早期退職制度導入の増加や法改正に揺れる人材ビジネス市場

2013年1月21日 11:00

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記事提供元:エコノミックニュース

 電通<4324>にタカラトミー<786>、ルネサスエレクトロニクス <6723>など、今年に入ってからだけでも多く実施されている大手企業による早期退職制度の実施。これら早期退職制度に共通してみられるのが、退職金の加算と共に実施される、希望者に対する再就職支援である。こうした動向もあり、人材ビジネス市場が転換期を迎えているようである。

 矢野経済研究所のデータによると、2011年度の人材派遣市場規模は前年度比92.3%の3兆5000億円と3年連続で縮小。さらに、2012年10月に施行された改正労働者派遣法により日雇派遣が原則として禁止されたことや、離職後1年以内の元の勤務先への派遣の禁止、グループ企業内派遣の8割規制などにより、2012年度は前年度比88.6%の3兆1000億円へと縮小し、この傾向は今後も進みそうである。

 一方で、人材紹介業市場はその市場を拡大している。同データによると2011年度は前年度比118.0%の1050億円と2年連続で増加。2009年度にリーマンショックなどの影響で約半分にまで縮小した市場規模が回復しつつある。さらに、企業によるグローバル採用の増加などもあり、2012年度は前年度比114.3%の1200億円へと再び2ケタ成長をみせると予測されている。

 そして、再就職支援市場であるが、こちらの2011年度は前年度比100.0%の275億円と横ばいとなっている。しかし、2012年度は大型リストラ案件が相次いだことや、2011年度は震災の影響で再就職支援サービスの利用が控えられたことによる反動から、前年度比109.1%の300億円に拡大すると予測されている。一見、市場自体は小さいように思えるが、2007年度の同市場規模は160億円であったことを考えれば、およそ5年や約2倍にまで市場が拡大。今年も、わずか半月で早期退職制度の募集人数が合計数千人を超えており、再就職支援サービスへのニーズは依然として高いままである。加えて、今年4月から高齢者雇用安定法により希望者全員が65歳まで雇用される制度が始まる。実質的には、定年を65歳にまで引き上げることを企業に義務付けるような制度である。比較的人件費の高い高齢者が継続雇用されれば、当然しわ寄せは若年層へと回されることになる。となれば、若年者による再就職支援サービスの利用が拡大することは想像に難くないであろう。

 人材派遣業の市場が縮小していることに伴い、人材紹介業や再就職支援業と同様に広がりつつあるのが業務の請負・受託ビジネスである。人事派遣大手であるパソナグループ <2168> の2013年5月期第2四半期決算によると、同社のインソーシング事業(委託・請負)の売上高は187億円と前年同期比で38.3%も増加。売上構成比も2008年度5月期は4.4%に過ぎなかったものが、2013年5月期第2四半期には22.2%にまで拡大している。

 人材ビジネス市場が、人材派遣業主体から他の業態へと移行しつつある。このこと自体は、安定雇用が進んでいることの一つの指標ともとれる。しかし、同時に進む再雇用支援市場の拡大などは、それだけ職を失った人が多いことを示すものともなる。となれば、あまり歓迎すべき動向とは言えないのではないだろうか。

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