三陽商会、2019年度は”デジタル化”に15億円投資 新ブランド&事業の発表も

2019年2月15日 23:22

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記事提供元:アパレルウェブ

 2月14日に発表した三陽商会の2018年12月期連結業績は、3期連続の赤字となった。上期に抑制した宣伝販促費を下期は6億円強追加投入したことから販管費が増大。三陽商会青山ビルの売却によって特別利益10億円を計上したが、希望退職実施に伴う22億円の特別損失が発生した。10~12月の暖冬も売上減に響いた。2019年度(従来の会計期間で算出)は、2018年10月に発表した新ビジョン「Future Sanyo Vision」にもとづき、ブランディングやマーケティングの強化を通じた既存ブランドのプレミアム化、バリューチェーン全領域におけるデジタル技術の導入、積極的なM&A・資本業務提携などの実施スピードを加速。営業利益4億円の黒字化を目指す。特に、全領域におけるデジタル技術の導入”デジタルトランスフォーメーション”については、希望退職の実施によって全体の30%にまで抑えた人件費分も充当。前期の1.5倍となる15億円を投資する。
 
 決算発表当日には、AIトレンド分析のファッションポケット社との業務提携を発表した。「過去の数値実績とデザイナーの感性」によって企画していた従来の商品と、大量のファッションビッグデータ画像を解析して割り出されるファッションポケット社のトレンド分析との差分を埋めながら、より緻密な商品企画を進める。また、2018年10月に業務提携したABEJAの店舗解析サービス「ABEJA Insight for Retail」は現在、直営19店舗に導入。2019年度はフルリニューアルする銀座タワーを含めた全直営店や、テナント入居している百貨店や商業施設での導入も検討しており、「よりシームレスでパーソナライズ化された顧客体験の創出を目指す」。
 
 全体売り上げの約1割を占めるECについては、下期にファーフェッチやメディア系ECなど外部ECでの売り上げが30%増と好調で、自社ECを含めたEC全体でも12%増と2ケタ増を確保した。2019年度は、自社ECにおけるコンテンツマーケティングの強化とオペレーションの精度向上をあげ、越境ECへのトライアルも計画している。
 
 2018年4月に買収したEC支援のルビー・グループとは、すでにシナジー効果が生まれているといい、2019年1月からは自社ECのオペレーションもルビー・グループに順次移管。上期に立ち上げる4ブランドの単独EC(ラブレス、エポカ、マッキントッシュ ロンドン、マッキントッシュ フィロソフィー)についても運用を移管する。


慎正宗(しん・まさむね)執行役員経営統括本部副本部長
 4月に立ち上げたブランド横断の自社オンラインメディア「SANYO Style MAGAZINE」についても成果を上げており、同メディアを経由して自社ECでプロパー商品を購入する比率は、ほかの集客経路に比べて1・4倍高く、平均購入単価も7%多かった。今後は、自社ECとの連動をさらに強め、買い上げ率の向上や新規会員を増やす。
 
 ブランドのプレミアム化の一環として、新ブランドや新事業の立ち上げも併せて発表した。
 
 新ブランドの立ち上げは、40~50代が中心となっている同社の主要顧客ゾーンを広げるのが狙い。2019秋冬にスタートするのは、27~34歳女性をターゲットにしたアパレル・雑貨ブランドで、百貨店や専門店、直営、ECなど幅広いチャネルで販売。トレンドをほどよく取り入れたエレガント&モードなテイストで、ハイクオリティーでありながら手の届く価格で提供する。初年度は20~30店舗を新規オープンする。
 
 同社のブランドを集積した銀座タワーについては、2019年9月に向け、全館リニューアルを実施。グローバルインバウンド、プレミアム、クラフトマンという3つのコンセプトで構成。現在、全館売り上げの半数を占めるインバウンド需要に対応し、地下1階から3階はグローバルインバウンドでフロアを編集。飲食関連のテナントを誘致する。4・5階はプレミアムで編集。6~8階のクラフトマンは、4月移行に発表する新事業を導入。9階はイベントスペースを設置する計画だ。
 
三陽商会 公式サイト

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