【自動車4社の4-12月期決算】世界的なインフレの先に見えてくる「トヨタ1人勝ち」が鮮明な風景

2024年2月13日 16:25

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記事提供元:エコノミックニュース

全体的にみればトヨタの業績が大きく伸びているのに対し、他の3社は特に損益面でどうしても見劣りし、自動車業界の「トヨタだけの一人勝ち」の構造がより浮き彫りとなった

全体的にみればトヨタの業績が大きく伸びているのに対し、他の3社は特に損益面でどうしても見劣りし、自動車業界の「トヨタだけの一人勝ち」の構造がより浮き彫りとなった[写真拡大]

 2月9日、トヨタ自動車、日産自動車、マツダ、三菱自動車の自動車4社の2023年4~12月期(第3四半期)決算が出揃った。

 コロナ禍の改善、半導体不足の緩和はあっても世界的な原材料価格、人件費の上昇は続き、自動車市場では中国が悪化しアメリカは依然好調という状況のもと、トヨタ自動車は前年同期の減益決算から一転、大幅増収増益となり、通期業績見通しを余裕で上方修正した。日産自動車は前年同期比で最終利益が減益から約3倍の増益に一変。マツダは前年同期の3ケタ増益から増益幅が鈍っても2ケタの増収増益。三菱自動車は前年同期の3ケタ増益から増益幅が縮小し最終利益は減益に変わり、通期の最終減益見通しも変わらなかった。

 全体的にみればトヨタの業績が大きく伸びているのに対し、他の3社は特に損益面でどうしても見劣りし、自動車業界の「トヨタだけの一人勝ち」の構造がより浮き彫りとなった。 

 ■トヨタは価格改定、高収益車種の販売好調で大幅増益

 トヨタ自動車の4~12月期決算(国際会計基準/IFRS)は、営業収益は23.9%増の34兆227億円、営業利益は102.1%増の4兆2402億円、税引前四半期利益は86.7%増の5兆3570億円、四半期利益は105.3%増の4兆316億円、四半期利益(最終利益)は107.9%増の3兆9472億円という大幅増収増益決算。営業利益、四半期利益、最終利益は前年同期の2倍を超えている。最終利益の通期見通しに対する進捗率は87.7%である。

 4~12月累計の連結販売台数は前年同期比12.4%増の729.5万台。世界的にEV(電気自動車)の先行きに暗雲が漂う中、得意とするハイブリッド車(HV)の販売台数が全地域で伸びている。HVを含めた電動車の比率は35.9%で、全体の3分の1を超えた。北米、中国を除くアジア、ヨーロッパでの販売価格の改定、レクサスなど高収益車種の販売が好調なことが利益の伸びに寄与している。

 通期業績見通しは各項目とも上方修正。営業収益は5000億円引き上げて17.1%増の43兆5000億円、営業利益は4000億円引き上げて79.8%増の4兆9000億円、税引前利益は6500億円引き上げて69.0%増の6兆2000億円、当期利益(最終利益)は5500億円引き上げて83.6%増の4兆5000億円と、大幅増収増益見通しをさらに積み増している。予想期末配当、予想年間配当は依然、非公表となっている。

 通期の販売台数見通しは15万台下方修正して前期比7.1%増の945万台。下方修正にはダイハツ工業、豊田自動織機の出荷停止の影響を織り込んでいる。

 トヨタは「モビリティカンパニーへの変革」を旗印に、金融も含めたバリューチェーンのさらなる強化に取り組むと強調している。

 ■電動車半数超えの日産は中国の悪さを他地域でカバー

 日産自動車の4~12月期決算(日本基準)は、売上高は22.3%増の9兆1714億円、営業利益は65.1%増の4783億円、経常利益は42.0%増の5401億円、四半期純利益は182.8%増の32353億円の増収増益で、最終利益は減益だった前年同期に比べて2.8倍になっている。4~12月期四半期純利益(最終利益)の通期見通しに対する進捗率は83.4%である。

 4~12月累計のグローバル販売台数は前年同期比1.2%増の244.1万台。競争激化が続く中国は小売販売台数34.7%減と深刻だったが、メキシコが依然高水準の北米は29.7%増、ヨーロッパは17.0%増、e-POWER搭載車が好調な日本国内も8.4%増で、中国の悪さをカバーできている。日本テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した「セレナ」の国内販売が好調だった。なお、日本での電動車の比率は53%と初めて50%を超え、ヨーロッパの48%を上回っている。

 通期業績見通しに修正はなく、売上高は22.7%増の13兆円、営業利益は64.4%増の6200億円、当期純利益は75.8%増の3900億円としている。予想期末配当は前期比据え置きの10円、予想年間配当は5円増配の15円で、修正していない。

 通期のグローバル販売台数見通しは15万台下方修正して前期比4.1%減の355万台。中国は24%減だが、北米は29.0%増、ヨーロッパは20.1%増、能登半島震災の影響が心配される日本も12.3%増を見込んでいる。なお、3月中に新中期経営計画を発表する予定である。

 ■好調マツダは通期で全利益項目過去最高の見通し

 マツダの4~12月期決算(日本基準)は、売上高は32.3%増の3兆5664億円、営業利益は82.9%増の2002億円、経常利益は76.5%増の2389億円、四半期純利益は59.8%増の1654億円。経常利益、四半期純利益が3ケタ増益だった前年同期と比べて増益率は鈍ったものの、全利益項目で過去最高を記録した。4~12月期の四半期純利益(最終利益)の通期見通しに対する進捗率は97.3%に達している。

 4~12月累計のグローバル販売台数は前年同期比17%増の93万台。10-12月期でアメリカは「CX-90」を中心に販売台数が29%増で過去最高を記録し非常に好調。ヨーロッパは24%増。日本も「CX-60」「CX-8」などクロスオーバーSUVが寄与し12%増。市場環境が悪い中国でも1%増でプラスになっていた。

 通期業績見通しに修正はなく、売上高は25.4%増の4兆8000億円、営業利益は76.1%増の2500億円、経常利益は23.6%増の2540億円、当期純利益は19.0%増の1700億円で、利益項目は全て過去最高を更新する見通し。予想期末配当は前期比で据え置きの25円、予想年間配当は前期比5円増配の50円としている。通期のグローバル販売台数見通しに修正はなく、前期比16%増の128.6万台を見込んでいる。

 マツダは2023年11月、技術面では電動化へリソースを集中させる目的で「電動化事業本部」を、国内営業面では「ブランド体験推進本部」を発足させた。2024年2月、新時代に適合したロータリーエンジンの研究開発を推進する「RE開発グループ」を復活させ、伝統のロータリーエンジンの技術を社内で継承させていく。

 ■三菱自動車は販売台数減でも経営努力で営業増益確保

 三菱自動車の4~12月期決算(日本基準)は、売上高は14.3%増の2兆638億円、営業利益は4.2%増の1601億円、経常利益は7.3%増の1659億円、四半期純利益(最終利益)は21.4%減の1027億円で、増収、最終減益決算だった。営業利益、経常利益は前年同期の3ケタ増益から増益率が鈍ったが、四半期利益(最終利益)は第2四半期に不振の中国事業の構造改革費用を計上したという特殊事情があり、前年同期の192.3%増(約3倍)に対して減益となった。4~12月期の四半期利益(最終利益)の通期見通しに対する進捗率は73.3%である。

 4~12月累計のグローバル販売台数は前年同期比7%減の58.5万台。日本デザイン・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した「デリカミニ」が好調な日本(17%増)と北米(21%増)はプラスだったが、中国の46%減、ヨーロッパの31%減が大きく響いていた。世界的な総需要の停滞に加え、第3四半期は地政学的リスクによるコンテナ船、自動車運搬船の船腹不足などによる物流の逼迫、納期遅れも影響した。それでも売価改善と「手取り改善運動」のような業務改善の努力が実を結んで、営業増益と売上高営業利益率7.8%を確保している。

 通期業績見通しに修正はなく、売上高は15.9%増の2兆8500億円、営業利益は5.0%増の2000億円、経常利益は15.4%増の2100億円、当期純利益(最終利益)は17.0%減の1400億円。予想期末配当は前期比据え置きの5円、予想年間配当は前期比5円増配の10円としている。

 通期のグローバル販売台数見通しには修正はなく、前期比4%増の86.8万台。日本21%増、北米26%増、ヨーロッパ±0%、中国46%減の見込み。日本では好調な受注が続いている「デリカミニ」に続き、2月発売の新型「トライトン」も期待している。「トライトン」は「エクスフォース」「エクスパンダーHEV」とともにアセアン戦略車、グローバル戦略車でもある。(編集担当:寺尾淳)

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