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VWのドイツ国内工場閉鎖で見える、EV業界の現状
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●VWが国内工場を閉鎖
ドイツ最大手の自動車メーカーフォルクスワーゲン(VW)は9月2日、ドイツ国内工場の閉鎖を検討していると発表した。VWが国内工場を閉鎖すれば、創業以来初めてとなる。
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この発表はドイツ国内だけでなく、世界に大きな衝撃を与えた。ドイツのハーベック経済相は、閉鎖を回避しコストカットで乗り切れるように支援したいと述べ、ドイツ最大の産業別労働組合IGメタルも反発しており、混沌としている。
VWが雇用する全従業員65万人の約半数となる30万人がドイツ国内で雇用されており、ドイツだけでなくEU全体の雇用にも影響を及ぼしかねない。
2015年頃からEVシフトにチェンジし、2030年までにEVシェアを50%にする目標を掲げていたが、VWに何が起こっているのか?そこにはEV全体の現状も見える。
●VWの歴史と近年の苦境
VWは1937年、ナチスドイツのヒトラーが提唱した「ドイツの国民のための車」の開発がきっかけで、創業された。フォルクスワーゲンはドイツ語で「国民の車」を意味する。
アウディやポルシェなど日本でも馴染みのあるブランドを傘下に持つ。
2015年、ディーゼルゲートとも呼ばれる排ガス規制不正問題によって、巨額の制裁金、大規模リコール、ブランドイメージの毀損という三重苦で危機に陥った。
起死回生を図りEV(電気自動車)化にシフトし、積極的に投資してきたが、中国市場では不調となり、EU市場でも中国などの他国メーカーとの競争により苦戦していた。
●陰りの見えるEV市場
そもそも今年7月にも112億ドル(約1兆6000億円)のコスト削減目標を掲げ、2029年まで約束していた雇用保証契約を破棄すると発表しており、早期の大規模リストラが避けられない状況だった。
VWにとっては、ロシアのウクライナ侵攻や原発停止によるエネルギー価格の上昇や、人件費の高騰など、生産コストの上昇も競争力低下の大きな要因となっている。
ここにきて、EVシフトを撤回する流れも加速している。
スウェーデンの高級ブランド車ボルボは、各国政府のEV補助金打ち切りなどを理由に2030年までの完全EV化を撤回し、ドイツのメルセデスもEV販売減速を理由に同じく撤回している。
EV化の流れは変わらないかもしれないが、HEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)との併用も視野に入れている。
拙速だったEV一辺倒が今後、第二のVWを生むかもしれない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)
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