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米市場、利下げなき環境下で「体温低下」

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米金融市場では、利下げが当面見送られるとの見方が定着する中で、リスク資産に対する投資家の姿勢に変化が表れ始めている。金融政策自体に新材料は乏しいが、足元ではその前提条件のもとで、暗号資産やテクノロジー株の値動きが示す「市場の体温」に注目が集まっている。
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FRBは1月28日の会合で政策金利を3.50%~3.75%のレンジで据え置き、パウエル議長は金利が「中立的な範囲内」にあると述べた。米10年国債利回りは4%台前半で推移し、金融環境が急速に緩和へ向かう兆しは見られない。
利下げが遠いという認識はすでに市場に織り込まれているものの、その状況が長引くにつれ、成長期待を先取りする投資姿勢に慎重さがにじみ始めている。
こうした変化を最も早く映したのが、暗号資産市場だ。ビットコインは2月上旬に一時6万ドル台前半まで急落したものの、その後7万ドル付近まで戻すなど値動きが荒い。しかし上値を追う動きは鈍く、市場全体のリスク許容度が低下していることを示す体温計としては、冷えた状態が続いている。
主要取引所の取引高は、2025年10~11月の約1兆ドルから7,000億ドル台へと約3割減少しており、出来高やモメンタムの低下が目立つ。新規のリスクマネーが入りにくい局面にあることがうかがえる。
株式市場全体では主要指数が大きな方向感を欠く推移となっているが、テック株の内部では選別が進んでいる。生成AIを巡る中長期的な成長期待は維持されている一方で、企業ごとの収益構造や投資負担の違いに注目が集まり、評価に差が生じ始めた。
マイクロソフトは1月決算で市場予想を上回ったものの、AI関連の設備投資が前年同期比66%増と記録的水準に達したことから株価が調整。一方で半導体製造装置メーカーのアプライド・マテリアルズなど基盤分野の企業は、相対的に底堅さを保っている。金利が高止まりする環境下で、将来キャッシュフローの割引率を意識した評価が改めて意識され始めている。
とりわけソフトウェア分野では、これまで安定的とされてきたSaaS企業に対しても、将来収益の持続性を見直す動きが見られる。iシェアーズ・ソフトウェアETFは2026年に入り20%下落するなど、調整が目立つ。AIの実装が進むことへの期待と同時に、その影響が既存のビジネスモデルにどのような変化をもたらすのかを見極めようとする姿勢が、強まっている。
重要なのは、これらの動きが市場全体のリスクオフというよりも、「選別」の局面を示している点だ。金利が高止まりする環境下では、期待先行型の資産よりも、収益の確実性や競争優位性がより厳しく問われる。暗号資産の体温低下、テック株内部での強弱分化、SaaS評価の揺らぎは、同じ文脈上に並ぶ動きといえる。
利下げを巡る議論が落ち着きを見せる中で、市場の関心は「金融政策がどう変わるか」から、「その前提のもとで、どの分野に資金が残るのか」へと移りつつある。足元の市場動向は、こうした視点転換が進みつつあることを静かに示している。
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