物価高に備えよ! 円安・原油高に翻弄される次期政権と、ほくそ笑む黒田日銀総裁 前編

2021年10月13日 15:57

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 円安が止まらない。10月12日のニューヨーク時間では、コロナ禍直前の最高値1ドル112円20銭を超え、1ドル113円70銭に到達した。ちょうど1カ月前の直近最安値が109円程度であったことを考えると、実に1カ月で5円程度の円安となっている。ここ数年の緩慢な為替変動からすると、スピードが早く、ボラティリティも高い。

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 2011年3月、東日本大震災に見舞われた日本は、パニック中を海外投資家に狙われて1ドル77円を割るほど円高となっていた。当時はデフレ真っ只中であったが、アベノミクス前の民主党政権においてさらに円高は進み、最終的には1ドル75円半ばまで下落している。

 その後、アベノミクスの第1の矢であった日銀主導の大規模金融緩和が功を奏し、2015年6月には1ドル約126円にまで急上昇した。1ドルあたり50円ほどの円安となったことで、国内の輸出企業は成長し、海外からのインバウント需要を後押ししたことは確かだ。

 しかし、1年後の2016年には1ドル100円を割るところまで下落、そこから現在までは、「有事の円」といわれるような円高需要も見られず、特にここ半年においては、1ドル約107円から112円の間を上下するような、幅の狭いレンジ内での値動きが続いていた。

 そんなボラティリティの少ない値動きに異変が生じたのが、先月中旬頃からの円安の動きというわけだ。もちろん、日本において追加の金融緩和などが成されない限り、円が自発的に円安に向かう理由はない。つまり、強いドル高の影響を受けて、円安になっているだけである。そして、そのドル高を誘発しているのが、アメリカのFRB(アメリカの中央銀行としての組織)によるテーパリング(金融緩和の縮小)議論の加速だ。

 リーマンショックやコロナ禍など、大きなショックに見舞われた際に、FRBを始めとする各国の中央銀行は大規模な金融緩和を行ってきた。金融緩和の主たる政策が利下げであるが、その目的は資金の流動性の確保だ。利下げをすれば金利が下がるため、資金を借りやすくなる上、預貯金の意味が薄れる。結果として、資金の流動性が保たれる。国主導の現金給付も流動性担保が目的だ。

 経済にとっての資金(通貨)は、人間にとっての血液に等しい。つまり、機能不全に陥らないよう、大きなショックに対しては資金の流動性を高めるのは当然のことではあるが、過剰に輸血をすれば(資金をバラ撒けば)、その副作用も大きく、将来の経済の成長を阻害する要因にもなる。

 現在の日本の状況を見てもらえばわかる通り、アベノミクス以降の大規模金融緩和が長期間に渡った結果、もはや輸血が当たり前になってしまっているような状態だ。結果として、実体経済と株価は乖離し、いざテーパリングへ舵を切ろうとも、日銀は舵を切るタイミングを無くしている。

 テーパリングのショックを受けきれる程度の体力が無ければ、経済はそのショックに耐えきれず、株価も大暴落となるだろう。任期満了が近い日銀の黒田総裁は、頭を抱えていたに違いない。(続く)(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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