国産初カーゴシステム、川崎重工・C-1ジェット輸送機 (3) 日本防衛の基礎「カーゴシステム」

2020年11月2日 15:02

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 話を川崎重工・C-1ジェット輸送機に戻そう。戦後、自衛隊が発足すると、アメリカ軍からC-46などの輸送機もF86などと一緒に貸与された。老朽化が進む輸送機の後継機開発が考えられ、C-1は1970年に初飛行をしている。このころ「カーゴシステム」の整備がアメリカ軍では進んできており、C-130、C-133、C-140、C-5などが開発されていた。

【前回は】国産初カーゴシステム、川崎重工・C-1ジェット輸送機 (2) 専守防衛の国の輸送機C-1

 アメリカ軍はベトナム戦争などで戦費がかさみ、海外駐留軍の削減を考えていた。そこで、海外の基地に装備を備蓄しておき、大部隊はアメリカ本土に常駐し、必要が生じたとき「ビックリフト作戦」で緊急展開する基本方針を打ち出していた。

 その技術的背景には、輸送機を含めた物資輸送システムの構築があり、その全体計画に従ってC-130などから始まる、機体後部の大きな扉に、トラックの荷台の高さに合わせられる荷室、ローラーシステムなどで作られたものである。これは、現在でも軍用輸送機の定番となっている。

 C-1の機体後部の大きな扉(カーゴ扉)は、戦場で特段のクレーンなどを必要とせずに短時間で貨物の積み下ろしが出来る便利な扉だ。トラックや戦車などもスロープを使って自走して乗り降りできる。また、床に敷き詰められたローラーにより人力で積み込みや積み下ろしが出来るなど、戦場での使い勝手を考えられたものだ。

 これらの戦略輸送機・戦術輸送機と装備車両などで「ビックリフト作戦」を可能として、「世界の警察」の立場をアメリカ軍は確保してきているのだ。それが日米安保の軍事的基礎であり、『自衛隊は侵略を受けた場合に1週間持ちこたえれば、救援のアメリカ軍がやってくる』との前提を確保している。日本の防衛の基礎が「カーゴシステム」であると認識しておく必要がある。

 そしてC-1の開発が始まった当時、自衛隊は「専守防衛」であり海外に進出することはタブーと考えられていた時期だ。そのため長距離の航続距離は「タブー」である時代だった。F-4Jファントム戦闘機採用にあたっても、わざわざ爆撃能力・空中給油装置などを取り外した時代だった。C-1の航続距離は、日本国内での運用に限った極端に短い性能が目的だったのだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: 国産初カーゴシステム、川崎重工・C-1ジェット輸送機 (4) 「ユーモラス」ではなく合理的な姿

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