北朝鮮問題の背後にある米中ロの大国ゲーム

2017年9月11日 10:29

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記事提供元:フィスコ


*10:29JST 北朝鮮問題の背後にある米中ロの大国ゲーム
9月3日から3日間にわたり、中国・アモイで開催された新興5カ国(BRICs)首脳会談。北朝鮮はその開幕日、6回目の核実験を行った。米国在住の政治評論家・陳破空氏は大紀元の取材に対し、北朝鮮の動きの背後にある3つの大国の駆け引きについて語った。

国際社会が北朝鮮を強く非難しているのに対し、核実験の影響を最も強く受けるはずの中国ではこうした世論が沸き起こっていない。中国外交部が発した非難声明に関する報道が、中国国内ですべて削除され、ネット上も核実験に関する情報封鎖を行ったもよう。

陳破空氏によると、BRICs首脳会談は習近平国家主席にとって重要な外交政策の一つであり、当局も非常に重視している。(国境紛争で関係が悪化した)インドのモディ首相を参加させて、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの首脳が一堂に会する場を作るために、中国はかなりの譲歩と妥協を行った。だが北朝鮮は習主席が開幕あいさつを準備している時に核実験を行った。これで中国当局の面目は丸つぶれだ。また核実験によって人工地震が引き起こされ、遼寧省や吉林省の住民もその影響を受けた。中国人は激怒している。 

こうした状況を重く見た中国当局は、BRICs首脳会談を成功裏に閉幕させ、民衆の怒りを抑えるために、核実験関連の情報に対しネット封鎖を行った。すでに報じられた外交部の非難声明に関するニュースは全て削除され、北朝鮮による人工地震の情報も遮断された。中国語で水爆を意味する『氢弹』という言葉は、ネット上で検索不能のワードとなっている。

陳氏は、北朝鮮の核危機をもたらした張本人は中国当局だと認識している。「北朝鮮は絶えず国際社会を挑発しているが、こうなったのは主に、中国が長期にわたって北朝鮮政権を保護し、支持してきたからだ。北朝鮮に弾道ミサイルや核開発技術を伝授したのも中国当局だ」。

8月、米財務省は北朝鮮の核開発計画と弾道ミサイル計画を支援したとして、中国・丹東市の中国企業5社とロシア企業1社に対し経済制裁を科すことを発表した。だが、これら企業の背後にはそれぞれの政府、つまり中国当局とロシア当局が存在する。

中国もロシアも、対米戦略における地政学上の緩衝地帯としての北朝鮮が必要となるため、金政権を支援してきている。これについて陳氏は「北朝鮮は、中国とロシアが交互に米国を挑発し対抗するためのカードとなっている」と強調する。

米、中、ロの駆け引きが北朝鮮に付け入る隙を与えている

陳氏は米国と中国とロシアの相互関係と北朝鮮情勢について次のように分析している。

「国際社会は北朝鮮の金政権に対し、なすすべがないのが実情だ。なぜなら、この問題は米国、中国、ロシアという3つの大国が腹を探り合って暗闘した結果もたらされたものだからだ。例えば昨年、北朝鮮は2度の核実験を行ったが、2016年に中国の対北朝鮮貿易額は減るどころか増加している。これは国連決議を無視しているうえ、中国当局が引き続き北朝鮮を支持していることを示している」。


 陳氏は、国連が北朝鮮に対してさらに厳しい経済制裁を実施したとしても、倍増した中朝貿易により損失が補てんされるため、北朝鮮にとってはそれほど影響がないと認識している。

「今年上半期もそうだった。習主席はトランプ大統領に対し北朝鮮に圧力をかけるよう承諾したが、中朝貿易は減るどころか、40%も増加している。このことから、今回の核実験があっても、中朝貿易はこれからも増え続けることが予想される。なぜなら、中国当局は10月に開かれる19大を滞りなく開催するために、なんとしても北朝鮮をなだめすかす必要があるからだ。だが、北朝鮮は実際のところ、好きな時に騒ぎを起こすことができる」。

「米国には武力行使という選択肢があるが、実際にそうした行動に出ようとすれば中国とロシアが手を組んで介入するとけん制している。結局、国連決議による北朝鮮への経済制裁も中国の対北朝鮮貿易で帳消しにされ、米国の軍事介入も、ロシアと中国が干渉することで骨抜きにされる」。

いっぽう、中国もロシアも金政権に対する影響力においてライバル関係であり、どちらも主導権を握りたい思惑がある。米国が中国に対し圧力をかけて対北制裁を実行させようとしても、ロシアが支援を増やしその分を帳消しにされるだろうし、習政権の言葉を借りれば「中国と米国が協力して北朝鮮問題を解決しようとなると、背後からロシアにやられる」ことになる。

「この3つの大国の間で繰り広げられる終わりなき駆け引きが、金正恩に好き勝手に振る舞う余裕を与えている」と陳氏は指摘している。金正恩は大国の思惑を理解し、少しでも有利になるように危険でぎりぎりな振る舞いをしている。「大国の間を無謀に振る舞い、まるで結果を顧みず何も恐れない。彼は毎月のように弾道ミサイルを発射しても、毎年核実験を行っても構わないのだ」。


 今年7月、米月刊TheAtlanticに北朝鮮の核問題に対する米国の解決策を討論する記事が掲載された。米国には当面効果的で現実的な解決方法があまりなく、基本的には北朝鮮問題に解決策はなく、時間に任せるしかないという結論に達している。

これについて陳氏は次のように分析している。

「トランプ大統領はもともと、ロシアと協力して中国に対抗することを念頭において大統領に就任した。米国とロシアが手を組めば北朝鮮問題を完全に解決できるが、米国内の左派と主要メディアは米ロ関係の改善を阻止しており、トランプ大統領を苦境に立たせて外交政策の方向転換を難しくしている。中国当局に頼るにしても、中国はこれまで何度も米国を欺き、面従腹背を続けていて信頼性に欠ける」。

中国の対北朝鮮政策の抜本的な変化 19大以降に期待


 「習主席自身は金正恩に対する評価が非常に低い。金が親中派で事実上の北朝鮮ナンバー2だった張成沢(チャン・ソンテク)を処刑し、中国当局の保護下にあった金の異母兄・金正男を暗殺したからだ。習主席はこのことで金正恩から顔に泥を塗られたため、金を嫌悪しないはずがない。だが、習主席は中国共産党総書記という立場にあるため、私的な感情を抑えて党の利益を考える必要がある。党の利益とはつまり、北朝鮮というカードを利用して米国と戦うことだ。だから、習主席が内心どれだけ金正恩を毛嫌いしていても、国の政策を変えることはできない」。


 「習主席も対北朝鮮政策を転換しようと試みてはいた。数年前、張成沢をバックアップして金正恩をコントロールしようとしたが失敗に終わり、張成沢は処刑されてしまった。その後、中国当局の保護を得た金正男が金正恩の後釜に座ることを期待していたが、金正男も暗殺された。トランプ大統領と協力して北朝鮮問題を解決しようと試みてもいるが、ロシアが背後から目を光らせ、水面下で謀略を張り巡らしている」。


 中国の今後の対北朝鮮政策について陳氏は「こうした状況では、習主席も目下なすすべがない。対北朝鮮政策に抜本的な改革を起こすかどうかは、19大以降の権力構造がどうなっているかによる」と分析している。

(翻訳編集・島津彰浩)

【ニュース提供・大紀元】《HT》

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