開発の進むSiCパワー半導体、業績に貢献できるか

2013年1月7日 12:00

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記事提供元:エコノミックニュース

 今年3月に世界で初めて内蔵するパワー半導体素子を全てシリコンカーバイドで構成したフルSiCパワーモジュールの量産を開始するなど、SiC製品の積極的な商品開発を進めるローム<6963>。今回、モジュール第2弾となる新製品を開発した。それがショットキーバリアダイオードレスのSiC-MOSモジュールである。

 SiCパワー半導体は、すでに産業機器などでの採用・検討が進んでいる一方で、小型モジュールサイズを維持したままでの大電流化に対する要求が高まっていたという。しかし、通常、大電流化のためにはMOSFETの搭載個数を増やすなどの対応がとられるものの、その場合、整流素子であるダイオードもセットで必要となるため、小型サイズの維持が困難となっていた。

 この課題に対しロームは、ボディーダイオードの通電劣化を解消した第2世代のSiC-MOSFETを採用することにより、業界で初めてダイオードを必要としないSiCパワーモジュール(SiC-MOSモジュール)の開発・量産に成功。MOSFETの搭載面積を増やしたことにより、小型モジュールサイズを維持したままでの大電流化を実現した。一般的なインバータで利用されているSi-IGBTと比較して損失を50%以上削減することが可能な上、高周波動作できることから周辺部品の小型化にも貢献できる製品となっている。

 年率で60~70%もの伸びを見せ、2015年には約800億円もの市場になると予測されているSiCデバイス。先日もロームは、京都大学・大阪大学・東京エレクトロン<8035>との共同研究により、高誘電率ゲート絶縁膜(アルミニウム酸窒化物)を採用したSiC-MOSFETを開発したと発表するなど、普及に向けた技術開発・製品ラインナップを着実に進めている。一方で、今期も最終赤字を見込むなど、経営は厳しい状況が続く。業界をリードする技術力と市場の拡大を、業績へと反映させることができるのか。それが2013年以降の大きな課題と言えるであろう。

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