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AI投資は第2段階へ 半導体から電力・冷却インフラの時代に

古河電気工業の三重営業所内に開設された光ファイバケーブル第2工場(画像: 古河電気工業の発表資料より)[写真拡大]
生成AIの爆発的普及に伴う株式市場の熱狂は、第一段階の半導体から、今や「物理的インフラ」という第二段階へと移行しつつある。エヌビディアを筆頭としたハードウェアへの投資が一巡する中、AI革命の持続性を左右する最大のボトルネックが「電力供給」と「熱管理」に集約されたためである。
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データセンター(DC)需要の急増を受け、送電網整備や高度な冷却システムを担う重厚長大産業は、数十年に一度のサイクルに突入している。
■「電気の時代」への突入と送電網の刷新
国際エネルギー機関(IEA)が発表した報告書『Electricity 2026』において、世界は「電気の時代(Age of Electricity)」に突入したと認識された。
2030年にかけての世界の電力需要は年平均3.6%で急増すると予測されており、その主因の一つがAI向けDCの電力消費だ。
これに呼応するように、日本政府は2025年2月、第7次エネルギー基本計画を閣議決定した。同計画では再生可能エネルギーを「主力電源」と位置づけ、次世代送電網の構築に向けた投資を国家戦略として裏付けている。
この潮流の最前線に立つのが、日本の電線大手だ。洋上風力発電や大規模DCの接続に不可欠な超高圧ケーブルにおいて、住友電気工業(コード:5802)や古河電気工業(コード:5801)は世界屈指の信頼性を誇る。
特に古河電気工業の2026年3月期連結決算では、DC関連製品の需要増加などを捉え、営業利益が639億円(前期比35.8%増)に達し、大幅な増益を記録した。
送電効率を高める超電導技術や、通信と電力の融合を支える光ファイバーの高度化は、もはや単なる素材供給ではなく、AIインフラの「神経系」としての付加価値を市場から再評価されている。
■約60億ドル規模に達した液体冷却市場の衝撃
物理的インフラのもう一つの焦点は「熱」である。
2026年現在、AIデータセンター向け液体冷却(リキッドクーリング)の世界市場規模は約60億ドルに到達し、本格的な普及期に入った。従来の空冷システムでは処理不能な高密度サーバーの熱負荷に対し、サーバーを冷却液に浸す「液浸冷却」や、冷却液を直接循環させる技術が導入されつつある。
この分野の周辺で強みを発揮しているのが、空調世界最大手のダイキン工業(コード:6367)だ。同社は米州を中心にDC向け大型アプライド空調システムの販売を大きく伸ばしており、省エネ性能と高度な熱管理能力においてグローバルな需要を取り込んでいる。
熱管理の成否はDCの稼働率、ひいてはAI事業の収益性に直結するため、高度な物理工学の知見を持つ日本の機械・素材メーカーにとって、インフラの安定化を支える新たな収益源として存在感を高める余地がある。
■供給網リスクと「クオリティ・バリュー」の選別
今後の投資環境における懸念材料は、原材料価格の高騰とサプライチェーンの分断リスクである。電線や空調機器の主要部材である銅やアルミニウムの価格は依然として高止まりしており、コスト増を適切に価格転嫁できる「価格決定権」の有無が、企業の収益性の明暗を二分する。
また今後に向けては、「全固体電池」の周辺技術や、電力ロスを極限まで減らす次世代パワー半導体の実装が次の焦点となる。
投資家は、単に「AI関連」という括りで銘柄を追うのではなく、貸借対照表(B/S)上の有形固定資産の活用効率や、知的財産を通じた参入障壁の構築状況、そして第7次エネルギー基本計画という国策に合致した受注残高の質を精査すべきである。
AIの熱狂を冷ますのではなく、その熱を利益に変え、電力を安定供給できる企業こそが、2026年以降の市場で真の評価を得ることになる。
華やかなAIソフトウェアの裏側で、物理法則という避けられない制約を解決する「黒衣」たちの重要性は、今後2040年に向けた長期サイクルの中でさらに高まっていくはずだ。(記事:今福雅彦・記事一覧を見る)
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