新たな子宮頸がん検診「HPV検査単独検診」の有効性を検証

プレスリリース発表元企業:横浜市立大学

配信日時: 2024-09-11 14:00:00







―妊婦への臨床試験(HOPER Study)を開始―







 横浜市立大学医学部産婦人科学教室では、研究代表者 水島大一准教授、研究総括責任者 宮城悦子教授のもと、横浜市・神奈川県をはじめとした全国の施設と共同して、妊婦への子宮頸がん検診としてのHPV(ヒトパピローマウイルス)検査単独検診法*1の有効性を検証する臨床研究(HOPER Study)を9月6日より開始しました。




[画像1]https://digitalpr.jp/simg/1706/94780/452_409_2024091109100766e0dfdf36735.jpg
  [画像2]https://digitalpr.jp/simg/1706/94780/150_165_2024091109020766e0ddffa094a.jpg


   










左:臨床研究の概要図/右:臨床研究のロゴマーク


                         

研究背景

 WHO(世界保健機関)は子宮頸がんの罹患を抑制するグローバル戦略として、HPVワクチン接種・がん検診・適切なケアを挙げています。世界的に先進国の多くで子宮頸がんの罹患率・死亡率が減少傾向にある中で、日本ではいまだ増加し続けています。今後、適正ながん検診を行うシステムが重要です。

 日本の子宮頸がん検診は、2024年4月より、30歳から60歳の女性に対してHPV検査による単独検診法(以下、HPV検査単独検診)が導入可能となりました。横浜市では2024年度中にHPV検査単独検診の導入を目指して準備中です。

 細胞診では陰性となってしまう病変をHPV検査単独検診により検出することで、検診の感度(病気がある人を正しく病気と判定できる割合)が高くなると報告されています。また、従来の細胞診検査では2年ごとの検診が推奨されていますが、この新たな方法では検診間隔を5年まで延長することができます。

 日本では妊娠中に健診の一環として子宮頸がん検診を受診する方が多くいますので、妊娠は重要ながん検診を受診する契機となりますが、現在、妊娠中の子宮頸がん検診の方法は、母子手帳を含めて「細胞診」のみの記載となっています。

 そこで、妊娠中のHPV検査単独検診の有効性を大規模に検証することを目的とした臨床研究(HOPER Study)を実施することとしました。横浜臨床研究ネットワークを活用し、本学附属病院次世代臨床研究センター(YNEXT)およびYCU共創イノベーションセンターの支援を受けて、5,000人の妊婦を募集し、妊娠中の子宮頸がん検診としてのHPV検査単独検診の有用性を検証します。



臨床研究の概要

・対象 30歳以上の妊娠中の女性

・方法 子宮頸がん検診としてHPV検査単独検診の有効性を、細胞診検診と比較検証

・研究期間 3年

・登録期間 2025年12月31日まで(予定)

・目標登録数 5,000人

・研究参加施設 全国の登録施設より研究参加者を募集

・JRCT番号:jRCT1030240280

 
 本研究の情報はJRCT(臨床研究等提出・公開システムhttps://jrct.niph.go.jp/
)で公表しています。現在参加予定の各研究施設の問い合わせ先はこちらよりご確認いただけます。

https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCT1030240280



今後の展開

 妊娠中のHPV検査単独検診の有効性を従来の細胞診と比べることで、妊娠中の病変発見の精度が上がり、妊婦の安心を得ることができます。また、子宮頸がん検診は一回の受診だけではなく継続することが重要です。HPV検診の結果が正常の場合に検診間隔を2年から5年に延長することができます。これは年間80万人が妊娠を経験する日本で、妊娠直後の妊婦を含め、多くの方の負担軽減につながります。

 この研究を通して、妊婦に対する適正な子宮頸がん検診を提供し、その後も検診を継続しやすい体制の構築を目指します。また、臨床研究の成果による波及効果としては、若い女性が「子宮頸がんは予防できるがん」であることを知る、がん予防の啓発にもつながることが期待されます。



参考

対策型検診における HPV検査単独法による子宮頸がん検診マニュアル

https://www.jsog.or.jp/news/pdf/20240222_HPV.pdf


厚生労働省 がん検診

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490.html



■YCU共創イノベーションセンター

 横浜市立大学の産学連携研究のさらなる発展と社会実装の推進、外部資金の確保に向けた中心的な役割を担う新しい産学官連携、オープンイノベーションを推進する組織として、2024年4月に設立されました。全体の戦略構築を担うセクションに加え、研究管理育成部門・プロジェクト推進部門・社会連携部門・横浜臨床研究ネットワーク部門・スタートアップ推進部門の5部門から構成されます。

https://www.yokohama-cu.ac.jp/co-creation/


[画像3]https://digitalpr.jp/simg/1706/94780/300_71_2024091109021666e0de08d8a64.png







■横浜臨床研究ネットワーク

 2014年9月に横浜市立大学を中心に立ち上げられた「横浜臨床研究ネットワーク」は、横浜市立大学附属2病院及び横浜市内を中心とする13の医療機関によって構成されています。これら15の医療機関(約8,000床)が有機的に連携し臨床研究や治験等を実施することで、横浜市民並びに神奈川県民のみなさまへ最先端の医療の提供、それぞれの医療機関における医療の進歩に繋げることを目指しています。2024年4月のYCU共創イノベーションセンター開設に合わせ、同センターの一部門として活動しています。

https://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~ynext/networks/



※横浜臨床研究ネットワークにおける本研究への参画医療機関

・横浜市立大学附属病院
 https://www.yokohama-cu.ac.jp/fukuhp/index.html

・横浜市立大学附属 市民総合医療センター
 https://www.yokohama-cu.ac.jp/urahp/index.html

・済生会横浜市南部病院
 https://www.nanbu.saiseikai.or.jp/

・独立行政法人 国立病院機構 横浜医療センター
 https://yokohama.hosp.go.jp/index.html

・横須賀共済病院
 https://ykh.kkr.or.jp/index.html

・横浜南共済病院
 https://minamikyousai.kkr.or.jp/

・横浜市立市民病院
 https://yokohama-shiminhosp.jp/index.html

・藤沢市民病院
 https://fujisawacity-hosp.jp/





■次世代臨床研究センター(Y-NEXT)

 Y-NEXT(YCU Center for Novel and Exploratory Clinical Trials)は、臨床研究を幅広く支援し、新しい治療法がより早く届けられるよう研究者をサポートする組織です。研究者が臨床研究をスムーズに遂行できるよう医師、薬剤師、看護師の多職種が、その専門性を発揮して『多角的なサポート』を行っています。

https://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~ynext/


[画像4]https://digitalpr.jp/simg/1706/94780/300_67_2024091109185866e0e1f26d84d.jpg





研究費

 本研究は、公益財団法人シオノギ感染症研究振興財団SHIONOGI INFECTIOUS DISEASE RESEARCH PROMOTION FOUNDATIONの助成および、日本対がん協会の助成を受けて実施されます。





[画像5]https://digitalpr.jp/simg/1706/94780/300_68_2024091109241166e0e32bee82e.jpg





用語説明

*1 HPV(ヒトパピローマウイルス)検査単独検診法:Human papilloma virus((HPV)は子宮頸がんをはじめ、腟がん・外陰がん・肛門がん・咽頭がんおよび、尖圭コンジローマなど多くの病気の発生に関わるウイルス。HPV検査単独法は、子宮頸部から細胞を採取し、HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染しているかどうかを調べる検査で、陽性とされた場合にのみ追加的にトリアージ検査として同一検体を用いた子宮頸部の細胞診を実施し、トリアージ検査が陰性の場合には、翌年度に追跡検査を実施する方法。









プレスリリース情報提供元:Digital PR Platform