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日本の街並みにも中大規模木造建築 日本古来の木造建築技術で普及目指す
アキュラホームが2024年の完成を目指す、純木造の新社屋内観イメージ。日本古来の継手仕口や組子格子耐力壁などの木材建築技術を結集し、木造中規模建築の普及を目指す。[写真拡大]
10月31日から、約2年ぶりとなる国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)がイギリスのグラスゴーで開催される。新型コロナの禍中であっても、気候変動問題は世界が一丸となって取り組まねばならない喫緊の課題だ。我が国も、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言しており、今年4月には2030年度における温室効果ガスを2013年度に比べて46%削減、9月に総理官邸で開催された第47回地球温暖化対策推進本部では、さらに50パーセントの高みを目標に掲げるなど、積極的に取り組む姿勢を見せている。
その甲斐もあってか、株式会社電通<4324>のサステナビリティ推進オフィスおよび電通Team SDGsが今年9月に全国10~70代の男女1400人を対象に実施した「第3回 カーボンニュートラルに関する生活者調査」の結果でも、「カーボンニュートラル」の認知率が約45%と徐々に増加傾向を見せている。また、「カーボンニュートラル」に向けた取り組みが必要と考える生活者の割合も約8割を占めていることも分かった。しかし、具体的にどう取り組めばいいのかと問われると、なかなか答えにくいのが現状ではないだろうか。
そんな中、カーボンニュートラルの実現に向けて、自社の事業の特性を最大限に活かしつつ、具体的なアクションを起こす民間企業も現れている。木造注文住宅メーカーの株式会社アキュラホームだ。
アキュラホームといえば、高性能な省エネ木造住宅や太陽光発電を普及価格帯で提供し、住宅業界の中でも環境貢献に積極的な住宅メーカーだ。近年では住宅事業だけでなく、間伐材をカンナ削りの技術を応用して加工した「木のストロー」が地球環境大賞農林水産大臣賞を受賞し、G20大阪サミットでも採用されるなど、SDGsやESG経営を推進する企業としても注目されている。
そんな同社が10月21日、埼玉県さいたま市に建設予定の新社屋ビル建築構想を発表した。敷地内に建設予定の約1815坪の8階建てビル一棟と、約453坪の2階建て2棟、計3棟のすべてを鉄骨ではなく「純木造」で建造するという。
高度成長期以前は神社仏閣をはじめ、公民館や学校の校舎など、中大規模建築も木造がほとんどだった。ところが、今では大きな建物は鉄骨造や鉄筋コンクリート造のものがほとんどだ。一方、北欧やアメリカなどでは今、環境への配慮から木造中大規模のビル建築が加速している。
カンナ社長の愛称でも知られるアキュラホームの宮沢俊哉社長は、日本で木造の中大規模建築が普及しない点について、現在のやり方では鉄骨造に比べて2倍以上の建築コストがかかってしまい、普及価格帯で提供できないことが一番の問題であると指摘した。実際、都市部では木造ビルなどの建築計画が相次いで発表されてはいるが、補助金等の公的支援がないとなかなか進まない状況だ。
宮沢社長はこの課題に対し、地域工務店が培ってきた「施工力」、世界最高レベルともいわれる日本の「プレカット加工技術」、木造軸組みの「普及材・流通材」、世界最高峰の「耐震構造計算技術」、これらを上手く活用することで、木造でも低コストで中規模建築を実現することが可能だとし、それを示すためにも自社社屋を「プロトタイプ」として建築することで、日本でも環境への負担が少ない中大規模木造建築の普及につなげていきたいと意気込む。また、そこで開発した技術やノウハウなどもオープンにすることで、地域ビルダーにも活躍の場を提供し、建築業界全体の活性化に貢献していく考えを述べた。
施工にあたっては、建築家の野沢正光氏をはじめ、東京大学木質材料研究室の稲山正弘教授、建築家の原田真宏氏、原田麻魚氏ら、カンナ社長の熱い理想に賛同する4人のスペシャリストが参画。 高価な金具に頼らず、日本古来の継手仕口などの木組みの接合技法や、水平加力実験で壁倍率20倍(最大耐力超26トン超)を実証した「組子格子耐力壁」など、日本の木材加工技術の粋を集め、木の構造部を露わにしたデザインなど木造らしいイメージを重視しつつ、木造では施工の難易度が高いといわれる耐震耐火などの課題にも取り組む。新社屋は2024年の完成を予定しており、これは通常見込まれるよりも非常に短い工期ではあるが、宮沢社長曰く、これも工期を短くすることでコストダウンにつなげるための挑戦だという。また、同社では鉄骨コンクリート造に比べてCO2を50%削減するのを目標にしており、これが成功すれば、日本のカーボンニュートラルも大きく前進させることになるだろう。
まだまだ木造ならではの多くの課題が残るものの、だからこそ、それらを克服すれば、日本のみならず、世界中からも注目されるプロトタイプ建築になることは間違いない。日本が誇る木造建築技術の凄さと美しさ、無限の可能性を広く世に知らしめてほしいものだ。(編集担当:藤原伊織)
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