EV大国中国 EV化は中国主導だが地球温暖化対策は置き去りか?

2018年4月23日 09:23

印刷

■世界最大の自動車市場の中国では、EVが強力に支援されている

 中国は、桁外れの世界最大の自動車市場となっている。新車販売台数は2017年2,887.9万台(中国汽車工業協会調べ)で、日本523.4万台の5.5倍、アメリカ1,723万台の1.7倍となっており、2018年はさらに伸びるであろう。

【こちらも】EV加速!中国20年にEV、22年までに全自動車の外資規制撤廃 米中貿易摩擦回避

 その中国市場で、2017年のEVとPHEVの販売台数は77.7万台。ヨーロッパ市場での販売台数は27.8万台(欧州自動車工業会)、アメリカ市場での販売台数は約20万台で、中国は世界最大市場となった。日本市場のEVとPHEVの販売台数は約5.6万台で、中国の1/14にしかならない。

 中国はEV、PHEV、FCV(燃料電池車)を新エネルギー車と位置付け、「新エネルギー車(NEV)」政策を強力に進めている。それは購入時の補助金で、EVであれば航続距離により2万~4.4万元(約32万円~70.4万円)、PHEVの場合で2.4万元(約38.4万円)となっている。新エネルギー車(NEV)については、中国政府は2020年には販売台数200万台、2025年には700万台、2030年には1000万台を目標としているようだ。

■中国の本音は地球温暖化対策ではなく産業育成策

 この目標を掲げる理由については、2つの理由が考えられている。1つは、もちろん排気ガス規制だ。工業化に伴い深刻な大気汚染に見舞われていた状態を脱するためだ。もう1つは、EVを生産する自動車会社を産業として育成するためだ。この第2の目的が本音であり、大気汚染は効率の悪い火力発電の問題でもあったのだが、EV化を推し進めるには依然火力発電に頼ることになり、2つの理由は矛盾する。しかし、工場廃棄物の処理に関して目途が立ってきた情勢では、発電を火力発電に頼り、EVによりCo2排出量が削減できなくとも、産業育成策を推し進めるのであろう。

 ドイツ、オーストラリアなど自然エネルギー発電で行き詰っている状況であるが、中国はEV化で逆に地球温暖化を進めてしまうことになっても、躊躇しないのであろう。やはり、経済政策優先はアメリカをはじめ世界規模でのことで、温暖化防止はできないのかもしれない。

 「トータルのエネルギー消費量を勘案した(Well to Wheel)燃費規制を、自動車メーカーは考える必要はなく、EV化を進めればよいのだ」と堂々と発言する専門家もいるが、それは、みな本心では「自分が生きている間だけのこと」しか考えていないためだろう。

■ガソリンエンジン熱効率向上が、有効な地球温暖化対策?

 ガソリンエンジンの熱効率が40%を超えてきた現在であるが、それが50%に達すれば、火力発電を使用している以上、天然ガス発電を除いては、EVにする意味がなくなってくる。さらに60%になると、自然エネルギー発電以外は逆転する。「レンジエクステンダーEVの発電用エンジン」としてなら、現在では熱効率60%のエンジンは実験段階にある。自然エネルギー利用の発電方式が技術改革を成し遂げるのか、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンの熱効率が60%以上を成し遂げるのか、またそれ以上に画期的技術開発が出来ないと、地球温暖化で地球環境は人間にとって居住環境として成り立たなくなる。

 どうも「大規模発電、広域配電」よりも「個別発電」のほうが災害に強いこともあり、現実的なのではないかと考えてしまう。中国のEV政策が、「トータルの地球温暖化の観点」で検証されないとすれば、自動車はこのまま地球が滅びるまで、環境破壊の中心的存在となるかもしれない。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事