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東証1部への上場が12月19日に迫ったソフトバンクに、突然の逆風が! (3-3)
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ファーウェイの副会長逮捕に象徴される世界の中国製通信機器包囲網と、携帯電話の通信障害は、本来的にはソフトバンクと関わりのないところで発生した。東証1部上場を目前にした時期に相次いで発生した今回のトラブルが、ソフトバンクの上場に影を落とすことはないだろう。しかし、今まで世間の耳目を集めて来た話題の企業に、何らかの変調の兆しが表れたと受け取る人が出てきても不思議ではない。
【前回は】東証1部への上場が12月19日に迫ったソフトバンクに、突然の逆風が! (3-2)
ファーウェイの副会長は保釈されることになった。8億5千万円の保釈金は痛くも痒くもないだろうが、追跡装置を身に着けて、パスポートが押収されていれば、バンクーバーの自宅に暮らしても、自宅軟禁状態と同じだろう。副会長に関わる次回の審理が開催される19年2月は、12月1日に米中首脳が追加関税の猶予に合意し、米国が設定した90日以内の期限と微妙にリンクしている。逃亡を試みれば米国の思う壺だろうし、大人しくしていても刻々と米国送還が近づくと思えば、平常心ではいられない。
13日には日本の重要インフラである電力、水道、金融、情報通信、鉄道他の合計14分野を担う民間企業や団体に、安全保障上の懸念がある情報通信機器を調達しないように要請することが報じられている。19年1月以降の調達に適用されるようだが、機を見るに敏な企業の対応は既に始まっている。
中国製の情報通信機器を調達しないということは、裏返すと日本製の部品販売が減少することにつながる。ファーウェイ1社だけで日本の部品は年間5千億円の規模で納入されている。日本のスマホが端末と通信料金が完全分離の方向に向かうと共に、世界的にスマホマーケットのパイ縮小が懸念されている時期だ。端末価格上昇が購入意欲の低下を招き、通信機器製造企業の輸出が大幅に減少することになれば経済への影響は大きい。
ひと頃の追い風が一気に逆風へと変わったソフトバンクは、中国製の通信機器との決別を即断し、組織としての意思決定の健全さをアピールする機会になった。もちろん、端末と通信料金の完全分離が現実化すると、通信料金が引き下げられて収益力が低下することは避けられない。
5Gへの投資が今後加速することも予想されていたことだ。過去のファーウェイとの開発が白紙に戻って、追加投資が膨らむことになる。しかし、今回の事態の背景に米中の国際的な覇権争いがあり、短期間での収束が期待薄であれば、ソフトバンクは良い決断をしたと言えるだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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