地域で異なる車購入行動

2021年4月7日 08:34

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Photo:最後に最上級機種「1300ccのスーパーデラックス」を販売するのが秘訣だった

Photo:最後に最上級機種「1300ccのスーパーデラックス」を販売するのが秘訣だった [写真拡大]

 メーカーで多岐にわたる部門を経験し、関係したエリアも東北・北海道、関東、東海・北陸、近畿、中国と広範囲にわたる。甲信越、山陰、四国と九州・沖縄だけはご縁が浅かった。

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 直接ユーザーと接する営業活動は、東京、名古屋、大阪エリアで経験したが、地域による住人の車購入行動での感性の違いも如実に感じられた。

 以下は、筆者の独断と偏見に基づくものであることをお断りして、気分を害された向きにはお詫びしておく。

●関西・大阪エリア~近隣との親和性

 兵庫県の或るディーラーに出向中の話。

 大企業の社宅団地在住のAさんと販売契約して、納車完了した。Aさんはその車を大いに気に入ってくれて、同じ社宅の親友であるBさんを紹介してくれた。

 日時を打ち合わせて、営業拠点にAさんがBさんを伴って来店し、一緒に商談に臨んだ。

 Bさんは、先日納車されたAさんの車にも乗って確かめて、気に入ってくれていた。商談はとんとん拍子に進み、オプション追加部品もすべてAさんと同じで良いという。

 Aさんからは自分と同じ購入条件にしてくれとの依頼があった。最終段階でボディカラー決定する際にも、BさんはAさんの車と同じ色で良いといわれた。

 この車種のボディ塗色は数種類設定されていたが、筆者自身がこの車種を購入するなら2色気に入った色があり、そのうちの1色はAさんが購入した色だった。

 そこで、「同じ社宅で同色の同車種で完全に被るより、色だけは別にする方が良いのでは?」と提案して、もう1つの別のボディカラーで契約した。

 紹介者であるAさんは、ディーラーからの紹介謝礼に同じ品を2つ選んで、仲良しのBさんと1個ずつ分け合った。関西の人の、近隣との親しい付き合いを示すエピソードだった。

●関東・東京エリア~近隣との競争心

 東京都下の小規模住宅開発分譲エリアでの商談では、その10数軒の最初の販売車種は「最上級モデル」を売ると、2台目が非常に販売し難くなった。

 関東ではライバル心から、近隣が購入したクラスと較べて、「それ以下のクラス」だとの印象を与えると、後が続かない。

 ミニ開発の戸建て住宅を購入する階層は、所得水準も似通っている。当時は、ファミリーカーは1000cc~1300ccクラスが一般的だった。

 排気量は1000ccと1300ccで、スタンダード、デラックス、スーパーデラックスのグレードの車種を売り込む場合は、ユーザーが検討の結果「1300ccのデラックス」とか、既に内心決めているなら、それは尊重すべきだ。

 しかし、決めかねていた場合には、例えば「街乗り主体で長距離ドライブの機会が少ないなら、1000ccの方が税金は安くつきます」「グレード的には最上級の装備の方が満足度は高いです」といった話法で、「1000ccのスーパーデラックス」を販売する。

 次に売り込む先には、「1300ccは余裕があります」「装備はデラックスであれば必要十分な装備を備えています」と説明し、排気量の差で他所との差別化で優越感をくすぐって「1300ccのデラックス」を販売する。

 (参考写真: 最後に最上級機種「1300ccのスーパーデラックス」を販売するのが秘訣だった)

 そして、最後(になるだろうと思われる)の売り込み先には「1300ccのスーパーデラックス」を販売する。

 関東の人は、関西の人間関係とは真逆といっても良い位の、個人主義的な生活スタンスの人が多く、近隣に対する見栄や競争心をくすぐるのが効果的だった。
 
 神戸っ子の筆者には、関西の気質がしっくり来るが、車の購入行動にしても、地域によるユーザーの違いが明らかに違っているのが可笑しいと感じたものだ。多分、現在も同様の傾向があるだろうと思っている。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

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