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地銀の生き残りはいかに 新規制導入でどのような変化が?
20日付の日本経済新聞は“金融庁が狙う「鈍感地銀」のあぶり出し”と題して、金融検査マニュアル廃止後の金融庁によるタクトの一閃を伝えている。テーマは地銀の経営者が適切に経営リスクを認識する能力を有しているか否かを、金融庁が判別しようとしていることだ。
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地銀は日銀のマイナス金利政策のもと新たな貸出先の確保に苦しみ、金利変動リスクの大きい有価証券等の外債などへの投資を増やしている。
外国証券(米国債などを含む)の保有残高は地銀、第二地銀の合計で、4月末で12兆5千億円に及び、5年前と比較すると1.8倍の大幅な増加となった。
現在も地銀の保有する債券の損失が、自己資本の一定割合を超えると金融庁が聞き取り調査をする仕組みがあるが、新規制では金利が上下した場合の価格変動を想定し、1~2%の幅で損失を試算、自己資本の20%を超えた場合に追加の調査を義務付ける。リスクの多寡によって早期是正措置や改善命令の対象になったり、各行の事情を聴取して、適切に対応するよう個別に協議する。
新規制の対象は海外に営業拠点を持たない地銀(第二地銀含む)95行となり、信用組合や信用金庫など計400以上も規制対象になる。
金融検査マニュアルの制定後、融資が伸び悩み適正な利ザヤの確保が難しくなったことから、行き場のなくなった資金が外債等へ流れていたが、債券運用を適切に行える組織や仕組みを持った地銀は数えるほどで、30行程度が新基準に抵触すると金融庁は見ているようだ。
2017年3月期、上場している地銀82行やグループの連結純利益は8割が減益となっており、業績には目も当てられない。外債などの投資で高い利回りを目論んだものの、米長期金利が上昇したことで売却損を計上したり、含み損を抱えるなどの試練に直面している。
金融検査マニュアルの廃止で銀行の自主性を重んじる姿勢を示しながら、金利変動リスクを回避させ、今まで対象外だった先への融資を増加させようとする試みが始まった。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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