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相場展望12月30日 変異種「オミクロン型」を軽視してはいけない 日本株、いったんは売りが賢明か?
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)12/27、NYダウ+351ドル高、36,392ドル(日経新聞より抜粋)
・消費の底堅さを示す指標を受けて、米経済への楽観が強まり、エヌビディアやAMDなど半導体などハイテク株が買われたのも相場を押し上げた。
・多くの機関投資家が運用指標とするSP500は、4日続伸し連日で過去最高更新。
・新型コロナ新変異種「オミクロン」の感染拡大で年末商戦が伸び悩むとの見方があったなかで、消費の強さを確認でき、投資家心理が上向いた。
・ホームセンターのホームデポ、小売のウォルマートが高い。空運・娯楽は下落。
【前回は】相場展望12月27日 米株、サンタ・ラリーが旺盛も、リスクも念頭に 日本株、年末の「掉尾の一振り」は期待できず?
2)12/28、NYダウ+95ドル高、36,398ドル(日経新聞より抜粋)
・新型コロナ感染拡大しても無症状の場合は隔離期間を従来の10⇒5日短縮発表を受け、米経済への悪影響は限られるとの見方から景気敏感株を中心に買われた。11/8に付けた過去最高値(36,432ドル)を上回る場面があった。
・一方、ハイテク株には利益確定売りが出て、相場の上値を抑えた。
・経済活動正常化の恩恵を受ける、映画・娯楽・航空機・小売が高い。
3)12/29、NYダウ+90ドル高、36,488ドル(日経新聞)
・NYダウは11/8以来、1カ月ぶりに過去最高値を更新した。
・新型コロナの感染拡大による米景気への悪影響は限られるとの見方から、消費関連株などへの買いが続いた。
・変異型「オミクロン型」の感染拡大しているが、一方、重症化リスクは低いとの認識が広がり、株式市場では「米経済成長に大きく影響するものではなく、パンデミック(世界的流行)の終息を速める」との声もあった。
・スポーツ用品のナイキ、ホームデポなど消費関連が高く、ボーイングは下げた。
●2.変異種「オミクロン型」の軽視はいけない、経済に株価に重要な影響与えるリスクに注視
1)新型コロナ変異種「オミクロン型」は、南アフリカや英国の状況をみると、重症化や死亡者数がそれほど増加していない。そのため、オミクロン型に対して毒性が弱いと安心感を醸成している風潮がある。また、新規ワクチンや治療薬の開発で、メディアを通じて「恐怖心が和らぎ」、『楽観論』さえ漂っている報道も目に付く。その受け止め方は、間違っているのではないか?
2)新型コロナは、アルファ型⇒デルタ型⇒今回のオミクロン型へと変異しているが、その時々によって毒性を変えながら、新規感染者数を急増させていることに、注目したい。新変種「オミクロン型」はこれまでの変異株と比べると、『感染力が4~5倍強い』といわれている。オミクロン型の流行は、フランスで1日当たりの新規感染者数が12万人を超え、米国でも爆発的に感染者数が急増し、過去最多となった。
3)新規感染者数の増加は、(1)移動制限や、(2)工場の操業停止(3)物流の停滞等を招き、(4)物価高というインフレまで引き起こす要因の1つになっている。
4)確かに、重症者や死亡者数の低下、加えてワクチンや治療薬の開発で、楽観視できる。だが、感染者数が急増することによる(1)人的被害の増大と(2)経済正常化への阻害拡大 という局面からみると、むしろ『悪化増大と長期化』の影響に目を向ける必要があると思われる。
5)2022年も新型コロナ変異型が姿を変えながら、世界に経済に猛威をふるうという前提に立つべきだと思われる。慣れからくる現状の楽観的過ぎる風潮を危惧している。よって、リスク資産である株式相場も身構えて対処することが賢明ではないだろうか。株式市場はNYダウ、SP500などが史上最高値を更新している。市場参加者が強気になっているこの場面は、いったんは、利益確定売りで資金化するという選択肢もあるのではないか。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)12/27、上海総合▲2安、3,615(亜州リサーチより抜粋)
・前週末のNY市場がクリスマス休場のため、手掛かり材料難で方向感を欠く展開。
・中国・国家統計局発表の、一定規模を超える工業企業の11月の利益総額が前年同月比+9.0%増、増加率が前月の+24.6%から大幅に減速したことも重荷になった。
・コロナ感染拡大に歯止めがかからず、状況好転は1月中旬以降との予測がある。
・業種別では、酒造の下げが目立ち、医療設備・家具・紡織機械が物色された。
2)12/28、上海総合+14高、3,630(亜州リサーチより抜粋)
・中国人民銀行(中央銀行)が資金1,900億元を市場に供給したのを好感した。
・中国では新型コロナ感染拡大に歯止めがかからず、経済活動の縮小を警戒した売りが散見された。
・業種別では、ITハイテク関連の上げが目立ち、発電・エネルギーが売られた。
3)12/29、上海総合▲33安、3,597(亜州リサーチより抜粋)
・新規材料が乏しいなか、中国景気の鈍化懸念が改めて意識された。
・今月に入りシンクタンクやアナリストから、中国経済成長の下方修正が相次いだ。
・12/31公表の12月中国製造業PMIが、11月比でやや減速すると予測されている。
・新型コロナ新規感染者数の高止まりもマイナス。
・行動抑制の強化により、経済活動が縮小すると懸念された。
・業種別では、消費関連・ハイテク関連の下げが目立ち、空運・海運は高い。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)12/27、日経平均▲106円安、28,676円(日経新聞より抜粋
・世界や日本での新型コロナ変異種「オミクロン型」の感染拡大への警戒から積極的な買いが手控えられた。
・もっとも、クリスマスや年末で休みの機関投資家が多く、売り急ぐ動きは限られ東証1部の売買代金は4日連続で2兆円を下回った。
・年末とあって、個人投資家による節税目的の損失確定の売りも意識された。
・ソフトバンクG、ファストリの下げが目立ち、東エレクやアドテストが上げた。
2)12/28、日経平均+392円高、29,069円(日経新聞より抜粋)
・前日の米株式市場が上昇した流れを受け、東京市場でも幅広く買いが入った。
・米半導体株指数(SOX)が高値を付けたのを追い風に、値嵩株の東エレクなど半導体関連が買われた。
・円相場が114円台後半まで円安が進み輸出関連株が、11月鉱工業生産指数が前月比+7.2%上昇したことで自動車関連が、買いを誘った。
・東エレク、ソフトバンクG、オリンパスが上昇し、JT、郵船、任天堂が下げた。
3)12/29、日経平均▲162円安、28,906円(日経新聞より抜粋)
・今日は12月末の配当落ち分で▲37円程度、日経平均を下押しした。
・前日の米国株式市場でハイテク下落の流れから、値嵩の半導体関連株が売られた。
・新型コロナ変異型「オミクロン型」の国内市中感染が相次ぎ判明している。市場では「欧米の株式市場で再び警戒感が強まって相場が急落しかねないとの懸念もあり、持ち高調整の売りが出た」との指摘があった。
・レノバは▲35.5%安、ファストリ、東エレクが売られ、Jフロント、空運が上昇。
●2.日本株は、テクニカル指標で「難しい局面」を示唆
1)騰落レシオ(6日ベース)は12/29、151.6と高値圏に推移した。
2)ストキャスティクスも12/29、FASTで81.84、SLOWが78.13と高い位置に入った。
3)いったんは、売りシグナル。年越えもあり、経験則でも年始からの低調局面入りが多いため、資金化も選択肢。
●3.経済産業省が12/28発表の、11月鉱工業生産は前月比+7.2%上昇(時事通信)
1)上昇は2カ月連続、生産の基調判断は「持ち直しの動きがみられる」とした。
●4.厚労省12/28発表、11月失業率0.1%悪化の2.8%、求人倍率1.15倍で横這い(読売新聞)
●5.企業動向
1)イオン キャンドゥのTOBが友好的に成立、株式保有51%に(共同通信)
2)川崎重工 ロボット関連売上を2030年にも4,000億円を目指す(フィスコ)
●6.企業業績
1)HIS 2021年10月期決算の最終利益▲500億円赤字(前期▲250)(読売新聞)
コロナ禍前比べ海外旅行▲96.3%減、国内旅行▲15.6%減、100店舗閉鎖
2)三陽商会 2021年3~11月の最終損益は▲10億円の赤字(SEVENTIE TWO)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・4595 ミズホメディー 業績絶好調。
・4188 三菱ケミカル 業績好調。
・4502 武田薬品 業績好調。
読者の皆様、良い年を!
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