経産省が「攻めのIT経営銘柄(DX銘柄)」を選定する目的と投資価値 前編

2021年4月20日 07:30

小

中

大

印刷

 経済産業省と東京証券取引所は、2015年より共同で「攻めのIT経営銘柄」を選定しているが、2020年より名称が「DX銘柄」に変更されたものの、その取り組みは今もなお継続している。7回目を迎える2021年の銘柄については現在選定中であるが、そもそも選定の狙いは何であろうか?また、投資先としての価値はあるのだろうか?

【こちらも】政府が推薦する銘柄!? 「攻めのIT経営銘柄」が「DX銘柄」に変わったワケ 前編

 取り組みの要旨が記載されているのは、経済産業省から2015年5月に公開された「攻めのIT経営銘柄」レポートだ。そこには「中長期的な視点から企業価値の向上を重視する投資家にとって魅力ある企業を紹介する」という目的が明記されているが、一般的に投資家にとって関心が高いのは財務諸表や財務指標であり、IT戦略への注目度は低かったといえよう。

 しかしながら、1990年代から急速に進んだIT化(情報革命)と共に、アメリカではGoogle(現アルファベット)、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftのいわゆる「GAFAM(ガーファム)」が「攻め」のIT活用によって、急成長を遂げてきたという現実がある。

 もちろん、日本でもIT活用が促進されてきたことには間違いないが、そのほとんどが従来業務の利便性向上や業務効率化など、コストカットを目的とした「守り」のIT活用でしかなかった。「攻め」のIT活用とは、最新のIT技術を取り入れることで、製品やサービスの開発強化や、ビジネスモデルの変革などが目的である。

 つまり、IT活用がコストカットの手段ではなく、新規事業立ち上げと同等に、取り組みが収益化に至るまではコスト増を許容するという、覚悟の経営が必要でもあるのだ。

 たとえば、インターネットで本を売るというビジネスでしかなかったAmazonは、「利益よりも投資を優先させ、スケールメリットを最大化させる」という戦略を掲げていたため、創業以来赤字を計上しながらも挑戦を続けてきた。

 消費者にとってのCXを最重要視し、サブスクモデルやダイナミックプライシングによる価格破壊にまでたどり着いくことができたのは、IoTセンサーやクラウドなどのIT技術に惜しみなく先行投資をし、活用を試行錯誤してきた賜物であるといえよう。

 このように、GAFAMの急成長などを背景に、IT活用というものが企業の成長を大きく左右する一因になることが明確となっただけではなく、彼らの成功を見た投資家たちの視線も、企業のIT活用に視線が向けられるようになってきたのである。

 つまり、経済産業省が「攻めのIT経営銘柄」選定の取り組みやIRの新しい指針(IT-IR)を発表することで、国内企業がIT活用を推進できる環境を整備するだけはなく、IT活用に積極的な国内企業を精力的に発信することで、投資家からの出資が集まるグローバルな企業へと成長することを目的としているのである。

 もちろんその一方で、IT活用に遅れを取る国内企業に対しては、グローバルな競争の敗者となる可能性が高いという、大きな警鐘の意味があることも間違いないだろう。さらにその裏では、アベノミクスという大規模金融緩和で潤ったはずの国内企業の資本が思ったように循環せず、内部留保として積み上がっているという問題も認識されていたに違いない。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

続きは: 経産省が「攻めのIT経営銘柄(DX銘柄)」を選定する目的と投資価値 後編

関連キーワードFacebookGoogleAppleアベノミクスクラウドAmazonMicrosoftIoT(Internet of Things)経済産業省内部留保

関連記事

広告

財経アクセスランキング