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連続11期増配予定の、シップヘルスケアHDの「TPP」戦略とは
何度か記しているが、「連続増配企業に照準を合わせるのは、株式投資で資産を形成する一法」が私の持論。その意味でシップヘルスケアホールディングス(シップヘルスケア)は、単元株を100株に変更した2011年3月期以降に限ってみても、今期計画を含め11期の連続増配を実施している。
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シップヘルスケアの中軸は、医療現場に不可欠な医療機器・医療設備・什器・備品一式を自社で請負、ワンストップで一括納入する事業。「TPP(トータルパックプロデユース)」。
原点は創業者CEOの古川國久氏が起業前に身を置いた会社での実体験。国立京都国際会館建設に際し会館で必要となるあらゆるものを、パッケージで提供する事業を受注した。医療関連で業を興したいと希望していた古川氏は「医療の世界でこれを応用できないか」と考え、「医療商材のパッケージ提供」に舵を切ったのである。
シップヘルスケアに対する認識が高まったのは2000年の「医療ビッグバン」。病院の新築移転に、外部コンサルを活用することが一般化した。病院づくりをトータルサポートしてきたTPPのノウハウが、一気に求められる時代となった。
一方で「電子カルテへの転換」「医療費の定額支払い制度普及」や、国公立病院の(独立行政法人化の流れ)経営の自由度が増す中、物品の一括調達/コスト低減が求められた。TPPの延長線上で展開されたMSP(メディカルサプライ:医療材料や医療消耗品の年度一括供給)にも大きなフォローの風となった。
シップヘルスケアは目下、調剤薬局や介護事業にも積極的姿勢を見せている。介護事業への進出は03年。関西の大手病院Gの病院が移転新築時に、隣接地に介護施設建設の企画を提案したのが契機。その後千里中央駅再開発事業の一環として「日本初の新設400床の病院200室の介護施設」に加え、保育所・在宅専門診療所・調剤薬局・健康レストラン・鍼灸治療院などヘルスケア関連店舗も誘致。
この施設は現在自社が関わるヘルスケアREITに組み込まれている。目下、入居系67施設、定員数4352人。入居率は99%超。介護付有料老人ホーム中心に住宅型有料老人ホーム・サ高住・グループホーム等「入居系」と、「パワーリハビリ対応デイサービス」「訪問看護・介護」の在宅サービスと広範囲。
病院の給食外注事業の経験を生かし、介護施設の食事提供にも歩を進めている。シップヘルスケアの介護事業の特長はいわば「ヘルスケア版TPP」と言える。
アナリストは「シップヘルスケアを語る時、不可欠なのは13年の大阪重粒子線センターの建設・運営の受託」であり「海外展開だ」とする。前者は「切らずに痛みもない高齢者に優しい癌治療」を施す最先端癌治療施設。後者は5年前にバングラディシュで取り組みを始め完成間近の日本式病院建設に象徴的。
また、「医療施設向けに簡易陰圧室(感染症対策として、部屋内空気の清浄化する)を提案するなど、医療機関向けに積極姿勢を強めている」ともした。
ちなみに今期の営業利益(前期比11.7%増:210億円)予想に対し開示済みの第3四半期実績は「70%」水準に達している。連続増配企業は、ウォッチし続ける価値がある。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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