「閑散に売りなし」か「Sell in May」か5月相場の方向性を「糸」と「山」とでトライアル=浅妻昭治

2014年4月30日 06:23

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

  兜町の相場格言は、「閑散に売りなし」と陰の極で鳴く閑古鳥を吉兆と教え、ウオール・ストリートの相場格言は「Sell in May and Go Away(5月に売り逃げろ)」と警戒信号を発している。日米どちらのアノマリーが、正鵠を得ているのか試す5月相場が、このゴールデンウイーク中の谷間からスタートする。

  5月相場といえば、昨年5月はどの投資家にも拭い切れない嫌な思い出があるに違いない。当時のバーナンキFBB(米連邦準備制度理事会)議長が、議会証言で量的緩和策の縮小を示唆し、日米株価が急落したバーナンキ・ショックが起こっており、これが折角、盛り上がっていた日本の「アベノミクス相場」に冷や水を浴びせ、この後遺症がトラウマとなっていまだに株価の上値の重石となっているからだ。日本の今年の5月相場も、ゴールデンウイークが、日並びが悪く出掛けそびれたサラリーマン投資家が、ネット取引に精を出して売買高が意外にも活発化する期待はあるものの、4月30日開催の日銀の金融政策決定会合や、同29~30日開催のFRBのFOMC(公開市場委員会)などを控えて、その程度でリカバーできるかどうか予断は許さない。

  もちろん5月相場の基本シナリオは、日米の主要企業の決算発表をキッカケに好業績のサプライズ銘柄が主導する業績相場がスタートすると観測するのが市場コンセンサスではある。しかしこれも、前週までの立ち上がりでは、日本で露払い役となった安川電機 <6506> と日本電産 <6594> では、日電産が200円高と続伸する一方、安川電は、年初来安値更新と続落するなど明暗が分かれた。主要企業の決算発表がほぼ一巡した米国市場も、個別銘柄ごとにマチマチの業績・株価展開となっており、今後の決算発表動向を見極め、よほどのサプライズが飛び出さない限り「閑散に買いあり」とする確信は持ち難い。

  こうなると、5月相場は、個別材料株中心となる公算が強い。早い話が昨年5月~6月相場のリバイバルである。昨年5月の日経平均株価は、バーナンキ・ショックで長期金利が上昇し新興国株価も急落、月中に4月末終値に対して2055円安、6月も1358円安するなか、人気化した銘柄が続出した。4月30日に世界文化遺産への登録が勧告された富士山の関連株が軒並み歓迎高したほか、リプロセル <4978> (JQG)のIPO(新規株式公開)承認で、IPO人気が加速するとともにiPS関連株を中心にバイオ株買いが盛り上がり、さらに7月の参議院選挙を前にしたネット選挙の解禁でネット選挙関連株に幅広く買いが広がったことなどが思い出される。

  では今年はどうか?まずバイオ株だが、前週末25日は関連する好材料の発表が2件もあった。一つは日産化学工業 <4021> と京都大学が発表したiPS細胞の大量培養法の開発で、同社の株価は急伸して年初来高値を更新した。もう一つは25日のNHKテレビが報道した細胞性医薬品の臨床試験入りのニュースで、同医薬品を開発したJCRファーマ <4552> は、ストップ高にあと50円と迫る大幅高を演じた。ただこの2銘柄の急伸が、バイオ株全般に波及したかといえば、例の理化学研究所のリケジョ・小保方晴子ユニットリーダーのSTAP細胞を巡るゴタゴタも影響してか、逆に安値を取るバイオ株も散見されるなど押し上げ効果は限定的であった。

  IPO株人気も、昨年は上場の54銘柄のうち52銘柄が、公開価格を上回って初値をつける(勝ち)52勝1敗1分けの高勝率・高初値倍率と人気化したが、今年は4月23日上場の西武ホールディングス <9024> までの18銘柄では、12勝5敗1分けと勝率も初値倍率も落としており、とても逆行高を期待する展開にはなっていない。

  とすれば、ここでトライしてみたいのが、大型連休入りの初日となる4月26日早朝に世界文化資産への登録が、国際記念物遺跡会議(イコモス)により勧告され、6月には正式登録される見込みの富岡製糸場関連株である。これにタイミングよく4月25日午後の衆議院本会議で可決された新しい国民の祝日「山の日」が加われば、「糸」と「山」のポジティブ・サプライズ効果で昨年5月の富士山関連株と同様の逆行高相場の再現も期待されるからである。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

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