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【コラム 梁瀬洋】オリンパスの抱える矛盾
【4月16日、さくらフィナンシャルニュース=東京】オリンパス現役社員によるオリンパスへの訴訟が継続中だ。
一つは本人以外の社員向けに流された電子メールの内容についての名誉毀損、もう一つは趣旨が示されない退職勧奨に対する訴えという。名誉毀損のほうは、社内のヘルプラインへの通報後に不当な配転があったとして東京高裁で勝訴し最高裁が上告を棄却する形で判決が確定しているものだ。
オリンパスはまた、某月刊誌の記事に始まる巨額損失隠しスキャンダルでこの数年激動に巻き込まれ、その余波は未だ止まない。最近も国内大手投資家から損失発覚時の株価下落の損害賠償訴訟を起こされたばかりだ。請求額は数百億円にのぼるという。
これらの問題が発覚する前に事態を予測し得た者はいない。
オリンパスと言えばデジタルカメラやICレコーダの大手メーカーとして有名な世界的企業であり、社会的信用も厚かったはずだが、いったい何が起こったというのだろうか。
損失隠し発覚後に第三者委員会がまとめた報告書では、損失隠しを秘匿する経営の中枢が腐っておりもの言えぬ風通しの悪い組織風土が醸成されたとし「サラリーマン根性の集大成」と評された。以前のイメージに比較してこの落差に驚いた者は少なくないだろう。
オリンパスが上場廃止を免れたのも株価が持ち直したのも、世界シェア七割といわれる医療用内視鏡の利益が莫大だからだ。そのように実は民生よりも医療を中核ビジネスとしており、業界向けの体質があるという。
ひとつには人材の平準化が挙げられる。もの言う人物が社内で突出するのを好まないのだという。そうした体質が、就業規則やヘルプライン運用規定には明示されない、暗黙のしかも厳格な社内ルールになっている。そして暗黙ルールに適う人物と見なされた場合にのみ昇進が許される。
その明示ルールと暗黙ルールとが多くの部分で矛盾を抱えているということが、現役社員の訴訟という事態となって現れている。ヘルプライン通報後の配転が違法という判決を受けてもなお抵抗し続けなければならないほど、社内の暗黙ルールは厳格なのだろう。
しかし、業界内はともかく一般社会からはそうした姿は奇異の目でしか見られない。最近行われた名誉毀損公判での裁判官も呆れ気味だったという。それでもオリンパスは従業員に対する処遇を従前通り認めるよう裁判所に迫っている。裁判所がどのような判断を示すか注目される。
独裁的な経営者と厳格なルールの出現は大会社の衰退の一つの兆候という説がある。貴方の会社にも黄信号が点っているかも知れない。【了】
やなせ・ひろし/1965年生まれ。一般企業に勤める傍ら、社会や人生の諸問題について考え続ける自称市井思想家。
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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