関連記事
デンソーとFLOSFIA、次世代パワー半導体「酸化ガリウム」を車載用途に
デンソーとFLOSFIAは4日、次世代のパワー半導体の材料として、コランダム構造酸化ガリウム(α-Ga2O3)の車載応用に向けた共同開発を開始すると発表した。
【こちらも】デンソー、自社製SiCパワー半導体を内蔵したインバータを2020年に生産へ
●パワー半導体とは
一般の家庭やオフィスには交流(AC)の電源が供給されている。ところが、電気製品に組み込まれている電子回路は、直流(DC)電圧で動作する。そのため、ACからDCに変換する必要がある。このように、AC-DCやDC-DC、DC-ACなどの電力変換を担うのが、パワー半導体である。
この電力変換時に、電力損失が生じ、熱として放失される。この電力変換時の電力損失は、全発電量の10%超を占めるなど極めて大きく、せっかく作り出された電気が無駄になってしまう。
そのため、シリコン(Si)よりも電力損失が少ないシリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)を、次世代パワー半導体と呼び、実用化されている。
今回の発表は、酸化ガリウム(GaO)という新たな材料を用いた次世代のパワー半導体だ。SiCに比べて、低損失化や低価格化への期待が大きいのであろう。
●コランダム構造酸化ガリウム(α-Ga2O3)の特長
α-Ga2O3は、京都大学の藤田静雄教授が世界で初めて単結晶合成に成功。5.3eVと高いバンドギャップをもち、絶縁破壊電界が大きいことなどから、SiやSiCと比較して、それぞれ1/3400、1/10もの低損失化が期待できるという。
高品質な単結晶の実現には、ミストドライ法を独自アプローチで改良した手法を用いている。サファイヤ基板上に直径4インチのα-Ga2O3を形成、極めて良質な単結晶を作ることに成功。高価なSiC基板に比べて、安価であるという。
●FLOSFIAの狙い
2011年に創業した京都大学発のベンチャー企業。2015年に世界最小のオン抵抗0.1ミリオーム/平方センチメートルを実現し、世界に先駆けてα-Ga2O3の事業化に取り組んでいる。三菱重工、デンソー、三井金属などから、累計で約22.6億円の資金調達に加えて、共同開発も推進している。
・三菱重工とは、パワー半導体の産業機器など幅広い応用に向けた共同開発
・デンソーとは、パワー半導体の車載応用に向けた共同開発
・三井金属とは、ミストドライ法を用いた材料分野での共同開発
●デンソーの狙い
デンソーは、2007年からハイブリッド車や電気自動車向けに、パワーコントロールユニット(PCU)を提供。PCUは、電池からモータージェネレーターに流す電流を調整するインバーターなどを備えた製品で、エネルギーをより効率的に使うためには、電流を直流から交流に変換する際のエネルギー損失を抑える必要がある。
両社はα-Ga2O3の車載応用に向けた共同開発を通じ、自動車の電動化におけるキーユニットであるPCUの技術革新を目指す。(記事:小池豊・記事一覧を見る)
スポンサードリンク