GPSカーナビのパイオニア(2) カルソニックカイセイ、つまりアメリカファンドに下るか?

2018年8月10日 08:17

印刷

 戦後間もなくのころは、日本の企業は自己資本率が20%もあればよいほうで、ほとんど借り入れの自転車操業で資金を賄っていた。それでも銀行は成長している企業には貸し付けをためらわなかったが、現在のパイオニアのように、成長ストーリーどころか維持できないと分かる状態では、抵当権が取れなければ貸し付けはしなくなる。最近では、ファンドが抵当不足でも成長の可能性が見られれば貸してくるが、パイオニアはどうであろうか?

【前回は】GPSカーナビのパイオニア(1) 2018年第1四半期営業赤字 企業存続には借り換え前提

 スポンサー候補であるカルソニックカイセイは、アメリカ投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の傘下にある。またまたアメリカファンドの支援では、長期の操業が確保できるのか、ビジネスモデルに再生ストーリーが見えないパイオニアでは疑問がある。このような場合、投資ファンドは何らかの形で「売り抜ける」ことを考えるもので、ビジネスモデルの再生とならない場合が多い。テレビドラマのように、創業家の放漫経営が原因であれば再生の可能性が残るが、韓国企業・中国企業との競争に負けているのであると、何らかの形で「店じまい」のストーリーになるのだろう。

 資産勘定も見る必要がある。村上ファンドが目を付ける「含み資産」だ。パイオニアには古くからの多くの土地があったはずで、会計評価はそのままであれば、現在の実価格よりだいぶ低いはず。評価替えなどしていないのかを調べないといけない。

 大塚家具が身売りすると思われるが、あのスピードで瓦解している状態では、資産が多く抵当権が確保できる状態でも、貸付だけでは難しいだろう。経営者の交代が必要となる。久美子社長の追放だ。パイオニアも創業家の同族経営だったが、この半世紀で既に様相は変わってきている。華やかなりし頃、創業家の人々が「お小遣い稼ぎ」と称して、副業に精を出していたことを思うと、懐かしくさえ思う。中国企業の現在と同様なのだろう。

 「パイオニア」の名の通り、オーディオのベンチャー企業であったパイオニアが、高い技術で発展し、華やかな時代を過ごし、現在、維持することもままならぬ様子は、日本全体の置かれた姿と重なって見え、苦しいものだ。10年ほど前、同年配の仲間が定年延長を望まずにパイオニアを定年退職したときには、「滑り込みセーフだな!」と苦笑いした思い出がある。現代の働き盛りの世代は縮小する苦しみを味わっていることだろう。30代の人々には、経済発展の勢いを経験できていないのが気の毒に思う。「働きバチ」と団塊の世代は揶揄されてきたが、世界の現実は今でも「働き続ける」ことを要求している。「一息入れた」のが間違いだった。「グルメやブランドあさり」は忘れることだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事