JASRACに喰いかかるネクストーンの武器

2020年9月16日 18:14

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NexToneのロゴ(画像: NexToneの発表資料より)

NexToneのロゴ(画像: NexToneの発表資料より)[写真拡大]

 NexTone(7094、以下ネクストーン)は、日本音楽著作権協会(JASRAC/ジャスラック)の牙城をどこまで食いちぎれるか。

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 音楽関連の著作権は、ジャスラックが法律で唯一認可された団体だった。が、2000年に規制緩和を目的として「著作権等管理事業法」が成立、新たに関連事業に参入する道が開かれた。

 ネクストーンは、参入を果たしていた民間のイーライセンスとジャパン・ライツ・クリアランスが16年に合併した企業。今年3月コロナウイルス禍の最中、東証M市場に上場した。著作権管理業務=作詞作曲家等から著作権の管理を委託され、放送局などの利用者に許諾し使用料を徴収・分配する事業。

 斯界に明るい向きから過日、加山雄三氏が病床に伏した際に「彼の場合、『君といつまでも』1曲だけでも年間約1200万円入るからゆっくり養生すればいいんだよ」と聞かされた。

 ところでこの業務の市場規模(著作権使用料徴収額)は、約1200億円。現状ではジャスラックが約95%のシェアを有している。だが逆に捉えれば、ネクストーンにとっては「これまで手つかずだった宝の山がそこにある」状態。20年3月期の「34.1%増収、67.5%の営業増益」に対し今期計画の、「28.7%の増収(55億9200万円)、24.6%の営業増益(3億8000万円)」にも顕著に見て取れる。阿南雅浩社長も目標として「最終的には市場シェアの半分をとる」と公言している。

 さて、そうやすやすと問屋はおろしてくれないと思うのだが。先の業界通は「ネクストーンにはジャスラックも注意している武器がある」とし、こう指摘した。

★DD(デジタルコンテンツディストリビューション)業務: 前身の1社のイーライセンスが始めたビジネス。ジャスラックも手つかずの分野だった。ユーチューブやアップルなど世界の音楽配信プラットフォームに、曲の原盤を提供するサービスである。ネクストーンは音楽事務所や独立系の音楽家オフィスなど約600社と契約し、世界の音楽配信事業者との橋渡し役を担っている。

★キャスティング業務: アーティストの音楽プロモーション支援を積極的に展開している。

 更に業界通は、「ジャスラックは一般社団法人。長年の独占状態で、儲けを前提にした営業企画力に欠ける。対してネクストーンはいま、演奏権市場の5割以上を占めるカラオケ歌唱に着目。業者との急接近を図っている。DD事業に注力している。世界のエンターテイメント市場は2兆円ともいわれる巨大市場、DDは武器になる」ともした。

 初値1660円で生まれた後、5月の9830円まで急伸。7月に5930円まで利食い先行も8月に1万2600円まで再度急伸。時価も1万1300円水準。マーケットは大歓迎の呈を示している。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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