内法人、機関投資家、海外投資とのパイプを更に太く。新商品の提供も積極的に」と、課題を正確に捉え先々を見据えている。
時価水準1000円出入り水準もさることながら、予想税引き後配当利回り3.4%水準には魅力を覚える。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
スポンサードリンク