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ロームシアター京都に見る、新しいネーミングライツの在り方
50年間にわたって京都市民に文化の殿堂として親しまれてきたコンサートホール「京都会館」は、3年に及ぶ大規模な再整備工事を経て「ロームシアター京都」と名前を変え、2016年1月10日にリニューアルオープンした。
同日に催された「ロームシアター京都開館記念式典」には、門川大作京都市長、山田啓二京都府知事、ローム株式会社<6963>の澤村諭社長をはじめ、多くの関係者や来賓が参列し、京舞井上流五世家元の井上八千代氏による祝舞や、観世流と金剛流による能楽、京都市交響楽団による記念演奏などが華やかに行われ、新しい劇場の門出を盛り上げた。
ロームシアター京都では、約2000席のメインホールをはじめ、演劇やダンス、伝統芸能などに適した約700席のサウスホール、リハーサルや小規模公演などにも利用しやすい約200席のノースホール、楽屋兼レッスン室、会議室、ローム・スクエアと呼ばれる中庭などを貸し出し、今後、様々な公演を行っていく予定だ。また、蔦屋書店やスターバックスコーヒー、レストランなどが併設されているので、コンサート等がないときでも楽しい時間を過ごすことができる。
今回、「ロームシアター」という名の通り、京都に本社を構えるローム株式会社<6963>が、同会館のネーミングライツを持っている。しかし、ロームといえば電子部品の大手企業。しかも、業種的にもBtoCではなくBtoBの代表的な企業だ。ネーミングライツを持って一般への露出を増やしても、それほど業績に大きく関わるような宣伝効果が期待できるとも思えない。同社の狙いはどこにあるのだろうか。
実は、ロームも京都会館と同じく、京都の地で創業50年を迎える企業だ。また、同社はこれまで20年以上、音楽活動の支援を行ってきた背景もある。そしてこの度、京都会館の改修予算が当初予算よりも大幅に増額したことなどもあり、支援的な意味合いでネーミングライツの取得に乗り出したようだ。一般的にネーミングライツは露出が図れなければ契約解除ということもありえるし契約金の増減もあり得る。しかし今回、ロームは50年間で50億円という長期間にわたる契約を結んでいることからも、社会貢献的な姿勢が濃いことが窺える。
今回のロームだけでなく、大企業の間では宣伝目的だけでなく、地域への恩返し的な目的でネーミングライツを取得するケースが少しずつ増えているようだ。
そもそも、日本における公共施設のネーミングライツは、調布市の東京スタジアムが味の素<2802>と2003年3月1日に5年間で12億円の契約を交わし「AJINOMOTO STADIUM」という名称に変更したのが初の事例とされている。その影響もあってか、日本ではスタジアムなどのネーミングライツがよく知られており、有名なところでは、日産自動車<7201>の「日産スタジアム」(横浜国際総合競技場)や日本製紙<3863>の「日本製紙アイスアリーナ」(釧路アイスアリーナ)、ヤフー<4689>とソフトバンクBBによる「Yahoo! BBスタジアム」(グリーンスタジアム神戸)などがある。また、文化施設では、相模女子大学による「相模女子大学グリーンホール」(相模原市立文化会館)や財団法人田口福寿会の「ふれあい福寿会館」(岐阜県県民ふれあい会館)など、企業以外の学校法人や財団法人のネーミングライツも目立つ。
もちろん、施設に企業や団体の名を冠することで宣伝に利用しようとすることが悪いわけではない。むしろ、それが本来の目的としては当然の行動だろう。しかし、地域に根差し、社会に貢献する新しいネーミングライツの在り方も、これからの社会には必要なのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)
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