今世紀最大級の明るさ持つ「X線新星」、ISSきぼう「MAXI」の観測で発見

2018年9月21日 19:12

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「最大光度時のMAXI全天画像、X線の色の変化(疑似カラー)」(画像: MAXIサイエンスニュース)

「最大光度時のMAXI全天画像、X線の色の変化(疑似カラー)」(画像: MAXIサイエンスニュース)[写真拡大]

 理化学研究所の中平聡志研究員(宇宙航空研究開発機構客員)や、愛媛大学の志達めぐみ助教及らを中心とする研究グループは、国際宇宙ステーション(ISS)のきぼうに設置されているX線監視装置「MAXI」を用いて、非常に明るいX線新星を2017年9月2日に発見、その後200日に渡って行った観測の結果を発表した。今回発見されたX線新星は「MAXI J1535-571」(以下、J1535)と名付けられ、その中心天体はブラックホールであると考えられている。

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 J1535は南天のじょうぎ座にあり、最初に発見されてから16日後には、100倍以上の明るさにまでなり、全天でひときわ明るく輝いた。この明るさは、今世紀に発見されたX線新星では最大であり、観測史上でも7番目に明るいX線新星となった。

 X線新星とは、ある時突然X線で輝き始め、やがてまた暗く消えていく天体のことを言う。通常の恒星とブラックホールや中性子星など(高密度星)の連星系の場合、高密度のブラックホールなどに間欠的にガスが流入するために、明るさが激しく変動する現象と考えられている。また、天体に周囲からガスが落ち込む場合、ガスは主星にはまっすぐに落ちず、主星の周りにリングを形成し、それが広がって円盤になる。これを降着円盤という。

 J1535の出現からピークに達し徐々に暗くなるまでに、X線エネルギースペクトルは大きく変化し、低エネルギー線(2-8 keV)と高エネルギーX線(8-20 keV)の間の比は20倍以上も変化した。

 今回の観測では、X線のエネルギースペクトルから、ブラックホールを取りまく降着円盤、高温コロナの温度や構造についても調査された。その結果これらは、高いX線光度で現れる現象であり、J1535の明るいX線強度は、地球からの距離が近いことによる見かけ上のものではなく、本質的に高いX線光度であると考えられるという。

 ISSの日本実験棟である「きぼう」は、船内実験室と船外実験プラットフォームの2つの実験スペースを持つ。全天X線観測装置「MAXI」は、船外実験プラットフォームに設置されており、2009年から観測を開始。ISSが地球を周回するのを利用して、全天を観測することができる。宇宙から飛来するX線は地球大気に吸収されてしまうために、地上から観測することができない。そこで様々な人工衛星が打ち上げられているが、MAXIは、天体を短い間隔で繰り返し長期間に渡って観測することを得意としている。

 今回の研究結果は、日本天文学会欧文誌(Publications of the Astronomical Society of Japan)オンライン版に11日付で掲載された。

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