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クルマにエンジンが無ければ その1
モーガン・エアロ 1922年式 (c) sawahajime [写真拡大]
クラッシックカー好きにはこたえられない、魅力的なこの車は1918年~1922年の間に生産されたモーガン・エアロ(Morgan Aero)。ヘッドランプよりも前に搭載されたエンジンは、水冷V型2気筒OHVの1096ccだ。(写真1参照)
【こちらも】将来クルマは2極分化する
●車にエンジンが無ければ
ここで、クルマ大好きの筆者が、全く逆説的な論を展開して見たい。この車のヘッドランプより前のエンジン部分が、全て無くなったとしたらと・・・。
エンジンが無い車が理想だというと、どんな感想を持たれるだろう?しかし冷静に考えれば、もしエンジンが無ければ、
・エンジンを搭載するスペースが不要
・騒音が無い
・振動が無い
・燃料を喰わない(燃料タンク不要)
・排気を出さない(エキゾースト系不要)
・ラジエター等の補器類が不要
・車両重量が軽くなる
・結果として車内は広々
と、良いことずくめだろう。
2020年5月18日付「将来クルマは2極分化する」で述べたが、エンジン音やエキゾーストノートを楽しみ、ドライバーの「技量で車を制御する歓び」を得ることができる「スポーツカー」に代表される、「愛車」には似つかわしくない。
しかし、近距離の単なる移動手段、運搬手段に供される車の場合は、上記の項目実現が理想に近く、「エンジンの無い車」に近づける要因となるだろう。
従って、単なる「移動手段としての車」なら、理想はエンジンの無い車だ。これに自動運転が加われば鬼に金棒となろう。
●「エンジン無し」にどれだけ近いか
現実問題として、エンジンの無い車なんてあり得ないが、振動や騒音の低減や、燃料消費の改善等を、極力改善するのが一般的な取り組み目標となる。
●騒音
騒音は、排気系に関係する部分が大きい。シリンダーブロックの中でガソリンが爆発しているのだから、レーシングカーの排気音が強烈なことからも判るだろう。
実用車として使用するためには、運転する人に出来るだけ快適さを提供する必要がある。
ストレート・マフラー(直排気管)なら、排圧がかからないから、レーシングカーはエンジンのそのままの力を発揮できる。これにサイレンサーを組み込んで、「大声を出そうとするのを塞ぐ」のだから、排気音は小さくなるが出力は低下する。
車格も影響する。
高級リムジン < 上級車 < 一般オーナーカー < 大衆車・ファミリーカー < 軽自動車の順に、車内に入り込む騒音も小さくなる。
これは一般的には、車格が上級な程、V型12気筒、V型8気筒、V型6気筒、直列6気筒とマルチシリンダー(多気筒)エンジンが多く、振動面の効果が大きいが、騒音面でも有利になる。
また、上級車種ほど、「遮音材」も豊富に使えるので、騒音の面では有利となる。昔、ロールスロイスが「室内で聞こえるのは時計の音だけ」と謳いあげたのも、徹底した遮音の結果である。
同じ音量なら、耳に心地よい音質であることも大切だ。
●振動
エンジンがマルチシリンダー(多気筒)である程、振動面では有利になる。
4サイクルエンジンの場合、単気筒ではピストン2往復に1度爆発するのが、2気筒なら1往復に1度爆発する。気筒数の少ないエンジンでは、「バランスシャフト」を備えたりして、対策を講じる場合がある。
「バランスシャフトとはレシプロエンジンにおけるエンジンの振動の抑制技術であり、直列4気筒以下のレシプロエンジンに代表されるエンジンバランスの自己相殺が難しいレイアウトにおいて、クランクシャフトから発生する振動を低減するための偏心シャフトである」(Wikipediaより)
日本のバランスシャフト技術の代表例としては、「三菱自工のサイレントシャフト」がある。
また、車体にエンジンを搭載する際に、マウントに工夫を凝らすことにより、エンジン振動が車体に伝わり難くする。
●エンジンサイズ
エンジンをコンパクトにすることがスペース面では有利になる。
過給装置(ターボチャージャー、スパーチャージャー)を装備すれば、「自然吸気」の普通のエンジンよりも大きな馬力が得られるので、同じ馬力のエンジンであればサイズを小さくすることができる。(勿論、過給装置分のサイズが大きくなり、重量も増加するが~)
「騒音」と「振動」面だけでスペースが尽きる。続く項目は、次回に譲ろう。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)
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