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ディーゼルエンジンに未来はないのか?したたかなジャーマンスリーと気骨あるマツダ(後編)
EVの根幹となるバッテリーの開発はなかなか進まない。現在主流となっているリチウムイオンバッテリーは、航続距離の制約が大きく、充電に時間がかかりすぎるうえ高価である。当面は兎も角、もしリチウムイオンバッテリーが本格採用された場合に、原料供給に不安があることを訴える声も強い。つまり、現行のEVには課題が多い。
【前回は】ディーゼルエンジンに未来はないのか?したたかなジャーマンスリーと気骨あるマツダ (前編)
次世代バッテリーとして注目を浴びている全固体電池は、着実な研究の成果が報じられているが、現在の進捗状況と到達点との関係性が見えてこない。つまり、1年や2年ではモノにならないらしい。スタンドでバッテリーそのものを交換する発想も出てきたが、社会に行き渡ったインフラにならなければ使い勝手が悪い。世界全体で交換スタンドに関わる議論が進んでいる訳もなく、社会的な合意形成の緒にもついていない。つまりEVへの移行は多分に雰囲気的な要素が先行した、流動的なものと考えるべきだ。
こうした状況で気骨を感じさせるのが、マツダのディーゼルエンジンに対する向き合い方だ。新しく開発した排気量1.8Lのディーゼルエンジンは、“排ガス規制対策”に必須と認識されていた高価な尿素SCR(選択型還元触媒)を使用しなくとも、ヨーロッパで20年から始まる排ガス規制のRDE(Real Driving Emission)の第2段階(NOx排出量120mg/km)をクリアできる見通しに到達した。しかもエンジン排気量を1.5Lから1.8Lにアップサイジングし、摩擦損失を減らして燃費性能を高めるという「逆転の発想」のおまけまでつけた。
ジャーマンスリーはヨーロッパで開始される、実走行中の窒素酸化物(NOx)排出量規制RDEの第1段階に対応し、多くの部品を共用するモジュラー化に力を注いだ新エンジンの開発を進めている。ダイムラーは18年中にメルセデス・ベンツのEクラスとCクラスに搭載するようだ。
EV化への潮流が必至であることはジャーマンスリーと言えども否定しない。豊富な資金力にものを言わせて、関連分野への投資を進めている。だが、いつどんな形で本格的なEV化が始まるかということについてはフリーハンドな余地を残している。今まで培った技術の蓄積を最大限に活用することと、いつでもEVに切り替えられる身軽さを併せ持とうとする姿勢は相当したたかである。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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