トヨタがビジネスモデルを大転換 モビリティサービスの会社を目指す

2018年11月9日 14:38

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 トヨタ自動車が国内でのビジネスモデルの転換へと舵を切った。トヨタの豊田章男社長が目指すのは、「車をつくる会社からモビリティーサービスの会社になる(概略:移動するためのシステム全般を提供する会社)」ことだ。

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 トヨタは多くの名車を世の中に送り出して、社会に受け入れられてきた。その販売先は世界中に及び、ピークには販売台数で世界N1位の座を獲得したこともあった。しかし、従来型のビジネスモデルには、シェアリングエコノミーの台頭やIT(情報技術)の参入で限界を指摘する声が大きくなっている。

 クルマは手軽に買えるものではない。購入時にはまとまった現金や借入が必要であり、その利便性を享受している間も多額の経費を必要とする。クルマを購入するために、他の多くのことを我慢した人も少なくない筈だ。ところが一般の家庭では、クルマは1日の大半(95%という調査結果もある)、駐車場に止まったままだ。人によっては週末に多少利用する程度という人もいるかも知れない。

 収入の先行きが見えてきたら、支出を調整するのは健全な経済感覚だ。今までは、クルマの優先順位が高かったので、他のものは我慢してもクルマを買った。今は車の優先順位が低下している。そして、必要な時だけにクルマを使うカーシェアリングというビジネスモデルが市民権を獲得している。

 例えば、パーク24の子会社であるタイムズ24は10年に満たない業歴ながら、約2万3000台の車両台数を誇るカーシェアの国内最大手だ。トヨタは親会社のパーク24と19年3月末までシェアリングの実証実験をしている。60台の小型SUV「C-HR」に通信型のドライブレコーダーを積み込み、クルマの使われ方を走行データとして解析する。

 トヨタの販売店には最大4万台の試乗車がある。タイムズ24を上回る試乗車も、一般家庭のクルマ同様、走っている時間はごく僅かだ。販売店がカーシェアリングの予約と決済のシステムを身に着けると、眠れる資産が有効活用できる。カーシェアで気に入ってもらえれば、販売チャンスも生まれる可能性がある。

 もう一つ、トヨタが始めるのは「サブスクリプション(定額制)」という、一定の月額料金を払って好みの車種に乗り換えられるというシステムだ。19年1月から東京でスタートし、全国展開する見通しである。対象車種や価格設定については今後詰めることになっているが、欧米のメーカーが高級車を中心にラインナップしていることも参考になるだろう。どんな価格で、どんな車に乗れるのか、さっそく期待している向きもあるのではないだろうか?

 カーシェアリング用のクルマが売れると、新車の需要が減るかもしれないという懸念は当然ある。そんな思惑が大き過ぎて、旧来型のビジネスモデルにこだわり、時代の流れをつかみ損ねた企業はいくらでもある。トヨタがやらなくても、他社が始めれば同じことだ。バッテリー問題に解を見出せていないEV(電気自動車)よりも、間違いなく先に到来するシェアリングの大波にトヨタは先手を打つ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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