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自動車開発を「数週間から数日」へ短縮 NTNが挑むベアリングトルクの理論革新と省エネの正体

「理論」で挑むNTNの執念。EV・HEVの航続距離を左右する軸受トルク[写真拡大]
電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の航続距離を伸ばす戦いは、バッテリー容量の拡大から、駆動ユニット全体の徹底的な効率化へと次のフェーズに移行しています。車体重量の軽減やモーター効率の向上に加え、今、改めて注目されているのが、回転部分に不可欠な「ベアリング(軸受)」の摩擦抵抗、すなわち「トルク」の低減です。
特に近年のHEVやEVでは、モーターが1万〜3万回転という超速で回転しており、この領域におけるトルクの制御は、いわば「ブラックボックス」となっていました。これまでの技術では、ボールとレールの「接触面」の計算で十分だとされてきましたが、高速回転下では潤滑油のかき混ぜ抵抗といった「非接触域」の影響が無視できないほど大きくなります。NTNはこの未知の領域に光を当て、潤滑油の流動まで考慮した独自の計算手法によって、トルク計算の精度を従来比で最大50%向上させるという、設計思想の転換を成し遂げました。
この技術がもたらす最大の変革は、自動車開発の「時間軸」にあります。これまで完成車メーカーからの要請に対して計算の再設定を行うには、数週間から数ヶ月の時間を要するのが常識でした。しかし、今回の新手法を導入することで、その期間はわずか「数日」へと劇的に短縮されます。特筆すべきは、NTNの「理論へのこだわり」です。実験結果に計算を合わせにいく他社の手法とは一線を画し、物理現象を理論的に解明してシミュレーションの精度を高めたことで、実機試作の回数を減らし、圧倒的な速さで最適な設計を導き出すことが可能になりました。
なぜ、今これほどの精度が求められているのでしょうか。その背景には、HEV領域における切実な課題があります。軸受の低トルク化は、「航続距離を伸ばすか、あるいは同じ距離を走るためにバッテリーを小さくするか」という、車両設計の根幹に関わる選択肢をメーカーに提供します。わずか0.1%の抵抗削減が、車両全体のパッケージングやコスト競争力を左右する重要な経営課題となっているのです。
かつてベアリングは「機械産業の米」と呼ばれましたが、今やその摩擦を極限まで減らす技術は、企業のサステナビリティを左右する経営戦略そのものと言えます。「見えない抵抗」を理論で制し、開発期間というリソースをも支配する。NTNの新たな挑戦は、日本のモノづくりが「知の力」で世界のEVシフトを支え、持続可能な社会への貢献をリードし続けることを証明しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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