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小惑星リュウグウで彗星塵の衝突痕跡を発見 東北大ら
リュウグウ粒子表面に見つかった溶融物(左)。丸みを帯び、水滴状に見える。右は、溶融物断面のCT画像。多くの気泡を含んでいる。(画像: 東北大学の発表資料より)[写真拡大]
小惑星リュウグウは、"はやぶさ2"がサンプルを地球に持ち帰ったことで有名だ。直径わずか700mの地球近傍小惑星で、地球衝突可能性が高く、衝突時に地球に与える影響が大きい「潜在的に危険な小惑星(Potentially Hazardous Asteroid, PHA)」に分類され、地球生命誕生の謎を解くカギを握る存在としても注目を集めている。
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東北大学は22日、探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウから持ち帰ったサンプル表面を走査型電子顕微鏡で観察し、小惑星表面に彗星の小さな塵が衝突してできた大きさ5~20μ程度の溶融物を複数発見したと発表した。
また3次元CT観察や化学組成分析により、溶融物は衝突した彗星由来の塵とリュウグウの表面物質が高温で融けて混ざり合うことで生成されたことも、明らかにされた。この溶融物は今から500万年以内の彗星衝突でもたらされ、リュウグウにはごく最近まで太陽系の遠方から有機物を含む彗星の塵が供給されていたのではないかと、科学者らは推定している。
地球近傍のリュウグウでこのような発見があったということは、46億年前の地球にも太陽系外周部から彗星が飛来し、地球生命誕生の元となったかもしれない有機化合物をもたらしたとしても、なんら不思議ではない。
また、彗星を自ら吸い寄せる程の強い重力を持たないリュウグウでも彗星が衝突したのだから、リュウグウに比べて比較にならないほど重力の強い地球が彗星をたくさん吸い寄せ、生命誕生の元となる有機化合物を得てきた可能性は、更に高いものと言えるだろう。
今回の発見は、生命の起源となる有機化合物が彗星からもたらされた可能性を示唆するものだが、DNAやRNAのような生命そのものの種が彗星からもたらされたと言っているのではないことに注意が必要だ。つまりこの発見は、パンスペルミア説を後押しするものではなく、生命起源に関する謎解明への道のりは、まだまだかなり険しく遠いものなのだ。
なお今回の研究は、立命館大学、京都大学、東北大学などとの共同研究チームによるもので、その成果は、1月19日に米国科学振興協会(AAAS)が発行する学術誌「Science Advances」に掲載されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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