揺らぐゆうちょ銀の信頼性と地銀再編の加速化

2020年9月25日 18:01

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●フィンセン文書により明らかとなった「ゆうちょ」の不審送金

 米財務省の資金情報機関「金融犯罪取締ネットワーク(フィンセン)」により、ゆうちょ銀行口座の疑わしい取引きが明らかとなった。他にも三菱UFJやみずほコーポレート銀行など国内銀行の名も挙がっているが、ドイツ銀行などと比較すれば「少額」である。違法性については調査中だが、ドコモ口座の不正引き出しや「mijica」会員間の不正送金など、一連の流れからゆうちょ銀の信用は揺らぐ。

●ゆうちょ銀の業務縮小は自主判断か?

 ゆうちょ銀では2020年3月に法人口座等からの海外送金サービスを終了させており、今後は国際送金を取り扱う郵便局(代理店)も減らしていく予定だ。同行のプレスリリースでは「マネロン・テロ資金供与防止に向けた態勢強化」としており、自主的な判断ともとれるが、口座が悪用されたかどうか自行内調査だけでは分からない。

 本人確認や疑わしい取引きのチェック体制について警察・金融庁から指摘され、やむ無しの判断として業務縮小に至ったと見るべきではないか。

 同行では投資信託の不適切販売も踏まえ「信頼回復に向けた業務運営」のスタートを2020年10月5日としているが、直前になってシステムや法令順守体制の脆弱さが浮き彫りとなった。9月24日の新聞各紙には「お詫びとお知らせ」として広告掲載し、即時振替サービス利用者への注意喚起を促しているところだが、サービス再開の目途など先行きは不透明だ。

●小規模銀行はマネロン対策強化が経営を圧迫

 ゆうちょ銀も含め、半数以上の銀行は過去5年以内に海外送金手数料を値上げしている。マネロン対策のコスト増を反映したものだが、今後更なる教育体制やシステム面の強化が必要であり、第二地銀など小規模銀行は海外送金からの撤退も予測される。

 手数料への依存度が高い銀行にとって送金決済サービスの縮小・撤退は死活問題であり、今後更に地銀再編に拍車がかかるのではないか。偶然とはいえ、「多すぎる銀行」を指摘し地銀再編に言及してきた菅首相の意向を反映する流れになっている。(記事:坂根豊志・記事一覧を見る

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