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高市政権「成長戦略17分野」が呼び込む防衛・建設セクターの構造的再編
■序:日経平均5万4,000円を支える「国策」への回帰
2026年、日本の株式市場は未踏の領域に足を踏み入れている。日経平均株価5万4,000円台という歴史的高値圏を支えているのは、単なる過剰流動性ではない。
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2月の衆院選を目前に控え、市場が「アベノミクス2.0」とも目される高市政権の強力な財政出動を織り込み始めたことによる「国策回帰」の動きだ。かつてのコスト削減型経済から、投資による成長型経済へのパラダイムシフト。その中心にあるのが、防衛力の抜本的強化と国土強靭化を柱とする「成長戦略17分野」である。
■1:防衛予算2%の真価と産業スピンオフの衝撃
高市政権が掲げる防衛予算の対GDP比2%超の定着は、安全保障上の要請に留まらず、日本の製造業における「イノベーション・ハブ」の再構築を意味する。従来の防衛予算が「消耗品費」的な性質を帯びていたのに対し、新戦略では先端技術の「デュアルユース(民生・軍事両用)」が核となる。
政府が主導する軍事技術の社会実装は、AI、量子コンピューティング、新素材分野において民間企業への強力なスピンオフ効果をもたらすだろう。これは政府債務の増大という懸念を、将来の税収増を担保する「投資」へと昇華させる試みである。
ただしこの巨額の財政投融資が、国家の規律ある債務管理とどう整合性を保つのかについて、市場の監視の目は依然として厳しい。
■2:受注から利益へ、三菱重工に見る「資本効率」の劇的変化
この国策の最大の受益者として、防衛・宇宙ドメインの受注残高が過去最高水準に達している三菱重工業(7011)の変貌は象徴的だ。同社は長らく「受注はあるが低収益」という構造に甘んじてきたが、現在は量産効果と価格転嫁の進展により、利益確定フェーズへと移行している。
投資家が注目すべきは、同社のPBR(株価純資産倍率)2.0倍超を見据えた資本効率の改善だ。防衛装備品の海外移転三原則の緩和も追い風となり、ROE(自己資本利益率)の構造的な底上げが期待される。
また国土強靭化の文脈では、コマツ(6301)の「スマート建設」が注目に値する。労働力不足をDXで補う同社のソリューションは、大規模インフラ更新投資の筆頭格である鹿島建設(1812)などの現場において、単なる施工効率化を超えたマージンの改善をもたらしている。旧来の「バラマキ」型公共事業から、高付加価値な「投資型」インフラ整備への転換が鮮明となっている。
■3:金利上昇と円安、突きつけられる2つの課題
しかし、バラ色の展望ばかりではない。最大の懸念は、出口戦略なき財政出動に伴う金利上昇リスクだ。
長期金利の上昇は政府の利払い費を膨張させ、防衛予算の純増分を相殺しかねない。加えて、歴史的な円安水準の定着は、エネルギーや建設資材の輸入コストを高騰させ、企業の営業利益を圧迫する「逆風」としても機能する。
国策銘柄であっても、コストプッシュ型インフレを跳ね返すだけの「価格決定権」を持たない企業の選別が進むだろう。
■結:2026年後半、真の「安定成長」への道筋
選挙後の政策実行力こそが、2026年後半の日本経済が「安定成長」の軌道に乗れるかどうかの分岐点となる。
防衛産業をコストセンターではなく、次世代の生産性を引き上げるイノベーションの源泉として捉え直す視座。これこそが、縮小均衡に陥っていた日本経済を解き放つ鍵となる。
投資家は、単なる政策への期待感に踊らされることなく、企業が提示する「資本効率の改善」という実利を厳格に見極めるべき時だ。
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