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ヤマハ発のSR400、二輪市場の減少に歯止めをかけられるか
長らく不況で、二輪車・バイク業界の業界規模はここ数年右肩下がりであった。また不況に関わらず、車離れの進む若年層の意識は、バイクへの意識とも無関係ではないだろう。内閣府の消費動向調査によると、1970年までは世帯普及率で乗用車を上回っていたものの、その後、乗用車の堅調な上昇に反して、その普及率は伸ばすことができず、1980年代後半の35.6%を頂点に下落の一途を辿り、2004年には19.9%にまで落ち込んでいる。国内出荷台数で見ても、1982年の約329万台をピークに減少が続き、2009年には約38万台となっている。
しかし2011年、二輪車全体での国内総需要は上昇しているという。2007年、2008年に施行された排出ガス規制対応による車両価格の上昇や、モデル数の減少等により市場が縮小した一方で、高速道路の2人乗り解禁やETC搭載の解禁、また、法制度が変わり、自動二輪車の免許が取りやすくなったことなどが、その要因であると考えられている。しかし一番は、一定のコアユーザーをしっかりと掴んで離さなかったことではないだろうか。
ヤマハ発動機より2012年モデルが発表された「SR400」は、このコアユーザーを掴んで離さない代表的な車種であろう。同モデルは1978年に発表されており、実に34年目を迎えるロングセラーモデルとなっている。しかも数回、時代にあわせたマイナーチェンジは行っているが、フルモデルチェンジは一度も実施していない。「趣味性の高いオートバイでこれだけの長い期間、フルモデルチェンジ無しで販売されているモデルはあまり例がないですね」と担当者。この異例ともいえるロングセラーとなった理由は、燃料タンクの涙のしずくのようなティアドロップ型形状となった、シンプルかつ普遍的なデザインが大きいという。また、始動方式は硬派なキック式のみ。現行「SR400」は燃料供給に電子制御式のフューエルインジェクションを採用しているにもかかわらず、あえてセルフスターターモーターによる始動方式を採用していない。ここに孤高の存在と呼ばれる所以がある。また、シンプルな単車だからこそ、オーナーはそれぞれの個性を発揮するドレスアップを施す例が多いことも特長と言えるだろう。
今回発売する2012年モデル「SR400」は、定番色として人気の「ヤマハブラック」と、新採用となる「ニューパールホワイト」の2色を展開する。両色とも燃料タンクのグラフィックやシートの配色に工夫をこらし "伝統的"かつ"レトロモダン"な外観に仕上げた。これを見ても、ヤマハ発がこのコアユーザーを裏切らないツボを抑えているように感じる。
2011年に続き、二輪車全体の国内総需要が伸長する要因となるのは、コアユーザーが惹きつけられる「伝統」の魅力ではないだろうか。長く愛されるものには、それだけの理由がある。目新しいカジュアル感だけではない、歴史に裏打ちされた良さを、新規ユーザーにも体感してもらいたい。
※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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