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カルロス・ゴーン容疑者と弘中弁護士グループの間に、隙間風が吹いている? (上)
18年11月に逮捕されて以来長期間の拘留が続いていたカルロス・ゴーン容疑者は、19年2月に弁護士を交代したことが奏功してか、3月6日に待望の保釈が実現した。前任の大鶴弁護士を引き継いだのは、自ら「無罪請負人」という著作を著している自信家の弘中弁護士だ。是が非でも早期の保釈を願う当時のカルロス・ゴーン容疑者にとって、うってつけの存在だった。
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国際的に著名なカリスマ経営者で、拘留の長期化に海外からの厳しい批判が続いていたことも早期の保釈実現につながったのだろうか。まるで日本が”推定無罪”の原則をないがしろにしている法的な後進国であるかのような海外メディアのバッシングを、東京地方裁判所がどのように受け止めいていたのかは分からない。
司法の元締めが”海外世論に迎合する”ような恣意的な判断は有り得ないだろうが、”なぜ保釈するのか”という原則論よりも”どうやったら保釈させられるか”という方法論に引き込まれて、逃亡と証拠隠滅が防止される条件の確保へと関心が向けられたような印象はあった。
ゴーン容疑者の弁護団は弘中弁護士がグループを構成して担当している。その1人が高野隆弁護士で、弘中弁護士によると”保釈のプロ”だそうである。弘中弁護士は保釈に関わる手続きを高野弁護士に任せていた。
高野弁護士は「住居が特定されるのを避ける」ために、ゴーン容疑者に作業服を着せるという変装めいた手段を実行して世間を驚かせた。保釈現場と関わらなかった弘中弁護士は、保釈翌日7日の会見で、自身の見解として「ああいう服装もありだ」と納得感を示すと共に、「カルロス・ゴーン氏自身が面白がっていたようだ」と感想を述べている。
8日に公開された高野弁護士のブログには、作業服を着て東京拘置所を出ることが全て自分が計画して行われたことであり、「私の未熟な計画のために彼が生涯をかけて築き上げてきた名声に泥を塗る結果となってしまいました」という詫びの言葉が率直に掲載されている。この”生涯をかけて築き上げてきた名声に泥を塗る結果”というフレーズは、ゴーン容疑者が高野弁護士に叩きつけた怒りのフレーズそのものだろう。つまりゴーン容疑者はそれほどの強烈な怒りを表現したことになる。
保釈の時点では変装の意図を巡って色々な解釈が乱れ飛んだが、肝心なことは保釈された本人が、今回の保釈の流れに全く納得していなかったということだ。「面白がってなどいない」ゴーン容疑者と弘中弁護士Gの間には思いがけない隙間風が吹いてしまった。高野弁護士のブログにある詫びの言葉の背景を理解しないと、ゴーン被告の怒りの大きさを受け止めることは出来ないだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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