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相場展望7月26日 米国株は好決算発表で株価上昇も、懸念も膨らむ 日本株も週明けは大幅な戻り高を予想
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)7/22、NYダウ+25ドル高、34,823ドル(日経新聞より抜粋)
・週間の新規失業保険申請件数が市場予想以上に増加して悪化したため、前日まで上昇が目立っていた、景気敏感株を中心に利益確定売りが出た。
・一方、主力ハイテク株は業績期待で買いが入り相場を支えた。
・新規失業保険申請件数の増加により、「雇用回復の道のりが直線的にならないことを示した」と受け止められた。
・ただ、米債券市場で長期金利は1.28%前後と前日終値1.29%近辺で落ち着いており、景気への悲観論が高まったわけではない。
【前回は】相場展望7月22日 米株急落は、「デルタ株」急拡大で景気悪化恐れ 急騰は、好業績発表で、景気堅調との見方に転換
2)7/23、NYダウ+238ドル高、35,061ドル(日経新聞)
・NYダウは、4日連続高と過去最高値を更新した。ナスダック総合、SP500ともに過去最高値を更新した。
・経済活動の再開を追い風に、市場予想を上回る好決算が相次ぎ、投資家のリスク選好姿勢が強まり、相場を押し上げた。
・市場では「米主要企業の決算が想定以上に強く、新型コロナウイルスの感染再拡大で、冷え込んでいた投資家心理が大きく持ち直した」との指摘があった。VIX(恐怖)指数の低下に見られるように、投資家心理が改善している。
●2.米株式は好決算が相次ぎ史上最高値更新だが、懸念材料が膨らんでいるのに注目
1)懸念材料
(1)米大規模インフラ投資計画の上院議決が難航。
・夏季休暇前の7/30までに議決できなければ、インフラ投資に暗雲の可能性。
・市場は議会可決を前提に高値更新となっているだけに、経済鈍化懸念が浮上した場合には市場への影響が心配。
(2)米政府の債務上限枠に接近し、債務枠拡大できなければ投資・歳出に制限を予想。
(3)米FRBの金融政策決定会合FOMCでの資産購入ペース減額決定の可能性。
・昨年6月開始の月額1,200億ドル購入のうち、MBS(住宅ローン抵当証券)削減が俎上に乗ってくると予想。
・FRBの月額購入額の減少に過ぎないが、テーパリング(段階的緩和縮小)の第一歩であるだけに、市場がネガティブな受け止めをするかに注目。
・注目日程:
FOMC開催 7/27~28、9/21~22
ジャクソンホール講演 8/26~28
なかでも、ジャクソンホールでのパウエルFRB議長が講演で言及すると予想。
・特に、パウエルFRB議長は7月議会証言で議員から厳しい追及を受け、物価高とMBS証券購入の問題を認めただけに、金融政策転換に関わる発言に注目が集まる。
・ただし、金利引上げ問題は先送りをすると思われる。
●3.米株式ファンドから7/15~21の1週間で104億ドル資金流出、変異株懸念で(ロイター)
●4.米連邦債務が上限に近づき、米債務不履行への不安 (フィスコ)
1)米財務省のイエレン長官は、連邦債務残高が8/1に上限に達すると警告した。不履行を回避するために特別策を講じるとし、議会に早急な対応を要請した。
●5.米7月購買担当者景気指数(PMI)59.7と、6月63.7から低下 (ロイターより抜粋)
1)4~6月期は経済が力強く伸びたが、その後は供給網が混乱する中で経済活動が鈍化していることを示唆したと思われる。
2)米経済が新型コロナのパンデミック(世界的大流行)によって大打撃を受けた後、経済活動が再開し、企業は原材料と労働力の不足に直面している。これが物価上昇圧力を押し上げている。
3)今月のPMIは、経済成長が4~6月期に大規模な景気刺激策を背景に加速したが、今後減速するとのエコノミストとの見方と一致する。
4)米経済の3分の2超を占めるサービス業のPMIは59.1と、6月64.6から低下。予想値は64.8だった。5月に付けた過去最高値から一段と遠ざかった。
5)米経済の11.9%を占める製造業の7月PMIは63.1と、過去最高値を付けた。月は62.1で、7月予想は62.0としていた。製造業の新規受注指数は上昇し、期日通りに納品することに苦戦している。
6)事業活動の鈍化を報告した調査先の企業は、労働力不足と在庫確保が困難だと指摘。一部企業は、販売価格を大幅に上げたことで、顧客が購入を躊躇していると報告した。原材料と労働力の不足から生産コストが上がる中、企業は値上げして買い手に転嫁している。
●6.米新規失業保険申請件数41.9万件と、予想35.0万件から予想外に悪化した(フィスコ)
1)5月上旬以来の約2カ月ぶりの高水準となった。(日経新聞)
●7.米6月景気先行指数は前月比+0.7%と、予想+0.8%を下回った(フィスコ)
1)5月は+1.3%だった。
●8.米6月中古住宅販売件数は586万戸と、予想590万戸を下回った(フィスコ)
●9.バイオジェン、アルツハイマー新薬の導入が「予想を下回る」(ロイターより抜粋)
1)エーザイと共同開発の新治療薬は、医療機関での使用や保険適用が想定したほど進んでいない、と述べた。
2)米食品医薬品局(FDA)に6月承認されたが、承認手続きを巡り疑義が唱えられ、米国内で医療機関が使用を控えたり、保険会社が保険適用を保留する動きが出ている。
●10.企業業績
1)アメックス 4~6月期純利益22.8億ドル、前年同期比8.8倍と大幅増(ロイター)
●11.欧州
1)メルセデス 2030年までに5.2兆円投資し、全社EV(電気自動車)(共同通信)
1回の充電で1,000キロ以上走る新型車を開発中。
車載電池工場も今後、8カ所に設置する計画。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)7/22、上海総合+12高、3,333(亜州リサーチ)
・保険会社の運用規制緩和や、証券市場の改革方針もあり、市場への資金流入は一段と加速すると見られる。
・直近の株価上昇による売り圧力があったが、下値は堅かった。
・業種別では、石油関連が高く、銀行・保険は冴えなかった。
2)7/23、上海総合▲24安、3,550
・前日まで4日連続で買い越していた海外勢は売り越しに転じた。
・不動産開発会社は、厳しい規制に対する懸念に押されて下落した。国営テレビは7/22、韓正副首相が「地方政府は不動産開発会社の資金調達について銀行融資を含め厳しく管理し、土地の価格設定メカニズムを改善すべき」と伝えた。
・反面、生活必需品株やヘルスケア株が上昇した。
●2.中国人民銀行(中央銀行)は7/23、ノンバンク決済企業に対し、国内外での株式公開(IPO)に関する報告を義務付けると発表した(ロイター)
1)純資産総額の5%以上の投資や、データの漏洩(顧客で500社以上、顧客データ5,000件以上)の報告も義務付けた。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)7/22~23は東京五輪の祝日のため休場
●2.日本株、週明けは大幅上昇が見込めるも、外資系短期筋の動向に注目
1)日経平均は、上値・下値ともに切下げているが、7/26の週は米国株高を受け大幅な戻り高を予想する。
2)ただ、TOPIXはチャート的に長期上昇支持線を割り込んでいるため、今週の戻りは上値に限界があると思われる。戻り高値は28,500円±300円と見る。
3)外資系先物買残高は、7/21に+125,362枚と、昨年4/21の+127,094枚をさらに割り込んだだけに、強い買戻し局面が想定でき、日経平均上昇の牽引役になる可能性がある。大幅売り越したCスイスと野村の買戻しを予想するものの、みずほの売り戻しとの攻防に注目したい。
4)直近の日経平均下落時に買い支えたのは、みずほと個人投資家(現金)の買いである。
5)日経平均が水準を超えて上昇するには、みずほと個人の売りを吸収する必要があるが、
(1)日銀のETF買いの再参入
(2)GPIFなど年金資金の買い
(3)外資系の日本株買戻し
が必要である。
6)もちろん、
(1)政治リスクの改善
(2)ワクチン接種の急速拡大
(3)インド株変異種(デルタ型)拡大の抑制
も必須である。
●3.企業動向
1)ソフトバンクG 韓国宿泊予約サイト「ヤノルジャ」に17億ドルを出資(ロイター)
2)ニッパツ EVモーターコアの増産で200億円投資 (日刊工業新聞)
同事業の売上高を現状数十億円⇒2025年300~400億円に
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・3776 ブロードバンドタワー 赤字転落で大きく売られたが、買い転換の可能性。
・7222 日産車体 業績回復。
・7244 市光工業 業績回復。
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